2015年07月05日 11:21 弁護士ドットコム
地方裁判所の支部単位でみて、弁護士が1人もいない地域を「弁護士ゼロ地域」、1人しかいない地域を「弁護士ワン地域」と呼ぶ。日本弁護士連合会はその解消に取り組んできたが、最後の弁護士ワン地域だった島根県隠岐の島町(おきのしまちょう)に7月5日、新たに弁護士1人が事務所を開き、日本全体で弁護士ゼロワン地域がなくなった。
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隠岐の島町で「隠岐ひまわり基金法律事務所」の所長に就任したのは、佐々木久実弁護士(28歳)。弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「弁護士への権威的なイメージを脱却し、事務所に来てもらうという姿勢ではなく、むしろ自分から悩みを抱える人たちのもとに出向いていきたいですね」と、意気込みを語った。
「離島という狭いコミュニティの中では、弁護士に相談したら相談内容が隣人にも伝わってしまうのではないかと不安に思って、相談できない人もいるようです。そうした島の方々に対して『秘密は守るので大丈夫』と伝えていきたいと考えています」
隠岐の3町1村を管轄する隠岐地域の松江地裁西郷支部管内は、昨年2月以降、弁護士が1人しかいなかった。利害が対立する事案では、それぞれの当事者の代理人となる弁護士が最低2人必要だ。そのため、当事者のどちらかは本土側の弁護士に依頼しなければならないなど、地域住民の負担が大きかった。
「今までは弁護士が1人しかいなかったので、トラブルが起こっても、利益相反で、弁護士に依頼できない人もいました。そういう人たちの助けになりたいと考えています。また(高齢化が進む)隠岐の島では、成年後見のニーズが増えています。その担い手の1人としても頑張りたいですね」
弁護士ゼロワン地域の解消にあわせ、日弁連の村越進会長はコメントを発表。「全国各地の司法アクセスを容易にし、あまねく『法の支配』を行き渡らせるために、引き続き弁護士過疎・偏在地域の解消に全力を挙げて取り組む」と表明した。
(弁護士ドットコムニュース)