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ハルカトミユキ、“音楽を届ける覚悟”を込めた渾身ライブ 10月日比谷野音フリーライブの発表も

2015年06月27日 22:41  リアルサウンド

リアルサウンド

ハルカトミユキ 撮影:石井亜希

 ハルカトミユキが6月19日、恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブを行った。今年は「毎月、新曲を発表する」などのマニフェストを掲げ、精力的に活動する彼女たち。『ワンマンライブ 2015 ‘世界’』と名付けられた本公演では、2015年に発表された楽曲を中心に、アンコールを含めて全19曲が披露された。


(参考:ハルカトミユキの新作『世界』が体現する、80~90年代半ばまでのイギリス音楽史


 浮遊感のあるシンセサイザーの音が響くなか、真っ赤なドレスワンピースに身を包んだハルカと、サイドを大胆に刈り上げたヘアスタイルのミユキが登場。駆け出すようなドラムから「世界」が始まると、ハルカは体を揺らし、ときどき前方に手を伸ばすなど、全身で表現しながら歌い始める。


 曲間で「ハルカトミユキです!」と挨拶し、休むことなく披露されたのは、エレキギターの尖ったサウンドが印象的な「バッドエンドの続きを」。弾むようなリズムがポップな「ヨーグルト・ホリック」では、ミユキが跳ねながら観客を煽り、会場に熱を広げていく。サウンドや歌詞がポップに洗練され、より幅広いリスナーにアプローチする方向性に変化した彼女たちの“今”を象徴するような序盤となった。


 途中のMCでは、ライブタイトルでもある“世界”に絡めて、ミユキが「いつか(海外で、ライブを)やりたいよね」と話しかけたが、ハルカはギターのチューニングに集中……というマイペースぶりを発揮し、会場を笑わせるという一幕も。


 その後、ハルカの小学校時代の思いが綴られた「未成年」、繊細なキーボードが美しい「マゼンタ」を経て、5月のマンスリーソング「春の雨」へ。儚げなサウンドに乗せて、つややかなハルカのハイトーンボイスが会場を包む。どの曲においても、ハルカのボーカルは伸びやかさが増した印象を受けた。


 ダークバラード「君はまだ知らない」を終えると、ハルカが吉田拓郎の「流星」を弾き語りで熱唱。24日に配信された「COPY」を披露する前には、「相手が思っていることがうまく理解できなくて、自分はだめな人間なんじゃないかって悩むことがよくある。表情や言葉を真似してみたりするんだけど、うまくいかなくて、怖い」と、コミュニケーションへの不安が落とし込まれた楽曲であることがハルカの口から告げられる。音源ではバンドサウンドだが、この日は冷たい響きの和音が耳に残るキーボードのみで、しっとりと、しかし激しく歌い上げられた。


 ライブも後半戦に突入し、じっと聞き入っていた観客だったが、ダンストラックの「嘘ツキ」がスタートするとテンションは急上昇。「振り出しに戻る」「tonight」とアップテンポのナンバーが続き、手拍子や合唱で会場は熱気が増していく。ハルカは踊りながらワンピースのスカートを外してショートパンツ姿に。ミユキがカラフルなライトが舞うなかで飛び跳ねながらドラムに近寄り、遊ぶようにシンバルを叩くシーンもあった。攻撃的なロックサウンド「ニュートンの林檎」のイントロが鳴り響くと、観客は待ち構えたように拳を振り上げ、「マネキン」で盛り上がりはピークになる。


 勢いを保ったまま、都市の混沌を歌った「プラスチック・メトロ」へ。「消費せよ 浪費せよ」「金を労力を命を時間を情報を」など語りの部分でハルカは、ステージを歩き回ったり頭を抱えたりと演劇を思わせるパフォーマンスを見せ、楽曲の世界を引き立てた。ラストの「青い夜更け」では、「みんなの声を聞かせてください」というハルカのMCどおり「ラララ」を繰り返すサビで観客の大合唱。会場が一体感に包まれたまま、本編が終了した。


 アンコールを求める拍手が起こるなか、突如、会場のサイドにセッティングされたプロジェクターに舞台裏を歩きまわりながら話すふたりの姿が映しだされ、10月3日に日比谷野外音楽堂でフリーライブを開催する、との発表が。これが、事前に告知されていた「ハルカトミユキの2人からの重要な告知」だったのだ。


 会場に驚きと喜びの拍手が沸き起こる。映像が終わると同時にステージに駆け込んできたふたりは、この日いちばんの歓声で迎えられ、ハルカトミユキの原点とも言える「Vanilla」「ドライアイス」の2曲を披露し、ライブは幕を閉じた。


 10月の野音フリーライブの直前、9月にはミニアルバムの発売も決定している。ハルカによると、「野音公演が決まったら、星空の下で演奏したい曲がたくさん浮かんできた」のだという。もともと発表されていた2015年のマニフェストは「ミニとフル、2枚のアルバムをリリース」のため、ファンにとってはまた一つ楽しみが増えたことだろう。


 全力疾走と言えるハイペースな活動について、ハルカは「野音で燃え尽きる覚悟」とMC中にコメントしていた。この日のライブは、その言葉が説得力を帯びるような“これから自身の音楽を遠く広く届けていこう”と決意するふたりの気迫が伝わってくる内容だった。(西田友紀)