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ゴールデンボンバー、ノーマルな販売手法でチャート1位 その快挙が示す音楽シーンの現状とは?

2015年06月29日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

ゴールデンボンバー『ノーミュージック・ノーウエポン』(Zany Zap)

参考:2015年6月15日~2015年6月21日のCDアルバム週間ランキング(2015年6月29日付)(ORICON STYLE)


 先々週はバンドとして今年最高の初週売上げを記録したMr.Children『REFLECTION』が1位、先週はソロアーティストとして今年最高の初週売上げを記録した安室奈美恵『-genic』が1位。そんな2015年上半期を象徴するビッグタイトルのリリースが通り過ぎた後の、いわば“凪”状態といえる今週のチャートを制したのはゴールデンボンバー2枚目のオリジナルアルバム『ノーミュージック・ノーウエポン』。えー、ゴールデンボンバーには何度か取材をしたこともあるし、ライブも要所要所で見てきたし、決して門外漢ではないという自覚を持ってはいたのですが、それでも「えっ? これまでオリジナルアルバムって1枚しか出してなかったっけ?」とちょっと驚きました。まぁ、今さら彼らの活動形態や表現方法がいかに独自なものであるかについて述べたところで「そんなの知ってるよ」って話だと思いますが、それにしてもキャリア11年目、アルバム12枚目にして、ようやくこれが2枚目のオリジナルアルバムという事実が、ゴールデンボンバーという「バンド」のユニークさを如実に表していると言えるでしょう。


参考:金爆『ローラの傷だらけ』が起こした波紋 “特典なし商法”がシーンに与えた影響を分析


 ゴールデンボンバーといえば、本作にも収録されている昨年のシングル『ローラの傷だらけ』を通常盤のみ/購入特典一切なし/ジャケットのアートワークは真っ白でリリースし、複数のバージョンや特典によって消費されているCDマーケットの現状への問題提起をしたことも記憶に新しい。さらに、本作のリードシングル的なタイミングで今年5月末にリリースした『死 ん だ 妻 に 似 て い る』では、各メンバーがボーカルをとった4種類の作品を制作、それぞれのメンバーの体臭を採取し再現した「体臭カード」を封入して、CDではなく雑貨(フレグランス)として流通させることでチャートにランキングされないようにするという手法を選択しました(「歌唱者が完全に違う作品はランキングで合算集計されないので、CDとしてリリースするとそれぞれのメンバーの売り上げ枚数によって順位が出てしまう。それを避けるため」という理由)。


 そんな彼らのやり方については、日本の音楽業界きってのトリックスターならではの話題作りと受け止める人も多いだろうし、まぁ実際にそういう側面も多々あるわけですが、自分としては圧倒的に「攻めてるなぁ」と感心してしまうわけですね。だって、真っ白のジャケといえばビートルズの『The Beatles』(通称『ホワイト・アルバム』)のことをまずは思い起こさずにはいられないし、ニュー・ウェーブ世代としては時代に対する強烈なアンチテーゼという意味で他のアーティストのレコードを傷つけるためにジャケットの表面をすべて紙ヤスリにしたドゥルティ・コラムの『The Return of The Durutti Column』を思い出したりもするわけです。また、大ヒット確実でありながら、敢えてチャートに集計されないようなリリース方法を選択したという意味では、新聞のオマケとしてCDを配ったプリンスの『Planet Earth』のこととか。あ、そういえばプリンスも自分の体臭をイメージしたフレグランスを販売してましたね。


 さて、今作『ノーミュージック・ノーウエポン』で注目すべきは、そんな攻めに攻めてきたゴールデンボンバーでさえも、ここにきてその攻撃の手を休めているということ。『ノーミュージック・ノーウエポン』はCD+DVDとCDの2種リリース、初回限定盤や購入特典はなしという、極めてノーマルなリリース形態となっています。それについて鬼龍院翔は「去年から色々と売り方についてやってみましたが、エアーバンドとしてはこの2形態くらいに落ち着くのが一番かな、と思いました」と自らのブログに書いています。それに続いて「でもまた、ファンのみんなを困らせず楽しいこととか変なことが思いついたらやります」とも書いているので、この先もまたトリッキーな手法でのCDリリースはあるかもしれませんが、今回の件で自分が思ったのは「もうミュージシャンにとってCDの売上げチャートというのは本当の闘いの場ではないんだな」ということ。ここ数年いろんなところで、いろんな発言がされているように、(特にシングルの)チャート上位の大部分を占めているのはお馴染みの面々による複数商法や特典商法に支えられた作品。そして、もはやその良し悪しを語る段階を超えて、リスナーを取り巻くリスニング環境は特に今年に入ってからのサブスクリプション・サービスの活性化によって加速度的に変化してきています。そんな中、インディーズという比較的自由な立場で闘ってきたゴールデンボンバーは、ここで一端、刀を鞘に収めてみせた。その上で、オリジナルアルバムでちゃんと初の1位をとってみせたのだから、これは快挙と言ってもいいのではないでしょうか。(宇野維正)