2015年07月04日 12:21 弁護士ドットコム
今年3月、小中学校の道徳を「正式な教科」として位置づける学習指導要領の改定が告示された。それを受けて、日本弁護士連合会は6月30日、「いま、教育に何が求められているのか?」と題したシンポジウムを東京・霞ヶ関の弁護士会館で開いた。弁護士たちからは「道徳の教科化」を疑問視する声があいついだ。
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今回の改定により、小学校では2018年4月、中学校では2019年4月から、新しい道徳の授業が始まる。現在も「道徳」の時間が週に1回もうけられているが、「教科外の活動」という位置づけであるため、他の教科や行事の練習などに振り替えるなど、教師によって対応にばらつきがある。一部では形骸化を指摘する声もあった。
正式な教科となると、検定教科書ををもとに、道徳の教材をただ読むのではなく、いじめ防止などのテーマで、問題解決や体験学習をもとにした「考え、議論する」道徳教育を狙うそうだ。また、数字による成績ではないが、文章で児童・生徒の成長の様子を「評価」する制度がはじめて導入される。
シンポジウムに登壇した、日弁連教育法制改正問題対策ワーキンググループ委員の小林善亮弁護士は、道徳の教科化について「道徳は『どのように生きるか』に関わることで、それは本来、子ども一人一人が選び取るべき事項です。道徳を教科化して国が教え、評価することになれば、国が特定の価値を『良い』と肯定し、子どもに押し付けることになる。子どもの思想良心の自由を侵害するのではないか」と問題点を指摘した。
東京都内の私立高校で社会科を教える現役の教員でもある神内聡弁護士は「今の教育は、画一的なものを求めていて、『何が正しいのか』を上から教えていく傾向が強い」と話す。
また「統制が取れているクラスのほうが、担任としての評価が高まるという傾向がある」という実態を指摘し、生徒の個性を重視せず、画一的な意見でそろっているクラスのほうがいいという傾向が強まるのではないかとの懸念を示した。
「今の教育現場を見渡すと、全員が日本人のクラスは少なく、私が担任をするクラスでも、44人の生徒のうち3人は日本国籍ではありません。道徳の教科化が行われると、外国籍の生徒に対して、日本独特の礼儀や道徳観が、なかば優越的に『正しいこと』として教えられていくのではないかという懸念があります」
このように神内弁護士は話していた。
(弁護士ドットコムニュース)