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EVマシンがパイクスピーク初制覇。モンスター田嶋は総合2位を獲得

2015年06月29日 19:40  AUTOSPORT web

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EVマシンによるパイクスピーク初制覇を成し遂げた『Drive eO PP03』
6月28日、アメリカ・コロラド州で第93回の開催となるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの決勝レースが行われ、EV改造車クラスの『Drive eO PP03』を駆るリース・ミレンが総合優勝を果たした。

 28日の決勝当日は、4輪車両のタイムアタックも半分を過ぎた正午過ぎにゴールの頂上付近の天候が急激に悪化。雷とともにあられ混じりの雪が路面に降り積もったため走行は一時中断に。その後、コースの約3分の2地点にゴールを移し、距離を短縮して再開となった。そんな波乱の展開となった今年パイクスは、Drive eO PP03を駆るミレンがEVクラスのコースレコードを1秒近く縮める9分7秒222を叩き出し、大会初となるEVマシンでの総合優勝を成し遂げた。

『Drive eO』はラトビア共和国のEVチームで、参戦3年目となる今年、3個のモーターを直列に繋ぎ、前輪と後輪それぞれ駆動させる6モーター4輪駆動の“最強”EVマシンを新たに投入。ドライバーには、米オフロードのレジェンド、ロッド・ミレンの息子にして、自らもパイクスでの実績十分な実力派ドライバーのリース・ミレンを起用する万全の体制でパイクスに挑み、初となるEVマシンでのパイクス制覇を達成。来年100周年を迎える伝統のパイクスピークに、新たな流れを作り出した。

「リアモーターが突然セーフモードになるアクシデントが発生し、コースの半分以上をFFで走ることになってしまい、アンダーを抑えるのは大変だった」と走行を振り返ったミレン。

「自分にとって初めてのEVマシンでのチャレンジだったけど、実際マシンに乗ったのはレースウィーク直前の週末なんだ。公式練習で初めてパイクスを走ったけど、マシンはパワフルで4輪の挙動のバランスも良かった。トラブルが無ければ8分36秒は出せていたと思うよ。今年は前後別々のパワーユニットのバランス取りや、サスペンションのセッティングを先行させたけれど、来年は空力を高め、さらに記録を短縮したいね」

 総合2位には、パイクスの山登りも28年目、決勝当日に65歳の誕生日を迎えたベテラン、モンスター田嶋の『タジマモーターE-Runner Concept_One』が入った。田嶋は、コース序盤でブレーキトラブルが発生したものの、冷静に回生ブレーキに切り替えて走りきり、9分32秒401をマークしている。

「コーナーの手前でいきなりブレーキが効かなくなり、瞬時にブレーキのアジャスターを回生モードに切り替えて、回生ブレーキのみで頂上まで登り切りました」と語った田嶋は、今年のパイクスを次のように総括している。

「今年は全く新しいマシンを投入し、練習走行のセットアップでも順調に仕上がって決勝に臨みました。総合2位という結果になりましたが、私の昨年のタイムを更新することが出来たので良かったと思います」

 また、日本勢では、ホンダCR-Zをベースとした4モーター4輪操舵の『EVホンダElectric SH-AWD with Precisions All Wheel Steer』で、山野哲也がエキシビションクラスにエントリー。初めてのパイクスを10分23秒829で完走し、総合14位に。山野は「決勝のタイムは想定タイムを上回るものでしたね」と自身初のパイクスを振り返る。

「今回のクルマは、市販車に搭載されているリアの操舵やSH-AWDといった機構をふんだんに搭載し、4モーターというこれからの時代に一番マッチするであろう機能を満載したもの。日々路面状況が変化するパイクスピークで、決勝に向けてセッティングを最大限に活かすことができました」

 なお、今年のデイトナ24時間でデビューし、大会直前に参戦表明でアンリミテッドクラスの優勝候補に名乗りを挙げた、パイクスピークの参加車両としては初めてのフルカーボンコンポジットボディを採用したHPDの『ARX-04b』は、練習走行初日にターボトラブルからエンジンブロー。残念ながら、予選を走ることなくコロラドスプリングスを後にした。

(Kenny Nakajima)