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Shiggy Jr.今週リリースのデビュー曲が全国45局パワープレイ いきなり大評判を勝ち取った背景とは?

2015年06月25日 20:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Shiggy Jr.

 Shiggy Jr.が、6月24日にメジャーデビューシングル『サマータイムラブ』をリリースした。同シングルは、若手バンドのなかでもとくに注目株である彼らがメジャーシーンに打って出る第一歩ということもあり、各方面で大きな盛り上がりをみせている。


(参考:チャットモンチーからShiggy Jr.に受け継がれたものとは? ガールズロックの系譜をたどる


 それがはっきり示されたのが、彼らの名前をデビュー前から一躍有名にしたラジオでの評価だろう。これまでボーカルの池田智子は『オールナイトニッポンZERO』(ニッポン放送)でパーソナリティを務めており、ファンからその軽快なトークと誠実さが好評だったことや、楽曲のドライブに合うBPM感がラジオと相性抜群なこともあってなのか、表題曲はデビュー作としては異例の全国45局でパワープレイを獲得。また、ハウステンボス「水と冒険の王国」CMソングや、テレビ朝日系「musicるTV」6月度オープニングテーマなどの大型タイアップも続々と決定している。


 こうしたデータを踏まえつつ、彼らがなぜここまでリスナーや業界関係者の期待を集めるのか、ということにも触れておきたい。楽曲に関しては、リアーナと山下達郎を同軸で参照するポップセンスを持ち、それを洗練されたアレンジで作品化するバンドのコンポーザー・原田茂幸(ギター)の作家性が大きく作用している。表題曲では、ストリングスなども導入し、バンド最大のトラック数になったであろう豪華なアレンジが施されているが、ベーシックの部分では森夏彦(ベース)、諸石和馬(ドラム)と絡みながらリズムを構成する、原田のバッキングギターが核を担っている。また、「サマータイムラブ」というキャッチーなテーマにおいて、「ひと夏の~」というありがちな内容ではなく、制度としての「サマータイム」を主題とし、女性目線から湿り気ゼロの爽やかな片想いを歌詞で描くという、音楽作家としての適性も感じさせてくれる。


 そして表題曲と天候も雰囲気も対になる2曲目「keep on raining」では、森と諸石の手練2人が活躍を見せている。これまでもShiggy Jr.のレパートリーには「サンキュー」や「baby I love you」のような楽曲はあったが、音源でここまではっきり低音域が立っているのは初めてで、それと呼応するように、池田の歌声も凛々しく変化。バンドの違った側面を効果的に演出している。また、マスタリングエンジニアに関根青磁、アレンジャーに釣俊輔を迎えるなど、気鋭のクリエイターとの相性が抜群なことも、ポップバンドとしての可能性を感じさせる。


 他方、ポップアイコンとしてのShiggy Jr.についても論じておきたい。池田は先述のようにラジオパーソナリティとしても活躍しつつ、ファンとの交流も欠かさず行うなど、リスナーと距離の近さを保っている。また、自らの目標を明確に定めた「お願いノート」を一つずつクリアしていく様子に共感し、成長過程を見守ることで愛情を深めるファンも多い。各メンバーもSNSツールやブログで情報発信をし、それぞれのキャラクターが定まっているところなども、親しみの持てるポイントのひとつだろう【チャットモンチーからShiggy Jr.に受け継がれたものとは? ガールズロックの系譜をたどる】(参照記事)でレジー氏がJUDY AND MARYを例に挙げているが、フロントマンとしてバンドを背負って立つ池田と、彼女を取り囲む温厚な愛すべき3人の男たちというキャラクターはやはり画になるし、応援し甲斐があるというものだ。


 では、リリース前日である6月23日の店頭入荷日に際して、各所の反応はどうだったのだろうか。各地のCDショップでは、彼らのファンである店員による、大きな展開の様子がSNSで飛び交い、当日のiTunesチャートでは総合1位を獲得。メンバーもTwitter上でお祭り騒ぎのように喜んでいた。売り場が積極的にリリースを盛り上げたり、iTunesチャートの順位が上がっていく模様は、傍目から見てもバンドとファンの強い絆を感じさせる、感動的な成功体験であるように感じる。


 ここまで順調な滑り出しを経て、バンドはいよいよメジャーアーティストとしての一歩を踏み出す。池田が「お願いノート」に記した目標は“グラミー賞”であり、バンドは早くも世界を見据えているが、その歩みは決して奇をてらったものにはなっておらず、これまで着実に足場を踏み固めてきた。Shiggy Jr.はこれからスピード感のあるステージに突入するが、現在の地に足の着いたペースを保ったまま“変わらずに変わる”ことができるのか、期待して見守り続けたい。(中村拓海)