「ブラック企業」という言葉が浸透した一方で、その存在を頭から認めようとしない人も浮き彫りになっている。よく見られる言い訳は「定義があいまいなままレッテル貼りをすべきではない」というもの。同じ環境でも受け取る人によって感じ方が違うとして、「批判は大きなお世話」と反発する人もいる。
しかし少なくとも、経営者の利益のために「若者を搾取する会社」が社会的に許されないという点は疑いがない。そんな不毛な定義・感じ方論争に終止符を打つ整理が、今野晴貴氏の『ブラック企業2 「虐待側管理」の真相』(文春新書)の中でなされている。自分が入社した会社もブラック企業ではと不安な人は、チェックしてみてはどうだろう。
生き残り競争をさせ、辞めさせる対象にはパワハラ
今野氏が整理した「ブラック企業の労務管理パターン」は、大きく3つの段階に分けられる。それは(1)大量募集→(2)選別→(3)使い潰しというステップだ。ブラック企業は、まず「月収の誇張」や「虚偽の条件」によって大量の人材を集める。
「(求人票の月給には)実は一定の残業代がすでに含まれている」
「役職手当4万円? あれは残業代のことです」
正社員募集をうたっておきながら、実際には契約社員だったり、業務請負(個人事業主)扱いだったりすることもあるという。
2段階目の「選別」とは、大量に募集・採用した若者に、無理な方法や違法な方法で収益を上げさせ、ついて来られない人を退職に追い込むことだ。
正社員として採用しているのにもかかわらず「お前はまだ見習いだ」などといい、異常なほどの残業を命じたりして生き残り競争をさせ、ついて来られない人を「試用期間中だから」などといって簡単に辞めさせる。
また、辞めさせることが決まっている社員は何をしても否定し、それでも辞めなければカウンセリングと称して「親に甘やかされて育った」などと追い詰め、「街角でナンパ」など業務と無関係のことを強要する「戦略的パワハラ」を用いることもあるそうだ。
短期的に「生産的」でも、社会全体として「持続的」ではない
3段階目の「使い潰し」は、選別段階で生き残った社員への対応で、「残業代を支払わない」「異常な長時間労働」「幹部や社長にして使い潰す」「辞めさせない」「うつになったら辞めさせる」といったものだ。
特に外食や小売りにおける「入社して半年で店長になれる」「店長になれば自由に働ける」、ITベンチャーでの「入社後すぐに社長になれる」などのうたい文句は、「無間サービス残業地獄」の内実を隠すものとして批判される。
こういった今野氏のブラック企業の例示に対し、ネットには「非常に効率的な組織運営ではないか」「ここまで生産性を高めなければグローバル競争には勝てない」などと評価したり称賛したりする声も見られる。
今野氏も、このような"人材使い潰し戦略による利益の追求"は、短期的には「生産的」に見えるかもしれないとしつつ、その結果が社員の健康を損なったりするものであれば社会全体として「生産的」とはいえず、人間が「持続的」な社会を目指すべきとしている。
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