トップへ

レポートが提出期限に間に合わないとき「文字化け」した文章で時間稼ぎ→これはOK?

2015年06月28日 10:21  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

コンピュータの「文字コード」の設定の誤りなどによって、文書ファイルを見たときに意味不明の文字が表示されてしまう「文字化け」。そんな文字化けを利用して、大学のレポートの提出期限を「延命」させる手法がツイッター上で話題になった。


【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】



投稿者は、レポートを期限内に提出できない場合、「文字化けした文章をwordにコピペして送れば、『文字化けしているようです。再提出してください。』と返信が来るまでの時間を稼げる」とツイート。このツイートは8000以上リツイートされ、「天才か」「なぜあと二時間早くツイートしてくれなかったのかorz」など、多くの反響が寄せられた。



だが、レポート提出先の教授などをだましていることには変わりはない。こうした手法に問題はないのだろうか。たとえば、詐欺罪などにあたらないのだろうか。刑事事件にくわしい中西祐一弁護士に聞いた。



●詐欺罪にはあたらない


「今回の手法で詐欺罪が成立することはないでしょう」



中西弁護士はこのように述べる。



「詐欺罪は、『人を欺(あざむ)いて財物を交付させた』場合、または、人を欺いて『財産上不法の利益を得』た場合に成立します(刑法246条)。



レポートの提出期限が延期になるという利益は、財物ではなく、財産上の利益にも該当しません。したがって、詐欺罪は成立しません」



●適正な採点業務を妨害したことになる


では、こうした「文字化け」レポートの手法は、問題ないということだろうか。



「いえ、そういうわけではありません。偽計業務妨害罪にあたる可能性があります。



偽計業務妨害罪は、『偽計を用いて、人の・・・業務を妨害した』場合に成立します。



文字化けした文章を貼り付けて送信する行為は、教授に対し、『私は提出期限内にレポートを作成しましたよ』という嘘のメッセージを送ることになり、『偽計』を用いたことになります。



その結果、期限内にレポートを提出しておらず、単位が認定されないはずの人が、単位認定を受けることになります。大学の適正な採点業務が『妨害』されたと評価できるので、偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いといえるでしょう」



提出した教授が実は優しい人で、期限をそれほど気にせず採点していたとしたら、「妨害」とまではいえないのでないか。



「偽計業務妨害罪は、判例上、現実に妨害の結果が発生しなくても、一般的に妨害の結果を発生させる『おそれ』があれば成立するとされています。



したがって、仮に、教授が優しい人で、もし素直に提出期限の延期をお願いすれば認めてもらえた可能性が高いようなケースでも、業務妨害罪が成立します」



中西弁護士は、「そもそも、文字化けした文章はフリーソフトなどで簡単に解読することが可能です。レポートの提出が間に合わない場合は、正直に提出期限の延長をお願いしたほうがよいと思いますよ」と述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。
地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net