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オリンパス「不当配転」訴訟で原告敗訴 「まさか・・・」茫然自失の記者会見

2015年07月09日 19:31  弁護士ドットコム

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退職勧奨を拒否したところ、不当な配置転換を命じられたとして、精密機器メーカー「オリンパス」社員の石川善久さん(51)が、同社などを相手取り、配転先で働く義務がないことの確認と慰謝料の支払を求めていた裁判で、東京地裁は7月9日、原告の請求をすべて棄却する判決を下した。原告は控訴する意向だ。


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判決後、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで会見した石川さんは「まさか、原告の請求を棄却するというような判決になるとは全く思っていなかった。(勝訴したら会見で)しゃべろうと思って用意してきた内容が全く使えない・・・」と茫然とした様子で語った。



●退職勧奨を拒否したら、未経験の部署へ「配転」


「私は、あらゆる分野で30年近く製品開発を担当し、職務発明も、社内では私を超える人がいないくらいの発明数で、報奨金もいただいてきた。まさか自分が退職勧奨の対象になるとは思っていなかった。なぜ自分なのか、上司に聞いても『会社の総合的な判断』と言われるだけだった」



そう話す石川さんは1984年にオリンパスに入社して以来、医療用内視鏡やレーザー顕微鏡などの製品開発に携わってきた。2012年9月、同社が業績の低迷を理由に約100人の希望退職者を募集した際、石川さんは上司から「社内であなたの能力を活用する場はない」と、5度にわたって退職勧奨を受けた。拒否すると、2013年1月付けで、全く経験のない、社員教育を担当する新設部署への異動を命じられた。



さらに、奇妙だったのは、異動先の部署のチームリーダーが、内部告発の経験がある濱田正晴さんだったことだ。



濱田さんは、取引先の社員を引き抜こうとした上司の行動を内部通報した結果、畑ちがいの部署へ異動を命じられたため、会社を相手取って「配転無効」を求める裁判を起こし、勝訴した。その後、濱田さんは、再配転先として、新設された部署のチームリーダーに任命された。



しかし実際には、部下がいない名ばかりの「チーム」だとして、濱田さんは2012年11月、ふたたび配転無効を主張して提訴した。その2カ月後、「部下」として配属されたのが石川さんだったのだ。



そこで、石川さんは、自らの配転は、濱田さんとの「訴訟対策」であり、退職勧奨を拒否したことへの制裁であるとして、会社と人事担当者を相手取り、東京地裁に裁判を起こした。



●原告側代理人の弁護士「前代未聞の判決だ」


しかし、東京地裁の戸畑賢太裁判官は、会社側が退職勧奨対象者を選択するにあたって考慮したという2008年から2012年の石川さんの勤務評価をふまえ、「本件退職勧奨の目的、対象者としての認定基準及びこれに基づく人選には一定の合理性が認められるものと解するのが相当」だとした。



また、上司による退職勧奨についても「必ずしも執拗なものとはいえない」「退職の有無による諸々の有利不利を説明しつつ説得を行った」として、適法だと認めた。



さらには、配置転換そのものも問題はなく、「給与その他の待遇に特段の変化がある旨の事情についても主張立証はなく、本件配転命令が、原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとも認められない」とした。



石川さんらが主張した「訴訟対策」による配置転換だったことも「十分に裏付けるまでの証拠は見いだせない」と、違法性は認められなかった。



代理人の光前幸一弁護士は「前代未聞の判決。事件の概要でこちらが主張している事実を全て否定している」と判決に強く異議を唱えた。



光前弁護士によると、提訴後、オリンパスから石川さんに対して、退職勧奨と配置転換の無効を認めて解決金を支払う和解案の提示があったという。



「しかし、事実関係をきっちり裁判所が判断して、オリンパスの問題点を判決の中で示してほしいということで、(和解ではなく)判決になった。まさか、こんな判決が出るとは思っていなかったというのが、代理人としても率直なところだ。



非常にうすっぺらい、会社の言い分だけを書いた判決。控訴して、(原告側が主張する)事実を認定してもらい、正しい判断をしてもらおうと考えている」


(弁護士ドットコムニュース)