2015年07月07日 21:21 弁護士ドットコム
同性婚を求めて、同性愛者ら455人が7月7日、日弁連に人権救済を申し立てた。東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた記者会見には、申立人の一人で、タレント・文筆家の牧村朝子さん(28)の顔もあった。
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牧村さんは、2013年にフランス人女性とフランスで結婚したことや、お互いの両親に挨拶し、受け入れてもらえたことなどを、涙ぐみながら説明。日本が同性同士の結婚を認めないのは理不尽だと訴えた。
同性婚が法的に認められていない日本では、同性愛者に対する偏見もまだ根強く、苦しんでいる当事者は少なくない。牧村さんも、辛かったエピソードの一つを記者会見で語った。
「私は10歳・・・小学校4年生の時に、はじめて女の子を好きになったんですけど、その時、自分のことがこわかったです。周りで言われる『気持ち悪い同性愛者』とか、レズビアンとかに、自分がなってしまうんじゃないかと思って、自分に対する恐怖感がものすごくありました。なので、自分が女の子を好きだということをないことにしようとして、中学校の時に忘れられない経験をしました。
入ったばかりの中学校で、一つ上の先輩が、『この子、レズなんだよ、入ったばかりの新入生を物色しているから付き合ってあげてよ』って、いじめられていて、私はそこで胸が痛かったんですけど、何と言いだして良いかわからなくて、一緒に笑ったんですよね。『ハハハ、うけるー。レズだってー』って。それがすごく辛かったのは覚えています」
このように語った牧村さんだが、現在は、同性婚が認められているフランスで、同国の女性と結婚生活を送っている。その彼女が、なぜ人権救済の申立に加わったのか。その理由について説明する文書を、牧村さんは会見場で配布した。
以下、その全文を転載して、紹介する。
神奈川県出身、牧村朝子と申します。現在、フランス人女性とフランスの法律で結婚し、フランスに移住して4年目になります。今日は妻が来られなかったのですが、妻と私が申し立てをした理由についてお話させていただきます。
妻とは2011年に東京で出会いました。彼女は子どもの頃から日本語を勉強し、大好きな漫画関連の仕事に就くために努力してきた女性です。勉強の甲斐あって、日本の出版社でいきいきと働いていました。子どもの頃からの夢を叶えたひたむきな姿に私は強く惹かれ、お付き合いがはじまることになりました。神社や古民家園といったいかにも日本らしいところでのデートを重ね、妻と私はやがて、法が認めなくても家族になっていきました。
ですが、私たちのような国際同性カップルにとって、一緒に暮らすことは簡単ではありません。法律上は他人扱いであるため、家族としての在留資格が下りないのです。私の妻は当時、労働ビザで日本に住んでいましたが、万が一ビザが打ち切られれば、もちろん引き離されてしまいます。私たちはフランスで暮らし始めることにしました。義理の両親が私を「私たち家族のもとへようこそ」と言って抱きしめてくれたこと、私の両親が私の妻を「新しい娘」と呼んで迎え入れてくれたことは、今でも忘れられない思い出です。
それでも、まだフランスで同性婚が法制化されていなかった当時、私はビザ切れを理由に日本に帰されてしまいました。日本でもフランスでも家族として認められないことによる不便と不安が、ビザ切れを機にふくらんでいきました。
2013年にフランスで同性婚が法制化し、私たちはなんとかフランスで共に暮らせるようになりました。共同名義の家を買い、在仏日本大使館にも報告をしました。「日本に出すための婚姻届を書いて下さい」と言われたので、夢のような気持ちで婚姻届を書きました。『夫となる者」の欄を、くっきりと「妻」と書き換えて。一生結婚はできないものと諦めていた私が、まさか行政の方から婚姻届を書くように言われるなんて、信じられないほどうれしかったです。ですがいざ提出すると、窓口で受け取り拒否となってしまいました。「同性同士だったんですね。では受け付けられません」と言われ、はじめから想定の範囲外とされていたようでした。
落ち込んでいるところに、今度はこんなニュースが入ってきました。在日米軍関係者がアメリカで同性と結婚した場合、日本でも家族と認めてビザを出すというのです。もちろん、これで離れ離れになる家族が減ったことは喜ばしいことです。ですが、在日米軍が家族を日本に迎えられるのに、日本人の私にはできない、という事実を前に、なんと理不尽なことだろうかと、今でも納得のいかない思いです。
妻はフランスで、日本に帰りたいと泣いていました。また万一日本の両親に介護が必要になった時も、私の両親にとって義理の娘である妻が日本で暮らせないというのはあんまりです。なぜ、書類上の性別を理由に、家族が引き離されなければならないのですか。なぜ、在日米軍関係者にある権利が、日本人の私に認められないのですか。こんな理不尽なことが正当化される世の中であってほしくありません。法の下の平等に基づき、妻と私は、日本の婚姻制度から性別による不平等を撤廃することを求めます。
(弁護士ドットコムニュース)