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X JAPAN、BUCK-TICK、LUNA SEA……強者バンドが集結した『LUNATIC FEST.』徹底レポ

2015年07月08日 19:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『LUNATIC FEST.』の様子。

 結成25周年を迎えたLUNA SEA主宰による史上最狂のロックフェス『LUNATIC FEST.』が6月27日、28日の2日間、幕張メッセにて行われた。出演はすべてバンドで、女性ボーカルもいなければ、不自然にねじ込まれたような新人もいない、正真正銘“LUNA SEAが繋げる”布陣。そこで見たものは「ジャンルの壁、世代を超えて」などという安易な言葉で片づけることの出来ない、「リスペクトし、リスペクトされ、」というバンド同士の姿だった。9mm Parabellum BulletやROTTENGRAFFTYのステージに乱入したJ(Ba)は、“悪ガキどもの頼れる兄貴”だったが、BUCK-TICKとともに演奏する姿はむしろ“悪ガキ”だった。MUCCの逹瑯が『LUNATIC TOKYO』における、RYUICHIのMCの真似をしたかと思えば、ROTTENGRAFFTYのNOBUYAが92年のエクスタシーサミットを意識して白衣装に身を包むなど、各々のSLAVE(LUNA SEAファンの呼称)アピールも微笑ましい。バンド同士の関係はわかっていても、こうした光景を目の辺りにするのは新鮮で、LUNA SEAというバンドの影響力の大きさを改めて感じる2日間だった。


●先陣を切った、LUNACY


 両日ともにオープニングアクトを飾ったのは、LUNACY。かつてのバンド名義で登場した彼らは、普段より強調した髪形とメイク、衣装をまとい、「MECAHNICAL DANCE」「FATE」などの初期曲で攻めていく。朝一とは思えない研ぎ澄まされた貫録のステージ。フェスのトップバッターといえば、音響や集客など、環境すべてにおいてリスクは高いわけだが、主宰自らが先陣を切ることにより、イベントの士気がのっけから高まるというわけだ。来場者はもとより、出演バンドに向けた粋な計らいでもあり、感謝を込めた最大のもてなしでもある。


●受け継がれる、遺伝子


 畳み掛けるような楽曲展開、スピード感のあるビートとソリッドなギター、翳りのあるメロディー……シーンは違えど、LUNA SEAの遺伝子を感じる2バンドで本編は幕開けた。


・9mm Parabellum Bullet(27日 MOON STAGE)


 “切り込み隊長”らしく「Discommunication」「ハートに火をつけて」などの高速ナンバーで攻める。かみじょうちひろ(Dr)のスティック回しも、振り子のようにベースを回す中村和彦(Ba)も、いつも以上の回転数で攻めてくる。Jが乱入しての「Cold Edge」で、フロアは午前中から最高潮の熱気に包まれた。


・凛として時雨(28日 MOON STAGE)


 シンプルな演出とこじんまりとした配置ながら、カオスティックな絶叫空間を作り上げたのは凛として時雨だ。「傍観」で魅せた真っ赤な照明に包まれながらの絶唱。フィードバックノイズに包まれたラストは壮観だった。


●ロックの初期衝動として


 ロックとの出会いはLUNA SEAだったーーそんなバンドは少なくない。続いて登場したのは、彼らを入り口とし、音楽探究の過程で、洋楽や様々なジャンルへと音楽性の幅を広げていったバンドである。


・the telephones(27日 FATE STAGE)


 石毛輝(Vo, Gt)の「おれたちがLUNATIC DISCOだ!」という高らな叫び声とともに「Monkey Discooooooo」で口火を切った。岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)がフロアに降りて引っかき回す。“やり切った感”溢れる爽快なプレイは、観る側にとっても心地よいものだ。音楽性だけを見ると、今回のラインナップの中では異質な存在でもあるバンドだが、しかし決して媚びることなく、いつもながらのブレない姿勢を見せた。


・ROTTENGRAFFTY(28日 FATE STAGE)


