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NEWS、“攻め”の新シングルでチャート1位に その驚きの音楽的仕掛けとは?

2015年07月06日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

参考:2015年06月22日~2015年06月28日のCDシングル週間ランキング(2015年07月06日付)


 今週のオリコンシングルランキングは、1位にNEWS『チュムチュム』、2位にAAA『Flavor of kiss』、3位にQUARTET NIGHT『エボリューション・イブ』、4位にMONOEYES『My Instant Song E.P.』、5位にアルスマグナ『夏にキスしていいですか?』という並びとなった。


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 最近では、CDの売上枚数にダウンロード数やエアプレイ数、YouTube再生数などを加えた複合チャートの「Billboard Japan Hot 100」のほうがヒットチャート本来の役目である「流行っている曲を明確に示す指標」になっていると思うのだけれど、こちらの7月6日付けチャートでもやはり1位はNEWS『チュムチュム』となっている。


(ちなみにこちらは、1位にNEWS『チュムチュム』、2位にShiggy Jr.『サマータイムラブ』、3位にQUARTET NIGHT『エボリューション・イブ』、4位にカーリー・レイ・ジェプセン『アイ・リアリー・ライク・ユー』、5位に星野源『SUN』という並びだ)


 オリコンでは28位のShiggy Jr.『サマータイムラブ』がビルボードでは2位となっている件も非常に興味深いのだが、今回の記事ではやはり圧倒的なセールスでどちらのチャートでも1位となったNEWS『チュムチュム』について分析していこう。


 というのも、この曲、かなりすごいことになっているのである。相当攻めてるし、かなりおもしろい。そして実は練りに練られた音楽的な技巧が込められている。


 『チュムチュム』のコンセプトはずばり「インド」だ。曲名の「チュム」はヒンディー語で「キス」の意味。サビでは「♪チュムチュムINDIA」「♪チュムチュムしたいんだ」と歌う。MVでのメンバー4人の衣装も、ターバンを巻くなどインド王侯貴族をイメージしたビジュアルになっている。テレビで初披露された時からファンの間で「予想以上にインド」と混乱と称賛を巻き起こした一曲だ。


 この曲が「攻めてる」のは、まずはイントロ。いきなり変拍子から始まるのでる。6/8拍子と4拍子が混ざり合った複合拍子に乗せて、「♪エイヤーエイヤーエイヤーアアア~」というエスニックな旋律のユニゾンから始まる。


 タブラやシタールなど北インドの楽器を配したAメロで使われているのが、「バイラヴ・タート」というインド音階の一種。楽器のフレーズだけでなく、歌の旋律も「C-D♭-E-F-G-A♭-B」というスケール(キーはB)にのっとったメロディになっている。つまり、音色やサウンド感だけでなく、楽曲の構造もインド音楽の構造にのっとったものになっているのがこのパートだ。そして4人が代わる代わる「♪ナーチャーク チャーム チッチッア ガツナー」などと意味不明なことを歌う(おそらく「夏がアッチッチ 無茶苦茶な」を逆から読んだ歌詞)。


 そういう「なんだこれ?」と耳を引くフックに満ちたAメロに続いて、楽曲はBメロで展開。ここからはJ-POP的な、つまりは西欧音階をもとにしたコード進行が使われている。コード進行はなくインド音階をもとにしたメロディとリズムで構成されているAメロ(そもそもインド音楽にコード進行という概念はない)に対して、Bメロはまったく別の土台から組み立てられているのだ。


 そしてサビの「♪チュムチュムINDIA~」は王道のコード進行、直球でキャッチーなメロディという、まさに正統派のアイドル・ポップとなっている。このパートの音楽的な構造はもはやJ-POPそのものなんだけれど、ただ、ここでもAメロで使われていたタブラやシタールの音色がそのまま使われているがゆえに、「インド風」の味付けだけが残っている。


 ちょっと専門的な音楽用語を使いすぎたけれど、わかりやすく言えば「一口目はスパイスの効いた本場のインドカレー、でも食べ進めていくうちにいつのまにか日本のカレーライスになっている」というのが、この『チュムチュム』に込められた音楽的な仕掛けなのである。


 この『チュムチュム』を手掛けたのは、作詞・MOZZA、作曲・TAKA3、編曲・CHOKKAKUというチーム。ここ最近のNEWSの楽曲を多く手がけている作家陣だ。常識はずれでありつつ不思議な中毒性もあるというこの曲の背景には、グループとクリエイターチームの信頼関係もあるのかもしれない。カップリング「日はまた昇る」もなかなかの好曲に仕上がっている。


 和風EDMに挑戦した前作シングル『KAGUYA』に続き、オリエンタルな方向性で「攻め」の姿勢を崩さないNEWS。この「チュムチュム」は彼らにとっても代表曲の一つになりそうな予感がする。(柴 那典)