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藤原さくら、ワンマンで実力発揮 “ギタ女”枠を越えたディープな音楽性とは?

2015年06月30日 23:01  リアルサウンド

リアルサウンド

藤原さくら(撮影=西槇太一)

 今年3月にミニアルバム『a la carte』でメジャーデビューしたシンガーソングライター藤原さくらが福岡・ROOMS(6月21日)、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE(6月26日)でワンマンライブ「bon appetit」を開催した。メジャーデビュー後、初のワンマンライブとなった本公演は、インディーズで発表したアルバム『full bloom』と『a la carte』の楽曲を中心にした構成。ふだんはギターの弾き語りが多い彼女だが、今回はフルバンドを伴い、その奥深い音楽性を存分に表現してみせた。


(参考:藤原さくらが明かす、音楽的ルーツと曲作りのプロセス「いいなと思う音楽をどんどん追求したい」


 ジョン・メイヤーの「Clarity」が流れるなか、バンドメンバーとともにステージに登場した藤原は、ワンピースにカーディガンというナチュラルなスタイル。ステージの真ん中に置かれた椅子に座り、メンバーに目配せすると「ワン、ツー、スリー、フォー」というゆったりしたカウントから最初のナンバー「Ellie」を演奏。アコースティックギターの軽やかな響き(3フィンガーによる、軽快なリズムも印象的)を中心にオーガニックなサウンドが広がる。さらにカントリーのテイストをたっぷりと反映させたポップチューン「We are You are」、憂いを帯びたメロディと厚みのあるリズムを軸にした「Cigarette butts」を披露。スモーキー・ヴォイスと称させる歌声によって、満員のオーディエンスをしっかりと惹き付ける。


 幼少の頃から父親の影響でビートルズに親しみ、その後、ノラ・ジョーンズをきっかけにしてアイルランド、北欧、フランスなどの音楽などを吸収しながら、ソングライター/ボーカリストとしてのセンスとスキルを磨いてきた藤原さくら。ライブを見ると、それらの音楽が彼女のなかに深く根付いていることがわかる。“取り入れる”とか“参考にする”というレベルではなく、楽曲、ボーカルのなかにきわめて自然に含まれているのだ。


 この日はドラマ「学校のカイダン」挿入歌に起用された「Just one girl」、「a la carte」のリードトラック「Walking on the clouds」のほか、未発表曲も5曲も演奏された。「1995年に生まれて、いろんな人に支えられて、こうやってたくさんの人たちの前で歌うことが出来ています」というコメントともに披露されたフォーキーなナンバー「1995」、ボサノヴァのエッセンスを交え、洗練されたポップセンスを感じさせてくれた「MaybeMaybe」、さらにノラ・ジョーンズ直系とも言えるアコースティックナンバーも。これらの楽曲からは、その音楽世界が豊かに広がりつづけていることが伝わってきた。また、アデルの代表曲「Rolling in the deep」のカバーも印象的。サビに入った瞬間に一気にエモーションを放出させるようなボーカルは、彼女のシンガーとしてのポテンシャルの高さを示していたと思う。


 アンコールでは、「私は筋肉が好きで、この前、マッチョカフェに行ったんですけど、筋肉は触らせてもらえず…」という可憐なルックスからは想像も出来ないようなMCを挟み、「あー筋肉が欲しい」と力強く(?)歌う新曲を披露、観客の笑いを誘った。ライブ本編のフレンドリーなトークもそうだが、この自然体ぶりも彼女の大きな魅力だろう。


 「ホントに楽しいです! これからもよろしくお願いします」という挨拶とともに歌われたポップナンバー「Goodbye」でライブは終了。J-POPをルーツにした“ギター女子”系のシンガーソングライターとは一線を画す、瑞々しく、芳醇な魅力に溢れたステージだった。


 藤原はこの日、7月21日に「カバー曲弾き語りライブ配信企画」を開催することも発表した。これはtwitter、facebookなどで募集したカバー曲のリクエストをもとにした企画で、シンガー・藤原さくらの豊かな表現力が堪能できる内容になりそうだ。詳細は後日オフィシャルサイトで発表されるので、ぜひチェックしてほしい。(森朋之)