 ラウドなサウンドながら、親しみやすいメロディーで盛り上げていくROTTENGRAFFTY。2006年にJが旗上げたレーベル・INFERNO RECORDSからもリリースしているバンドだ。「俺たちの兄貴!」とJを呼び込んで披露したのは「This World」。さらに「響く都」「D.A.N.C.E.」と、多国籍ダンスチューンで踊らせる。様々なバンドのTシャツを着たリスナーがいたるところで体を揺らしていた。


・coldrain(27日 FATE STAGE)


 「今年、ルナフェスが一番ヘドバン出来るフェスだと思います!」と叫んだのは、スカルムーンのフェスTシャツを着たMasato(Vo.)。海外バンドさながらの重厚で安定感のあるサウンドを轟かせる。「日本のバンドとして、世界に広めて、coldrainのフェスができるまでやります! リスペクト、LUNA SEA!」そんな決意表明とともに「The War Is On」で締めくくった。


●今のJ-Rockシーンを席巻する、注目のバンド


・Fear, and Loathing in Las Vegas(27日 FATE STAGE)


 2011年にJ主宰の〈SHIBUYA-AX 5DAYS LIVE -Set FIRE Get HIGHER-〉に出演していた彼らが、あの頃より人気も実力も格段に上げて帰ってきた。来年1月には自身初となる日本武道館公演も決定しているLas Vegas。LUNA SEAと同い年の25歳という、So(Clean/Scream)によるオートチューンを駆使したキラキラのボーカルと、Minami(Scream)のシャウトが絡みつき、シンセザイザーと重音が折り重なったアンサンブルが襲い掛かる。アップテンポのトランスサウンドによる音の洪水が、フロアをカオスの渦に巻き込んだ。


・[Alexandros](28日 FATE STAGE)


 「Burger Queen」「Stimulator」と、頭からテンション高めのナンバーで攻める。確かな演奏で緻密に構築されたオルタナティブ・ロックだ。「小学生の頃、家の近所でライブがあり、怖そうなファンのお姉さま方が~」というLUNA SEAとの印象的な出会いを語った川上洋平(Vo, Gt)。2010年に加入した庄村聡泰(Dr)は真矢の弟子にあたり、2ビート風の8ビートと手数の多さに師匠の血を感じる。疾走感みなぎる東欧フォルクローレ風の「ワタリドリ」で締めくくった。


●LUNA SEAが影響を受けたバンド


 LUNA SEA“に”影響を受けたバンドがいれば、LUNA SEA“が”影響を受けたバンドもいる。両側面を同時に見ることができるのも、本フェスの面白みだ。


・DEAD END(27日 SHINE STAGE)


 ジャパメタ、ゴシック、グラムロック……あらゆる要素でV-Rockシーンの現人神的な存在のDEAD END。非の打ち所のない華麗な演奏と、漆黒の衣装に身を包んだMORRIEに、場内がどんどん引き込まれていく。呼び込まれたかつての魔界のプリンス・RAYLA(RYUICHI)も、宇宙の貴公子・SUGI様も、煉獄から降臨したカリスマを前に、終始にこやかな表情で「Serafine」を競演。「Dress Burning」「Devil Sleep」で締めくくった。


・AION(28日 FATE STAGE)


 手慣れた手つきで潤滑剤をベースに吹きかけ、DEANに手渡す、ローディーのJ。LUNA SEAを初めてツアーに連れていったバンドがAIONだ。LUNA SEAにとって師匠的存在にあたる。NOVの伸びやかな歌声、槍のようなギターシェイプさながら、鋭いサウンドで神業のごとく高速弾きするIZUMI。全曲新曲という構成ながらも、80年代ジャパメタの熟成とでもいうべき、普遍的なスタイルを見せつけた。


●エクスタシー・レコードの両翼


 1日目を象徴する、エクスタシー・レコードの大先輩のお出ましだ。


・TOKYO YANKEES(27日 SHINE STAGE)


 かつて、エクスタシー・レコードの副社長を務め、2007年12月に旅立ってしまったUMEMURAの革ジャンをU.D.A(Dr)がドラムセットにかける……そんないつもの光景も、今日この場所だとより深い意味を感じる。愛想などない男気溢れる豪快なロックンロール。Motorhead「Ace Of Spades」のカバーを挟み、ラストの「Hollywood Heatbreaker」では、「今日、たまたま居た」という、臨時ギタリスト・PATAがリハなしのぶっつけ本番で乱入。エクスタシー・サミットから早20年以上、今なお、エクスタシーの核弾頭、“弥無危異寿”の真髄を見た。


