経団連加盟企業の選考開始が8月1日に迫る中、人材を確保したい中小企業などから入社確約を迫られる就活生が増えている。中には自社の内定を出すから「就職活動を終わらせろ」と強要する「オワハラ」の被害を受けた学生もいるようだ。
人材採用コンサルティングのディスコの調査によると、6月1日時点で内定を得ている就活生は3人に1人、内定持ち学生の12.9%がオワハラ行為を受けた経験があるという。7月8日放送のNHK「ニュースウオッチ9」でも、この問題が取り上げられていた。
最終面接で「携帯出して」と促され…
番組が訪れたのは、都内の大学の就職支援センター。相談に訪れる学生の約1割はオワハラに悩んでいるという。4月の段階で「入社誓約書」の提出を求められた学生もいたという。番組VTRには、実際にオワハラを受けた女子大生も登場。最終面接で「携帯出して」と求められ、こう促されたという。
「今きみが受けている企業に(電話を)かけて、これからの面接を全部断ってほしい」
彼女が断ったところ、後日不採用の連絡が。志望度の高い会社ではあったが「なんでそんなことをするんだろう」と困惑し、「行きたい企業でも行きたくなくなっちゃいます」とオワハラを受けた心境を述べた。
背景には人材争奪戦の加熱がある。少子化で学生数は減少しているが、景気回復で企業の採用数が増加して売り手市場となっている。中小企業や外資系企業が、大企業の選考が始まるまでに良い人材を確保しようと焦りを見せているわけだ。
ネットを見ると、視聴者から「職業選択の自由って知らないのかな」「自分達が見込んだ人材の意思を尊重できないなんてナンセンス」と、企業の行動に疑問を投げかける声が相次いでいる。オワハラ被害者を慰めるこんな書き込みもあった。
「オワハラしないと人数を確保できない会社なんて、入ってみたらブラックかもしれないから断られて良かったかもよ」
「会社は必死なんだよ」と引き止めに理解示す人も
その一方で、学生を引き止めようとする企業側に同情する意見も少なくない。
「会社は必死なんだよ。気に入らないならまず、その会社の採用試験なんか受けなきゃ良いじゃん」
「学生はそもそもその企業に入りたいから試験受けたんじゃないの? 入りたくもない企業の面接受けているのか?」
しかし企業が学生を選別するのと同様、学生側にも企業を選別する権利はある。特に大手の選考が未解禁の段階では、内定を「キープ」しておけば精神的な安定も増す。
ネットには、オワハラを訴える学生は就職後も文句をつけてくるのが目に見えているので、「正直いらないよ」という人もいたが、これは本音なのか強がりなのか…。
「オワハラ」という現象をうらやましがる意見もあった。内定のない学生からは「オワハラでいいんで就職したい…」「こちとら就活終わらないハラスメントじゃ!」との声が。就職難の時代を経験した人たちは、こうつぶやきを漏らしている。
「今は普通に2社以上内定取れるみたいでうらやましいのぉ」
「就職氷河期を過ごした者からすると異世界だわ」
氷河期世代・鈴木キャスターは苦笑い
大学卒業時の景気によって、就職環境が大きく変わる状況に理不尽を感じる人がいても仕方がない。番組でも、キャスター間の「世代間対立」が垣間見られた。バブル期に就職活動を行った河野憲治キャスター(53歳)が、
「当時も内定を出した企業が内定者を拘束する、囲い込むといったことも行われた」
と振り返ると、氷河期世代の鈴木奈穂子キャスター(33歳)が「ずいぶん状況が変わったんだなという風に思いました」と、苦笑いしながら感想を述べた。
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