トップへ

Apple Music、LINE MUSIC、AWA……小野島大が各サービスの特色を読み解く

2015年07月04日 11:40  リアルサウンド

リアルサウンド

Apple Music

 Appleが、7月1日、音楽ストリーミングサービス「Apple Music」の3カ月無料トライアルを開始した。


(参考:定額制音楽サービスの新潮流ーーApple Music、Spotify、AWA、LINE MUSICは何を変えるか?


 2015年に同じく無料トライアル期間を開始したAWAやLINE MUSICに続く、日本の代表的な音楽ストリーミングサービスになりうるサービスだ。日本のストリーミングサービスにおける役者が出揃ったと言えるこのタイミングで、音楽配信について長く論じてきた識者は各サービスの特徴やユーザビリティをどう受け止めているのだろうか。電子書籍『音楽配信はどこへ向かう?』(impress QuickBooks)の著者である小野島大氏は、次のように話す。


 「それぞれの特色が出ていると思います。AWAは、プレイリストを共有しながら楽しむもの。LINE MUSICは、JPOPに強く流行の楽曲を友だちとシェアして楽しむもの。Apple Musicは、洋楽に強くコアな音楽ファンに親しまれるサービスといえるのではないでしょうか」


 以下、小野島氏のコメントを交えながら、各サービスについて検証してみたい。


■AWA「プレイリストとラジオで楽しむ」


 AWAのページ構成は、「RADIO」以外はすべてプレイリストをまとめたページとなっており、プレイリストを通して音楽を楽しむスタイルを展開している。


 「AWAのスタッフが選んだプレイリストやユーザーがつくったプレイリストが、次々とあがってくる。その中から気になったものを選んで楽しむのが一番メインの使い方でしょうか」


 現在、Da-iCE、DEEP、WHTE JAMなどのアーティストによるプレイリストも用意されており、今後もそのようなプレイリストを充実させていくようだ。


 また「RADIO」ページでは、選択した曲やアーティストの雰囲気に近い楽曲をランダム再生で楽しむことができる。


 「UIやデザインが、目的の音源を探して聴くという用途よりは、プレイリストを手軽に聴くという用途に向いている気がしています。有料コースにプレイリストとラジオのリスニングのみ視聴可能な「Lite Plan」(360円)があるのが象徴的。いわばアラカルトというよりコース料理主体の店のようです」


■LINE MUSIC「最新曲を友だちとシェア」


 LINE MUSICは、楽曲配信サイトのようにおすすめ楽曲をTOPページに並べた構成だ。毎週水曜日の新譜リリースタイミングでピックアップ楽曲も更新されており、新曲や流行りの楽曲がメインコンテンツとして扱われている。LINEでシェアすることを意識した、メッセージ代わりに使用できる楽曲のプレイリストも用意されている。


 「特に最新のJPOPは、他の2サービスに比べてやや揃っている印象ですね。その代わり、洋楽、特にオルタナティブなロックやちょっと前のクラブ系などのラインナップがいまひとつ、という印象です。プレイリストはものによっては意外と充実していますね」


 LINE友だちがよく聴いている楽曲を知ることができる「フレンズチョイス」や、LINE友だちやグループでシェアした曲を確認することができる「シェア」、無料期間終了後、30日間1080円の利用料が600円になる「学生割引」が用意されているという点から、流行に敏感な中・高生のLINEユーザーをターゲットにしているサービスといえる。


 「LINE MUSICの場合はLINEと直結しているため、友だちとLINEで音楽を共有するなど、音楽を使ったコミュニケーションを楽しもうとするカジュアルなユーザーに喜ばれるサービスという印象です。SNSとの連携機能はどのサービスも一通り実装してますが、やはりLINE MUSICとLINEの連携が一番スムーズですね」


■Apple Music「洋楽好きやコアな音楽ファン向け」


 Apple Musicの一番の特徴は、サービスを使い込むことによって、よりユーザーの嗜好に合ったコンテンツが提供されるという点だ。各ユーザーに合わせたおすすめ楽曲やプレイリストが表示される「For You」機能や、24時間放送や有名DJを招いて音楽プログラムを届ける「Radio」で「ステーション」と呼ばれる自分の専用ラジオが作成できる機能などにユーザーの嗜好が反映されていくという。


 「洋楽に関しては他の2サービスに比べてかなり手厚いですね。ジャンルによってはかなり深いところ、LINE MUSICとは逆にオルタナティブなロックやクラブ系の楽曲が多くラインナップされているという印象を受けました」


 アーティストの音楽ルーツで構成したApple Music作成のプレイリストや、USの『ローリング・ストーン』誌がキュレーターとなり作成したプレイリスト、「CONNECT」というアーティストやキュレーターがユーザーとつながる新しい音楽コミュニケーションツールが提供されるなど、音楽ファンへ向けたコンテンツを多数揃えている。


 また、Apple Musicは、iTunesを使用できる各機器(iPhone、Mac、Windows PC、iPadなど)で利用することが可能で、iTunesライブラリの曲をあわせて再生できるのはもちろん、Apple Musicから楽曲をダウンロードして「マイミュージック」上でオフラインで聴くこともできる。


 「PCで使えるということが非常に大きいので、私個人としては、Apple Musicを使うことが当面多くなりそうです。しかしAWAやLINE MUSICも秋にはPCで使えるようになると聞いていますし、現状ではスマホはiPhoneしか使えないApple Musicも秋にはAndroid対応になる。勝負はこれからでしょう。


 ただ、Apple Musicは、AWAやLINE MUSICのように低ビットレートのストリーミング配信を選べません。スマホユーザーが屋外などで通常回線を使用してストリーミングを聴き続けると、スマホのデータリミットにすぐ達してしまう危険があります。オフライン再生機能があるとはいえ、音楽のライトユーザー層にとっては、どれだけ良い楽曲を揃えているか、ということと同じくらい、データ量の問題は重要なこととなるでしょう」


■今後の展望ーー「それぞれの強みを伸ばすことに期待」


 まず、各社が行う取り組みの中で共通して言えるのは、プレイリストにおいて他社との差別化を図ろうとしている動きである。


 「プレイリストの重要性はどのサービスも十分認識していると思うので、どんどん充実していくと思いますよ。ただ、聴ける楽曲が増えないことには、プレイリストづくりを思うようにできないはず。今後、無料期間が終わる秋、あるいは半年、一年経って、各社どのように楽曲を充実させていくのか、ということも関係してくると思います」


 音楽ストリーミングサービスが日本でなかなか始まらなかったように、サービスが始まった後も、邦楽曲のラインナップの充実が各社課題となることは間違いないだろう。そんな中、成長が見込まれるのはどのサービスだろうか。小野島氏はこう続けた。


 「洋楽を主に聴く人にとっては現状ではApple Musicが有力な選択肢となりそうですが、邦楽はやはり弱い。邦楽に関しては、LINE MUSICが今後充実してくるのではないかと期待しています。ソニー、エイベックスという2大メーカーが資本参加しているのは大きい。そういう意味では、LINE MUSICとApple Musicの伸びが大いに期待できるのでは、と思います。AWAはプレイリストの充実をはかり、ラジオ的な機能に特化していけば、独自の路線を開拓できるのではないでしょうか」


 今後も引き続き、日本の音楽ストリーミングサービスの動向に注目していきたい。(久蔵千恵)