決勝の行方を占う土曜日のイギリスGP予選は、今回もチームメイト対決を制したメルセデスAMGのルイス・ハミルトンが4戦連続となる今季8回目、通算ではセバスチャン・ベッテルを抜いて現役最多、歴代でも単独3位に躍り出る46回目のポールポジションを獲得しました。
今週末もメルセデスの2台がグリッド最前列を奪ったことで、ハミルトンvsニコ・ロズベルグという一騎打ちの傾向が強くなったと言えそうです。初日のロングランペースとデグラデーションの少なさを見ても、メルセデスの優位は明らかでしょう。では、ハミルトンとロズベルグ、どちらが勝利するのか? 検証してみることにしましょう。
まず、ポールシッターのハミルトンには、初日のロングランでチームメイトのロズベルグよりも、0.5秒程度の遅れをとっていたというデータがあります。これについてはハミルトンが予選後に「昨日はどうすれば良いのか分からなくて途方に暮れていたけど、セッティングの問題を修正して明らかによくなった」と語るように、決勝では問題ないでしょう。ただ彼は、予選Q2のタイム計測に手こずり、日曜の決勝はロズベルグよりも1周分多い、5周使ったタイヤでスタートしなければなりません。つまり、チームメイトよりも早くタイヤを交換しなければならなくなる可能性があるということ……。これは、不安要素と言えるでしょう。仮に、日曜午後の天候が暑くなれば、ハミルトンのそうした不安要素はさらに大きなものとなるかもしれません。
対するロズベルグは、2日間にわたってトラブルが起きていることが最大の不安要素です。いずれも油圧系統の漏れが原因だったのですが、昨年先頭を走りながらギヤボックストラブルでレースを失っているロズベルグにとっては、マシントラブルこそ一番避けたいところ。タイトル争いで首位のハミルトンに10ポイント差までせっかく迫った今、チャンピオン争いにとって重要な一戦を、戦わずして落とすわけにはいきません。ただ、ここ数戦のロズベルグが波に乗っているのも事実。ハミルトンとロズベルグ、ふたりによる素晴らしい先頭争いを、期待したいものです。
一方、初日のロングランでメルセデス勢に次ぐ速さを見せていたフェラーリは、ウイリアムズの2台に2列目のポジションを奪われ、決勝はキミ・ライコネンが5番手、セバスチャン・ベッテルは6番手からのスタートとなってしまいました。ベッテルはQ3の最後にフェリペ・マッサのすぐ後ろを走ることになり、クリーンなラップを走ることができず、ライコネンも実質今年初めてチームメイトをアウトクオリファイこそしましたが、パフォーマンスを確実に向上させたウイリアムズには及びませんでした。
フェラーリはレースペースに自信を持っていますが、2台の前を固めるウイリアムズを抜くのは、それほど容易なことではありません。以前よりもテクニカルになったとは言え、今回の舞台となるシルバーストンも基本的には高速サーキット。直線スピードに優れるウイリアムズ優位なサーキットと言えると思います。確かにウイリアムズはタイヤに厳しく、レースペースではフェラーリに劣っていますが、今季のフェラーリはオーバーテイクを明らかに苦手にしており、コース上で決着を付けるのは難しいでしょう。フェラーリがウイリアムズの前に出るためには、積極的なピット戦略が必須。しかし予選でウイリアムズ2台を前に出してしまったのは痛すぎるところで、なんとかスタートで1台でも交わしておかなければ、フェラーリは3戦連続で表彰台を逃してしまうということになってしまうかもしれません。
ところで、ウイリアムズはオーストリア後のインシーズンテストでリヤタイヤ前に小型のウイングレットをつけて走行データを収集するなど、FW37の弱点と言われるリヤのダウンフォース不足の改善にも積極的に取り組んでいます。その結果が、徐々に現れていると見ていいでしょう。シーズン後半に向け、どこまでメルセデスAMGに迫ることになるのか? 今後の見所となりそうです。また、フェラーリ残留を目指すライコネンと、その後任候補の筆頭と目されるバルテッリ・ボッタスの争いという点でも、両チームの戦いは注目しておきたいところです。
なおフェラーリ2台の後方には、初日にメルセデスAMGやフェラーリと同等のロングランペースを披露していたレッドブル勢も控えています。トロロッソのマックス・フェルスタッペンこそ13番手に沈んでしまいましたが、ダニール・クビアト、カルロス・サインツJr.、ダニエル・リカルドらがどんなレースペースを発揮し、上位に絡んでくるのか? また、Bスペックマシンを走らせるフォース・インディアの2台からも目が離せません。
伝統のシルバーストンで開催されるイギリスGP決勝は、日本時間の今晩21時スタート。どうぞお見逃しなく。