2015年06月28日 11:21 弁護士ドットコム
ジメジメとした日が続く梅雨のシーズンは、食中毒を引き起こす細菌の繁殖が活発になる。テレビや新聞でも、食中毒のニュースがあいついで報道されている。6月中旬には、宮崎県延岡市の居酒屋で食事をした学生7人が発熱や下痢などの食中毒症状を訴えた。
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報道によると、学生たちは鶏レバーやチキン南蛮などを食べ、食中毒症状を発症したとされる。そのうちの3人の便からは、ニワトリやウシなどの動物が保菌する「カンピロバクター菌」が検出されたという。延岡保健所は食中毒と判断し、居酒屋に営業停止1日の処分を命じた。
厚生労働省のウェブサイトによれば、カンピロバクター菌は、腹痛や発熱、嘔気、嘔吐、倦怠感といった症状を引き起こす細菌だ。1週間程度で治癒することが多いが、子どもや高齢者など抵抗力の弱い場合は、重症化する可能性があるという。
重症化する可能性が少ないとはいえ、症状の程度によっては、入院や通院が必要になる場合もあるだろう。飲食店で食べた料理が原因で食中毒になってしまった場合、治療費や慰謝料を店に請求できるのだろうか? 石崎冬貴弁護士に聞いた。
「まず、店側に治療費などを請求する前提として、その店で出された食事によって食中毒が発生したといえることが必要です。食中毒の場合、時間が経ってから発症することも珍しくありませんので、この点を証明することが難しい場合が多いといえます」
石崎弁護士はこのように説明する。どうやって証明すればいいのだろうか。
「一般的には、同じ店で、他の客にも同じような症状が発生したか、といった点が重視されますが、個人で調査するのは限界があります。医師の診察を受けながら、保健所の調査結果を待つのが通常でしょう」
その店の料理が原因と証明された場合、治療費や慰謝料は支払ってもらえるのだろうか。
「店の料理が原因だと証明できれば、実際にかかった治療費や入院費などはもちろん、食中毒が原因で働けなかった期間の休業補償や、慰謝料も請求できます。さらに、重篤な症状が出て、後遺障害などが残った場合は、今後働いて得られたはずの逸失利益についても、請求できる場合があります。
ただし、実際に請求するとなれば、費用や時間をかけて法的手続をとるだけの意味があるか、店側に支払い能力があるかなども考えなければなりません。特に、症状が軽微な場合には、法的手続をとる前に、店で食事したことを示すレシートや、症状や食中毒になったことを示す診断書などを示しつつ、店側と話してみたほうがよいのではないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士
横浜弁護士会所属。企業法務と刑事事件を専門的に取り扱う。フードコーディネーターなど食品・フード関係の資格も持ち、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。ベンチャーの支援にも積極的。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:http://www.ypartner.com/