2015年07月02日 10:51 弁護士ドットコム
島根県松江市の住宅街で、車のワイパーのゴムが引きちぎられるなどの被害が約40件あいついだ。誰がこんないたずらを——不審に思った警察の捜査で明らかになった犯人は「カラス」だった。巣作りに利用した可能性があるという。
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報道によると、被害が始まったのは今年の2月ごろ。被害届を受けた松江署がのべ約50人の捜査員を投入して捜査を進め、防犯カメラを設置するなど万全の体制で犯人を待ちかまえた。
防犯カメラに、犯人の黒い影が映ったのは、5月下旬。車のボンネットにとまり、ワイパーをつつくカラスの姿が映し出されていた。目撃情報などの証拠もそろい、同署はワイパー破壊の犯人をカラスと断定。その後、被害は沈静化したが、地元自治会では来年の繁殖期も警戒するという。
この報道で気になるのは、野生動物によって車を破壊されたり、事故がおきた場合、自動車保険で修理費を補償してもらえるのだろうかという点だ。
ワイパーがカラスに破壊された場合、自動車保険でカバーされるのだろうか? 弁護士ドットコムニュースの記者が、大手損害保険会社2社に取材すると、「補償の対象となります」と意外な答えがかえってきた。詳細は次のとおりだ。
「一般条件の車両保険であれば、偶然の事故として補償の対象となります。ワイパー破損のように、契約自動車が部分的に破損している場合には、実際にかかった修理費などから、自己負担額(免責金額)を差し引いた金額が支払われます」(A社)
「一般型の車両保険を付帯されている場合のみ、補償の対象となります。支払い金額は、設定している保険金額を限度に、修理代から免責金額を引いた額が支払われます」(B社)
今回の事件では、カラスはワイパーを損傷させただけだったが、もし野生動物との接触によって、車に乗っている人がケガをした場合はどうなるのだろうか。地方の一般道などでは、野生動物と車の接触事故が少なくない。徳島県では2014年10月から12月にかけて、イノシシや鹿といった野生動物と車の事故件数が60件発生したと報じられている。
イノシシなど大型の野生動物と自動車が接触した場合、その衝撃で車に乗っている人がケガをする可能性もあるだろう。そのような場合に、治療費は保険から支払われるのだろうか。これについても、2社ともに「補償対象」という。
「自動車に搭乗中の人のケガは、『人身傷害保険』または『搭乗者傷害保険』によって補償されます。人身傷害保険は、被保険者に生じた損害(治療費など)を、実損てん補(保険契約時にあらかじめ定めた保険金額を上限として、実際の損害額を保険金として支払うこと)で補償するのに対し、搭乗者傷害保険では、ケガの程度や入通院の日数に応じて定額を支払います。
突然飛び出してきたシカやイノシシを避けられず接触したことによって、搭乗者がケガをした場合は、もちろん保険金が支払われます。また、それらを避けようとしてハンドル操作を誤り、ガードレールなどに衝突してケガをした場合なども補償されます」(A社)
「野生動物との接触事故が原因での事故は、相手のいない『単独事故』と同様の考え方になります。したがって、事故をした車の傷害保険(人身傷害保険や搭乗者傷害特約など)で補償されることになります。 人身傷害保険では、設定している保険金額の限度に、実際にかかったケガの治療費、通院交通費や精神的損害額(慰謝料)などが支払われます」(B社)
このように、自動車保険は「野生動物」による被害も想定して、カバーしているようだ。
(弁護士ドットコムニュース)