2015年06月27日 10:41 弁護士ドットコム
飼い主と散歩する犬たちがさっそうと歩く姿は微笑ましいものだが、ときに、見る人を驚かせることもある。ある女性は、公園でリード(引きひも)をつけずに散歩していた小型犬が、ヨチヨチ歩きの赤ちゃんにじゃれて飛びつこうとした場面を目撃し、ギョッとしたという。「慌てて、その子の保護者が抱き上げたので、トラブルにはなりませんでしたが・・・」と話す。
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また、別の男性は、年老いた小型犬が、リードをつけずに飼い主の後ろを、トボトボ歩いているのを見かけて不安になったそうだ。「狭い道を車や自転車がスピードを出して通っていくので、車にも犬にも危ない」と感じるからだ。
「しつけをした犬だから大丈夫」「リードで制限せずに自由に運動させたい」といった飼い主の気持ちもあるだろう。とはいえ、散歩させているのは公道や公園といった公共の場。こうした「リードをつけずに犬を自由にさせる行為」に法的な問題はないのだろうか。鈴木智洋弁護士にきいた。
「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)は、第2条で『動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え・・・又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない』と定めています。
これを受けて環境省は『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』を定め、犬の所有者等に対し、犬の放し飼いを行わないように求めています」
国の基準はこうなっているということだが、自治体レベルでは、どのように運用されているのだろう。
「多くの地方自治体が条例で犬の放し飼いを禁止しています。東京都の場合ですと、『東京都動物の愛護及び管理に関する条例』が犬の放し飼いを禁止しています。違反に対しては、拘留または科料の罰則が定められています。したがって、犬にリードを付けずに飼うことは、法的に問題があるということになります」
飼い主は、やはり心してリードをつけなければならないようだ。
「愛犬家なら、動物と人が共生する社会を作るという動物愛護法の理念の実現を図るという観点からも、避けるべき行為です。
リードに犬を繋がずに飼養させたり、散歩させたりすることは、問題です。その犬が車に轢かれて死亡してしまったり、犬が咬みついて他人に怪我を負わせてしまったりすることもありますから」
仮に他人にけがをさせてしまった場合、どうなるだろう。
「リードに繋がず放し飼いにしていた犬が、人に咬みつくなどして怪我を負わせた場合、その飼い主は、民法上の『動物の占有者』の責任を負います。相手方が負った損害の賠償をしなければなりませんので、注意が必要です」
鈴木弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 智洋(すずき・ともひろ)弁護士
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。
動物法・ペット法に関しては、ペット法学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授として教鞭を取っている
事務所名:後藤・鈴木法律事務所
事務所URL:http://www.gs-legal.jp/index.html