・LADIES ROOM(27日 SHINE STAGE)


 「SEX!! SEX!!」相変わらずのバッドボーイズっぷりのセクサー集団。一発目は「Anarchy in the U.K.」のカバー。Sex Pistolsではなく、彼らの敬愛するMotley Crue「Anarchy in the “U.S.A.”」バージョンだ。「SEX,SEX & ROCK’N ROLL」「GET DOWN」と続き、ラストはRYUICHIの登場で、歌うは河島英五「酒と泪と男と女」。Hyaku(Vo)とRYUICHIの甘い歌声と色香に酔いしれるオーディエンス。HIDEがカラオケで歌っていたことが選曲の理由とのことだが、こんな予想の斜め上を行く展開も、GEORGE(Ba)が最後にパンツをおろしてしまったのも、「エクスタシーだから……」で許せてしまうから不思議なものである。


●LUNATIC FEST.「ダーク・サイド」


 1日目がエクスタシー・レコードを象徴するような、LUNA SEAのHR/HM要素の顔、“ハード・サイド”だとすれば、2日目はニューウェーヴ、ゴシックを基調とする“ダーク・サイド”だ。


・minus(-)(28日 SHINE STAGE)


 奇妙で奇怪な森岡賢と、鬼の形相・藤井麻輝、この二人がステージに立っているだけで非現実的世界に見えてしまう。ゴシカルでインダストリアル、MCなしの全曲つなぎ、心地よい前ノリのビートがいやおうなしに高揚感を誘う。宇宙的でつかみどころのない森岡と、ダウナーな藤井のボーカルの対比もほどよく響く。アクの強い二人に囲まれながらの紅一点、サポート・ドラマー、FLiPのYUUMIの凛々しいドラミングも印象的だった。


・KA.F.KA(28日 SHINE STAGE)


 土屋昌巳のトリッキーなギターで始まった、KA.F.KA。魔界から来たりし、伯爵の装いのISSAY(Vo)は、歌声、ステージング……いや、立ち振る舞いというべきか、動きの一つひとつに気品と妖艶さが漂い、“耽美”という言葉を擬人化したような姿だ。土屋がSUGIZOを呼び込む。「90年代に同じようなイベントで、僕がやめろやめろというのに無理なイベントをやりました」1997年に行われたSUGIZO主宰『ABSTRACT DAY』は、プロデューサーに転向した土屋が再びソロ・アーティストとして活動するきっかけを作った。Joy Division「Transmission」のカバーで、そんな二人の関係性を表すようなアバンギャルドでスペーシーなギターバトルが響き渡った。


・D’ERLAGER(28日 SHINE STAGE)


 「SADISTIC EMOTION」「dummy blue」「Lullaby」、ここぞとばかりのパンキッシュなキラーチューンの応酬で攻めたD’ERLAGER。「LA VIE EN ROSE」で観客のコールとともに、INORANが登場。CIPHER(Gt)に連絡するときは未だに正座、本人を目の前にすれば、もちろん正座。いつもクールな面持ちのINORANだが、憧れのロックスターを目の前に、ここぞとばかりステージ上を笑顔ではしゃぐ姿は、完全にロック少年のそれだった。


●圧巻のステージを見せた後輩バンド


・MUCC(28日 MOON STAGE


 今回の出演者の中で唯一、直系ともいえる2000年代ヴィジュアル系シーンの出身。2007年リリース『LUNA SEA MEMORIAL COVER ALBUM -Re:birth-』の「Dejavu」再現率も記憶に新しい。ラウドロックからエレクトロ、歌謡曲まで、面白そうなものは全部吸収し、自分たちのものにしてしまう姿勢は、方法は違えどLUNA SEAと共通するところ。タメのリズムが印象的な「睡蓮」、重心低めのグルーヴが心地よい「G.G.」、ヘヴィサウンドと次々畳みかけていくメロディーの「蘭鋳」で、会場は狂乱状態に。海外を始め、ジャンル問わず数多くのフェス/イベントへの出演経験を誇るだけに、「ライブとはなんたるか」を知り尽くしているかのような貫録のステージを見せた。


