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カルメン・マキさん、無断で「楽曲カバー」されたと激怒ーー歌手の許可も必要なのか?

2015年07月01日 11:41  弁護士ドットコム

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1969年に大ヒットした「時には母のない子のように」などで知られる歌手カルメン・マキさんのツイートを発端として、カバー楽曲の取り扱いをめぐる議論が、ネットで話題になっている。カルメン・マキさんが歌った「ノイジー・ベイビー」(作詞作曲・クニ河内)を、ロックバンド「キノコホテル」がカバーしてCDに収録した際に、事前確認や見本盤の送付がなかったとして、怒りをあらわにしたのだ。


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カルメン・マキさんは、6月上旬に投稿したツイートで「音楽家が他人の曲をカバーする時には普通、相手の了解を得るものです。外国曲や面識のない相手なら所属事務所や組織、個人マネージャー、親しい者同士でも相手の承諾を得るのがルールです」と指摘した。



カバー曲の制作関係者はツイッターで、作詞作曲したクニ河内さんに許諾を得ていることを説明し、カルメン・マキさんに見本盤を送っていなかったことを謝罪した。一方、キノコホテルのボーカル・マリアンヌ東雲さんはツイッターで「歌い手の方が何やら今更騒いでらっしゃる模様なので、もう二度と演らないと決めました。面倒臭いから」と批判。この騒動を見たネットユーザーから、カルメン・マキさんを「老害」と呼ぶ声もあがり、注目を集めた。



「ノイジー・ベイビー」を作詞・作曲したわけではないカルメン・マキさんに対して、「マキの個人的な感情にすぎない」という批判の声も少なくない。その一方で、「その歌手のために書かなければ存在しなかった楽曲は無数にある」「(演奏者や歌い手に)敬意を払わなければ豊かなカバーって成り立たないのでは」など、理解を示す声もあった。



一般論として、他人の楽曲をカバーすることにどういった問題があるのだろうか。歌い手は、自分が歌った曲を勝手にカバーされて、それが自分の意に沿わないものだったとしても、何も主張することはできないのだろうか。著作権の問題にくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。



●何らかの「敬意の表明」はあったほうがよい


「楽曲のカバーには、原曲の『著作権法上の権利者』の許可が必要です。



実務的には、作詞家や作曲家などの著作権者が楽曲の著作権を信託しているJASRACから許可を得ていることが多いようですが、カバーに伴うアレンジの変更については、編曲権や同一性保持権などJASRACの管理外の権利が関係する場合もあります。



有名な合唱曲『大地讃頌(だいちさんしょう)』をJASRACの許可を得てJAZZバージョンにしたことが、作曲家との訴訟に発展した例もあります。できれば、作曲家等からも許可を取るほうがよいと思います」



歌い手との関係は、どう考えればよいだろうか。



「歌い手は、著作権法では楽曲の伝達者(実演家)で、自分の歌声に対する権利(著作隣接権)はありますが、楽曲に対する権利はありません。



ですから、原曲の歌声を使わないカバーには、歌い手の許可は必要ありません」



法律上は、作曲者や作詞家の許可を得ていれば、カバー作品を作ることができるというわけだ。



「ただ、作品の中には、ある歌い手のために作曲された楽曲、あるダンサーのために作られたダンスなど、その実演家がいなければ存在しなかった作品や、創作過程に実演家が深く関わっている作品もあります。



カバーに際しては、法的な権利はなくても、一言挨拶をするなど、原曲の歌い手に対する何らかの敬意の表明はあったほうがよいと思います。カバー曲を歌うほうも同じ実演家なのですから」



桑野弁護士はこのように述べていた。


(7月1日17時30分追記)


なお、今回の件について、制作関係者はツイッターで、カルメン・マキさんに対して、事前にあいさつをして、「今度カバーさせていただきます」と告げていたことを説明し、カルメン・マキさんも「思い出しました」とツイッターで返答している。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
骨董通り法律事務所。島根大学法科大学院教授。「外国著作権法令集(46)-ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権」(以上CRIC)、「著作権侵害の罪の客観的構成要件」(島大法学第54巻第1・2号)等。

事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com