今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第9戦イギリスGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)
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☆ ロベルト・メリ
3周遅れであっても、この12位は昨年モナコGPのジュール・ビアンキ9位入賞以来のベストリザルト。チーム体制が変わり、新スポンサーを得てアップデートを初めて実現。ミディアムタイヤで最長36周引っ張り、すぐインターに交換して雨に対応したのはギャンブルでも、このチームなら、やっていい手だ。44周目に、もう一度交換が必要となり上位勢に譲るたびにオフラインを走らざるを得ず、タイヤが冷え切ってしまうのを、よく我慢した。
☆ マックス・フェルスタッペン
3位、7位、5位とフリー走行ではルノー・パワーユニット勢のトップ。課題のロングランも順調で、カルロス・サインツJr.とともにダークホースと見られたのだが。パワーユニットのデータ設定ミスか、予選で急にオーバーステアに一変。グリッドは13番手に低迷してしまい、決勝は3周でスピン。学ぶべきことが、まだまだあると知った9戦目の授業……。
☆ セルジオ・ペレス
待望の“Bシャシー”シェイクダウンレース。重要なのは、ふたり共同で周回を重ね、てきぱき最適化を進めること。セッティングを振り分け、初日は合計117周。予選11位、決勝9位。ニコ・ヒュルケンベルグとともに2戦連続ダブル入賞。今季は、まだ荒っぽい(?)リタイアがないメキシカンだ。
☆☆ フェリペ・マッサ
意地を張るマッサ。ロケットスタートを決めてトップに出たからには守り抜く。2番手バルテリ・ボッタス相手に微妙な“ブロック”、別に悪いことではないが13周目のハンガーストレート・エンドで捨てバイザーをポイと後ろへ。強まるアンダーステア傾向が見てとれ、なんとか修正しつつチームメイトを抑え込んだ。しかし、ウエットに難があるマシン特性ではフェラーリに対抗できず。
☆☆ フェルナンド・アロンソ
予選アタックで見せたマゴッツからのS字コーナリングは、すさまじかった。「パワーに頼れない」現状ではコーナー維持速度を限界ぎりぎり保つほかない。セクター2タイムは14位へ上昇、でもマノーなみの直線鈍足でセクター1は18位、セクター3は17位。スタート直後の混乱でノーズを破損しながら、ハイペースのまま9番手でピットへ。アロンソならではの技だった。彼のファンは10位1点よりも、こういうプレーを喜ぶだろう。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス
彼でなければ序盤早々に「自分のほうが速い!」と叫び続け、もっと激しくチームにアピールしただろう。その後お許しが出たものの自重してチームメイトに追従、雨が落ちてきてからはペースダウン。珍しくインターミディエイトでのタイヤ・マネージメントに苦心していた。総括すると「忍耐の第9戦」、来季以降に関して噂が立ちこめるいま内心いろいろ考えているのではないか。
☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
39周目にボッタスをマゴッツS字で、41周目にマッサを3コーナーでオーバーテイク。濡れた路面でスパート、自力で2位を取り戻し、ルイス・ハミルトンと17点差に食い止めたのは大きい。オーストリアGPから、ずっと表情に負けん気が見える。まだ10戦あるのだから、いまのモチベーションを持ち続けてもらおう。
☆☆☆☆ ダニール・クビアト
強風吹きつけるシルバーストーンでダイナミック・ダウンフォース向上が見られた。ニューウェイさん陣頭指揮、コーナー出口速度を高めて非力なルノー・パワーをカバー。フェラーリ勢と争うレース展開を遂行していただけに、44周目ピットイン・ラップのスピンが惜しまれる。実力的にはフェラーリへ肉薄、次戦「ハンガリー反攻」に期待が持てる。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
14周目、いち早くハードタイヤへ。もし雨が降らずにいたら残り38周走りきれたのか。ハードタイヤで最長29周を走り、ハミルトンと同じ43周目にインター・チェンジ(シャレではないです)。好判断によって劣勢だった流れをひっくり返し、3位獲得。ウエットで見せた逆転劇、2008年雨のイタリアGP初勝利をチラッと思い出した。
☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
モナコの教訓からか、レースリーダーは冷静な自主判断によって43周目にピットインを行った。その前の42周目にはロズベルグに3.745秒差まで迫られ、ピンチになりかけたときの決断だから勇気が要る。この週末、初日からセットアップに悩み、46回目のポールポジションは獲ったもののスタートで後退。ピンチを克服した末の快勝、スポーツ性あふれる、わかりやすいゲーム内容で大観衆14万人の声援に応えた。ちなみに今年イギリスGPのチケット価格が見直されて10歳以下は無料に。安価ならスタンドは埋まる。昨年のレッドブルリンクも、そうだった。
☆☆☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
英国にベースを置く7チームで、最もシルバーストンに近いフォース・インディア。その地の利を活かし、グリッド路面の状態など徹底的にリサーチしていたのだろうか。そう思わせるくらいヒュルケンベルグのスタートは完璧なクラッチ・ミート、ホイールスピン皆無。ウイリアムズに目が行くと同時に、彼のダッシュに目が点に(!)。9番グリッドから5番手へ、かきわけるプレーを、あの“大混走ル・マン24時間”でいっそう磨いたのでは。Bスペック初戦にドライ~ウエットを経験できてチームはたっぷりデータを集積、この7位には6ポイント以上の付加価値がある。