・SIAM SHADE(27日 MOON STAGE)


 「俺ら、今解散してるんですけど……」今年10月にメジャーデビュー20周年復活ライブを行うSIAM SHADE。思えば、当初「一夜限りの復活」としながらも、翌年の〈hide memorial summit〉に引っ張りだされたバンドもいたような……。このシーンにありがちな上下関係が垣間見る出演劇。「なんてカッコいいんだ!」と突如現れ、「1/3の純情な感情」をリクエストしておいて自分が歌うという、真矢の茶番を前にタジタジになっている栄喜(Vo)は、明らかに町田PLAY HOUSE時代の“CHACK”だった。その反面、技術・演奏に定評のあるバンドらしく、スケールのドでかい、男気溢れる熱いステージをきっちり見せる。ちなみに、真矢と師弟関係にある淳士(Dr)はこの日、LUNA SEAの出番前にドラムのサウンドチェックを務めた。


・GLAY(28日 MOON STAGE)


 バンドの名を見れば、思い浮かべるサウンドがある。だが、GLAYの場合はサウンドよりも歌を思い出す。「誘惑」「口唇」、誰でも楽しめるロックナンバーで、どのファンもここぞとばかりの“GLAYチョップ”。LUNA SEA「SHADE」のカバーを挟み、「彼女の”Modern…"」で最高潮に。演奏はもちろん、ステージング、ライブの運び方に、スタジアム級のロックバンドの真髄を見た。どこか不良性、ダークな雰囲気を持つロック、それを集約したようなエクスタシー・レコード出身ながら、国民的バンドへとのし上がった。GLAYほど優等生的なロックバンドはほかにいないだろう。何気なくLUNA SEA「JESUS」のリフを弾いたり、この日の最後のセッションでは、「BELIEVE」ギターソロに「彼女の"Modern…"」をさりげなく混ぜていた、HISASHI(Gt)に思わずニヤリ。


●独自の世界観に引きづり込む、孤高のステージ


 お祭り感のあったこのフェスを、良い意味でぶち壊してくれたバンドがいた。


・DIR EN GREY(27日 MOON STAGE)


 紗幕の掛かったままのステージに蟻だらけの映像、幕が開けば、バックスクリーンの大画面に虐待MVを投影しながらのライブ。重低音のバンドアンサンブルと、京(Vo)の凄まじい奇声がホールに響き渡る。狂気と暗黒性を色濃く打ち出した世界にオーディエンスが引きずり込まれていく。地団駄を踏むようなステップを見せるToshiyaの直角に構えたベースには、J直筆の“WAKE UP! MOTHER FUCKER”の文字が。「空谷の跫音」では、SUGIZOのエレクトリック・ヴァイオリンの音色と突き抜ける京のハイトーン・ボーカルが折り重なり、スクリーンに映し出されたコムローイ(ランタンを空に放つ、タイの祭り)の情景も相俟って、先ほどとはまた違う異世界へといざなっていった。


・BUCK-TICK(28日 MOON STAGE)


 サウンドチェック時に悲鳴のようなノイズが響き渡る。BUCK-TICKのライブ前ならではの光景である。ミラーボールに照らされて「独壇場Beauty」で始まったゴシックでデカダンスなロックショー。「メランコリア -ELECTRIA-」「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」、マイクスタンドを男性器に見立て、艶めかしい低音ボイスで魅了する、魔王・櫻井敦司。「形而上 流星」では幾何学映像と音のシンクロで、“死ぬほど美しい”ステージを魅せ、渾沌とした終焉に向かっていく「無題」で締めくくる。Jを招いての「ICONOCLASM」があったものの、フェス仕様といった、初見に優しいセットリストではなく、唯一無二の存在感で惹きつける。この良い意味での裏切り方も、孤高のスタンスを貫いてきたバンドらしいステージだった。


・X JAPAN(27日 MOON STAGE)


