「ありとあらゆることがパワーユニットのせいにされて結構つらいです」
2台そろってQ1で敗退したイギリスGP予選後の日本メディアに向けた会見で、ホンダの新井総責任者は珍しく語気を強めた。
それには伏線があった。直前に開かれたマクラーレンとの共同会見で、欧米のメディアからホンダのパワーユニットに対して否定的な質問が浴びせられたのだ。さらに金曜日のフリー走行で周回数が稼げなかったのは、パワーユニットの信頼性に起因するものだという誤った情報がパドックに飛びかっていた。実際には、アロンソは最初に従来型の空力パッケージで走行、その後オーストリアGPで投入した新パッケージに交換するためガレージで待機しなければならなかったという理由だった。
それなりの時間を要したのは、空力パーツを交換するだけではなく、走行データを取るためにピトー管などのセンサーをマシンに装着していたため取り外しにも時間がかかったからだ。
一方、初めて新パッケージで走るバトンは、新しい空力パーツの組み合わせがうまくいってなかったため修正に時間がかかってしまった。イギリスGPにBスペックを投入してきたフォース・インディアがフリー走行1回目のから順調に走行を重ねていたことを考えると、マクラーレン側の準備が十分だったのかという疑問はある。
土曜日のフリー走行でもアロンソの走行は、わずか6周に制限された。これもパドックでは油圧系やERSのトラブルではないかという噂が広まったが、実際は「あるセンサー」が温度の上昇を示し、ガレージへ戻したためだった。結局メカニックたちがマシンをすべて調べたものの問題は発見されず、大急ぎでマシンを元に戻して予選に間に合わせた。
バトンは土曜日のフリー走行では問題なく走行を重ねたが、新パッケージのセットアップが十分でなかったために、マシンバランスに苦しんだ状態で予選に臨まざるをえなかった。
「イギリスGPで課題に挙げていたパワーの割り振りは、完璧に近い状態にすることができた。でも、それが効果的にマシンの加速につながったかどうかは走行中のマシンの挙動を見てもらえればわかると思います。コーナー出口でアクセルオンするタイミングが遅いので、なかなかタイムが伸びなかった……」
チームの地元グランプリで、理想的な予選とはならなかった。しかし現段階でホンダだけを非難したり、またはマクラーレンの不備を批判したところで前には進めない。ホンダはパワーユニット側として、できる限りの仕事をしたが、まだ十分ではないということだ。
(尾張正博)