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イギリスGP金曜フリー走行分析:メルセデス+跳ね馬優勢も、レッドブル系4台躍進の予感

2015年07月04日 14:20  AUTOSPORT web

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2015年F1第9戦イギリスGP ダニール・クビアト(レッドブル)
高速コーナーが連続するシルバーストン・サーキット。F1の最初のレースが開催された地であるという歴史もさることながら、鈴鹿などと並びパワーとコーナリング特性その他、マシンの総合力が求められるサーキットです。

 昨年に引き続き、今季も速さを見せつけ続けているメルセデスAMG。当然のごとくここシルバーストンでもフリー走行1回目、2回目ともにトップタイム。しかも、いずれもニコ・ロズベルグが最速を記録しました。その上、ただトップタイムを計測したというだけでなく、ロングランでも高い戦闘力を持っていそうです。

 フリー走行2回目は、2度の赤旗中断があり、各車ともあまり長いロングランはできないというセッション。そのせいか、メルセデスAMGふたりのペースは、一見したところそれほど際立ったものではありませんでした。しかし、ロズベルグのミディアムタイヤでのロングランは、注目すべきものです。多くのマシンがミディアムタイヤのデグラデーション(タイヤの性能劣化によるラップタイムの下落)に苦しむ中、ロズベルグだけはロングランの終盤に、このスティントの最速タイムを記録しています。つまりメルセデスAMGはデグラデーションが小さく、レースで非常に有利になるということ。もしくは、本来のレースペースはもっと速く、タイヤを労って走っていたのではないかと想像できます。ここから判断するに、イギリスGPでメルセデスAMGが上位を争うのは、間違いないはずです。

 一方、ルイス・ハミルトンの方は初日かなり苦戦したようです。フリー走行1回目では2番手だったものの、2回目は4番手。一発タイムでもロズベルグに及びませんでしたが、ロングランも同様かそれ以上の遅れを取ってしまっています。「ペースはまずまず」と語ったハミルトンですが、彼のペースはロズベルグから0.5秒かそれ以上遅いモノ。マシンバランスにも不満を持っているようで、本人も土曜日に改善できなければ「困ったことになる」と認めています。さて、ハミルトンはここからどのように巻き返してくるのか? 土曜と日曜の、最大の見せ場になる、ということができそうです。いつものスピードさえ取り戻すことさえできれば、上位争いは間違いないはずです。

 ただ、メルセデスAMG優勢の度合いは、これまでよりも小さいということも、初日の走行結果を見る限りでは言うことが出来そうです。対抗馬の筆頭は、まずはフェラーリです。フリー走行2回目、フェラーリは2位と3位のタイムを記録。同チームは、ふたりのドライバーに、装着するタイヤを分けてロングランをさせました。前述のとおり、それほど長いロングランではありませんでしたが……。

 ミディアムを履いたのはセバスチャン・ベッテル。そのベッテルのロングランは、ロズベルグには及ばないものの、それに次ぐペース。デグラデーションもメルセデスAMG同様に小さく、しかもアタックラップでの差もロズベルグと僅差でした。この点からも、今回フェラーリは、メルセデスAMGの対抗馬になりそうです。なおキミ・ライコネンはハードタイヤを履いてのロングラン。このロングランについてライコネンは「ハードタイヤには苦労している」と語っています。この対抗策を、チームは見極めることができたでしょうか? 対策さえしっかりとできていれば、メルセデスAMGに近い位置を走ることができるでしょう。

 今回はメルセデスAMGとフェラーリの他にも、表彰台を争えそうなチームがあります。しかもふたつも。それは、レッドブルとトロロッソです。

 レッドブルは、ダニール・クビアトが非常に興味深いロングランを行っています。彼はハードタイヤを履き、9周の連続走行を行いましたが、そのペースは非常に優れていました。ハード装着にも関わらず、ミディアムを装着したロズベルグやベッテルに近いペースを発揮したのです。ミディアム装着のダニエル・リカルドも、非常に良いペースで、燃料搭載量などの条件は分かりませんが、メルセデスAMGやフェラーリを脅かす戦闘力を秘めているかもしれません。クビアトは「まだ金曜日だからね」と謙虚な姿勢を崩しませんが、強いレッドブル“復活”となるのでしょうか?

 また、トロロッソも非常に良いペースを発揮しています。セッション後半、カルロス・サインツJr.とマックス・フェルスタッペンは揃ってミディアムタイヤを履き、10周の連続走行を行っています。彼らのペースは1分38秒台で揃っていて、これはフェラーリやメルセデスAMGと同等でした。それ以前のペースと比較すれば、この時の燃料搭載量は少なかったと想像できますが(サインツJr.はそれ以前にミディアムタイヤで14周のロングランを行いましたが、この時のペースは1分39秒台でした)、彼らはミディアムとハード双方のロングランも行っており、準備は万端に見えます。ただ、フェルスタッペンは「メルセデスだけが僕らより少し速い」と自信を見せていますが、ミディアムでもハードでも、デグラデーションが若干大きいというのが心配なところ。1周あたり0.1秒前後のデグラデーションであり、ここが最大の弱点ということになりそうです。

 それ以外のチームも迫っています。ウイリアムズのフェリペ・マッサは、ミディアムでもハードでも1分38秒台後半から1分39秒台前半で走行しています。さらに、Bスペックマシンを投入してきたフォース・インディアのペースも上々で、入賞争いに加わってくることになりそう。ただ、これらの2チームは安定したロングランを実施できておらず、彼らの戦闘力を読むのは、非常に難しいというのも正直なところです。ロータスとザウバーは、上位チームからは若干離れているようで、今回入賞を争うのは難しいかもしれません。マクラーレン・ホンダはさらに離れた位置。パワーユニットの使用制限のためか、初日はあまり多くの周回をこなすことができませんでした。

 あくまで、初日の走行を分析した限りでは、イギリスGPは今季稀に見る大接戦となりそう。メルセデスAMGが最速マシンであることは間違いなさそうですが、そのリードはいつもより小さく見えます。当然、ここまでの各レースを見る限り、W06は総合性能でも抜きん出ているはずですが……。ただ、それ以下は本当に大混戦。その中でもレッドブル・グループの4台がどれほどの戦闘力を見せるのか? 今季初の表彰台の可能性もあると思います。土曜日以降の走行セッションにも、ぜひご注目ください。