 お馴染みの「X JAPAN… JAPAN… JAPAN…」のナレーションからの「JADE」。きらびやかなチェンバロの印象的な“あのイントロ”が鳴り響き、待ってましたといわんばかりの大合唱が起こった「Rusty Nail」。ここ数年では最速だった「紅」。定番曲連発に会場は興奮の坩堝と化す。新曲のオーディエンスによるコーラスレコーディングが行われるなどのサプライズ、ビジョンでのHIDE、TAIJIへのメッセージ、そして、HIDEの煽り「飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ~」による3万人のXジャンプ。最後はこれでもかというくらいの「We Are?! ~ X!!!!」。大トリ感満載の展開に、もう今日の壮大なフィナーレを迎えてしまったのかとも思えてくる。演奏やセットリストのみならず、演出、MC、すべてにおいてX JAPANの存在自体が壮大なエンターテインメントであることを知らしめた、まさに王者の風格である。


●オーガナイザー・LUNA SEA ~ 一大セッションへ


 「LOVELESS」の神秘的なイントロで会場の空気が一変した。朝からメンバーは様々な形で姿を見せていたが、5人が“LUNA SEA”としてステージに立つ姿は説得力が違う。演奏がどうとか、サウンドがどうであるとか、そういう次元ではない。「Dejavu」「JESUS」「TONIGHT」、次々と繰り出されるステージからの圧倒的なパワーとオーラに、完膚無きまでに叩きのめされている気分だ。


 「本当はステージに一緒に出たかった人とかもいて。今日は来れなかったんだけど、いや、違うな、今日はきっと、このステージに、会場のどこかにいると思います」


 RYUICHIがそう言って演奏したのは、hideの「ピンク スパイダー」。日本での本格的な音楽フェス開催を誰よりも望んでいたのは、hideだった。FUJI ROCK FESTIVALが始まった前年の1996年、hideが様々なアーティストを集め、〈LEMONed presents hide Indian Summer Special〉を開催したのは、ここ、幕張メッセの向かいにある千葉マリンスタジアム(現・QVCマリンフィールド)だった。28日は「ROCKET DIVE」が演奏されたが、両曲とも、カバーではなく“完コピ”であったことに、リスペクトと愛が込められていたことは言うまでもあるまい。


 強靭な喉を持つRYUICHIだが、声に不調な場面もあった。この一大イベントに力みすぎてしまったのか、諸先輩方にエクスタシー恒例の洗礼を受け、呑まされすぎてしまったのかは定かではないが、苦しそうなのは誰の目にも明らかだった。それに気付き、演奏でフォローしていくような他メンバーの姿に、長年連れ添ってきた仲間ならではの絆を垣間見る。だが、ライブが進むにつれ本来の調子を取り戻していき、後半にはほぼ復活して艶めかしい歌声を響かせていた。超人級のボーカリストの底力である。


 アンコールでは出演者入り乱れてのセッション。1日目はYOSHIKIがHIDEのギター、イエローハートMGを手にして登場。実弟・松本裕士氏が届けたという正真正銘の実機である。酒を片手に楽しむPATA、NORI、GEORGEの姿と、2日目では嬉しそうに終始エアドラムを叩いていたピエール中野の姿が印象的だった。


 LUNA SEAのメンバーが他バンドに乱入する場面もあったが、それ以外でも、袖やほかのステージからにこやかに、時に真剣なまなざしで他バンドを見つめるメンバーの姿も多く見られた。ただ呼んだだけではない、先輩後輩関係なく、LUNA SEAからの最大のリスペクトと感謝が込められた2日間。各々がそれぞれの音楽を切磋琢磨していくシーンの縮図ともいえる内容だった。フェスというよりも、“ドでかい対バン”とでもいうべきだろうか。


 同じフロアに3ステージ、同時進行の被りもなくスムーズな転換、見ようと思えばすべてのバンドを見ることが出来たところも印象的だった。来場者にとっては名前を知っていても見たことがない、聴いたことがないバンドに触れる機会も多くあったはず。LUNA SEAを通じて新しい音楽に触れる……かつて、彼らに様々な音楽を教えてもらったことも多かっただろう。そんなキッズたちが、時を経て、今回のフェスにも多く出演したのだ。そして、また次の世代へと受け継がれていくだろう。RYUICHIは“地層”と言っていたが、このLUNA SEAがもたらしたシーンは、深層に刻み込まれ、これからも何層にも重なっていくのである。(冬将軍)