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天のいたずらで大波乱の結末。フォーミュラE最終戦ロンドン予選

2015年06月28日 22:30  AUTOSPORT web

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フォーミュラEロンドンePrix 予選トップ3の面々。左からロイック・デュバル、ステファン・サラザン、ジェローム・ダンブロジオ
フォーミュラE最終戦の予選が行われ、ベンチュリのステファン・サラザンがポールポジションを獲得した。途中雨が降り出す難しいコンディションの中、チャンピオンを争うセバスチャン・ブエミ(e.ダムス・ルノー)が6位、ルーカス・ディ・グラッシ(アウディ・アプト)が11位、ネルソン・ピケJr.(ネクストEV TCR)は最もコンディションに祟られてしまい16番手だ。山本左近(アムリン・アグリ)はクラッシュして予選タイム無しに終わっている。

 最終戦を迎えたフォーミュラEの最初のシーズン。初代チャンピオンを争う3人のドライバーにとっては、運命の予選である。なぜなら、ここロンドン・バターシーパークの特設コースはコース幅が狭く、前日の第10戦でも抜きにくいということが明らかになったからだ。決勝を上位でフィニッシュするためには、予選で前方のグリッドを確保することが必須。しかも、僅差のポイント争いであり、ポールポジション獲得者に与えられる3ポイントも実に貴重だ。

 前日のフリー走行前に明るみに出たターン1のバンプは改修が行われ、コース幅が広くなった。それと同時にターン1はフルスロットルで駆け抜けることができ、ラップタイムも大幅に向上している。

 ただし、その予選は“天のいたずら”によって、大波乱の結果となった。現地時間の12時から始まった予選。開始時には雨粒がポツリ、ポツリと落ち出すコンディション。観客席には傘の花が咲き始め、オンボードカメラでも雨粒が確認できる。予選第1グループで最初にタイムを計測したのはニック・ハイドフェルド(ベンチュリ)。タイムは1分26秒818である。しかし、前日から速さを見せるジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン)があっさりとこれを更新。ステファン・サラザン(ベンチュリ)、セナもまずまずのタイムを出すものの、ダンブロジオには及ばず、各車とも2回目のアタックに入っていく。

 ダンブロジオは2回目のアタックで自らのタイムを1分23秒965に更新。雨が落ちつつあるものの、まだ路面コンディションへの影響は少ない。第1グループ終了直前にサラザンが1分23秒901を叩き出してトップに立ち、そのままセッション終了となる。

 続いて行われた予選第2組には、前日勝利し、チャンピオンの可能性を高めたブエミが登場。フリー走行2回でもトップタイムを記録しており、そのアタックが注目されるところだ。第3グループに組み込まれ、いまだ待機状態のピケJr.は、空模様を気にする素振りを見せる。そのブエミが先頭でコースインしていく。

 ウォームアップラップでヤルノ・トゥルーリ(トゥルーリ)がターン9のシケインでオーバーラン。エスケープゾーンに入っていってしまう。これで当該区間はイエローフラッグが掲示される。これを見たブエミは一度アタックを自重し、次の周回に勝負をかける。サム・バード(ヴァージン)は気にせずアタックし、1分24秒806を記録する。

 翌周、ブエミがアタック。セクター1で最速タイムを記録するも、1周をまとめることができず1分24秒502で全体の4番手に留まる。ターン13付近から雨が強まっているようだ。続いて、バードがセクター2までサラザンのタイムを上回るペース。しかし及ばず3番手まで。ブエミは2回目のアタックで自身のペースは上回ったものの、全体の5番手。ブエミの後方からアタックしたロイック・デュバル(ドラゴン)が3番手に飛び込み、ブエミは10台がアタックを終えた時点で6番手と、チャンピオン獲得に向けて厳しい状況に追い込まれてしまったかに思われた。

 予選第3グループには、ピケJr.、ジャン-エリック・ベルニュ(アンドレッティ)、山本左近らが登場。雨量はかなり多くなってきている。先頭でコースインしたピケJr.は最初のアタック、ターン8でリヤを大きく滑らせる。なんとか立て直すが、今度はターン13で左近がクラッシュ! コースには赤旗が掲出され、ピケJr.はアタックを完了できない。左近は新品タイヤを履いており、雨に足をとられてしまったようだ。赤旗中断中も雨量は増していき、この後アタックするドライバーにとっては厳しい状況になってきた。ここからはフォーミュラE11戦目にして、初のウエットコンディションだ。オールウエザータイヤの性能も気になるところである。

 12時39分にセッション再開。完全なウエット路面で右に左にと暴れるマシンを、各ドライバーが必死でコントロールする。プラスチック製の縁石は滑りやすく、ピケJr.のマシンが完全に横を向いてしまう状況もあった。ピケJr.は2回目のアタックで1分35秒284を記録するのが精一杯。その後アタックを完了させたベルニュがピケJr.のタイムを上回り11番手。ピケJr.は12番手。ブエミ以上に厳しい立場になってしまった。

 続く第4グループには、現在ランキング3位のディ・グラッシが登場。雨の勢いは弱まっているように見えるが、路面は完全にウエットのままである。先頭でコースインしたのはニコラス・プロスト(e.ダムス・ルノー)だが、ディ・グラッシがすぐに交わして集団の先頭に立つ。そのディ・グラッシ、最初の計測ラップは1分40秒509。一方、ネクストEV TCRのオリバー・ターベイが1分34秒台で11番手に入ってくる。

 ディ・グラッシは2回目のアタックでターベイを上回って1分33秒887を記録して11番手に。この時点でピケJr.よりも前からスタートできることが確定する。しかし、ターベイがまたもディ・グラッシを上回る。ディ・グラッシは運命の最終アタックで1分32秒570を記録してターベイのタイムを再び上回り、11番手を確定させる。

 雨絡みの難しいコンディションとなった、フォーミュラE最終戦予選。ポールポジションは第1グループで出走したサラザンだった。徐々に雨が強まった中、チャンピオンを争うブエミが6番手、ディ・グラッシが11番手、そして現在ランキングトップのピケJr.が16番手と、大波乱の結果になった。

 なお、ピケJr.は優勝すれば無条件、それ以外でもブエミに5ポイント以上、ディ・グラッシに13ポイント以上多く獲られなければチャンピオン獲得が決定する。ブエミは優勝すれば無条件、ピケJr.より5ポイント以上獲りディ・グラッシに8ポイント以上多く獲られなければチャンピオンに輝く。またディ・グラッシはピケJr.より13ポイント以上獲り、なおかつブエミより8ポイント以上多くポイントを獲得しなければ、チャンピオンの座に着くことはできない。

 フォーミュラEの最初のシーズンは、いったいどんな結末になるのか? そして、天候はどうなるのか? 決勝レースのスタートは日本時間の6月28日(日)の24時スタート。レースの模様はBS朝日で生中継が行われると共に、インターネットでオンボードカメラのライブ映像が無料配信(http://fe-live.jp)される。