職場で誰かに頼みごとしたり指示を出したりするとき、「同じことを言っても人によって受け止め方が違う」と悩むことはないだろうか。
特にチームワークが求められる職種では、リーダーの言動ひとつで仕事の成果が大きく変わってしまうことがある。2015年6月23日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、ユニークな人材教育で働く人の個性を生かし、好業績をあげるスーパーを紹介した。
チンパンジー店長の下でオランウータンが商品開発
広島を中心に31店舗を展開する「エブリイ」は、開店前から100人以上の行列ができる人気のスーパーだ。商品の安さや鮮度のほか、店員の活気の良さや、連携の取れた売り場の切り回しも評判で、14年連続で売り上げがアップしている。
結束力を生み出す秘密は、5年前から行っているこんな取り組みだ。スタッフを行動特性に合わせて「オランウータン」「ゴリラ」「チンパンジー」「ボノボ」という4つの類人猿に分類し、人員配置に活用しているという。
惣菜部で商品開発を行う永安さんは、論理的で分析好きの「オランウータン」。冷静で納得するまで仕事をするタイプだ。「ボノボ」タイプの中野さんは、相手の気持ちに敏感で相談相手に向いている。
中野さんは、永安さんが考案した夏の新商品「うなぎおにぎり」に、彩りとして大葉を入れることを提案した。この商品の金額を決めるのは「ゴリラ」タイプの東坂さんだ。辛抱強く地道で細かい作業に向くという。
最終的に販売を即決したのが、「チンパンジー」タイプの田中店長。何事にも積極的で、直感を信じて前進するので、リーダー役には最適とのこと。自分のタイプは名札に絵で明示され、職場全体で共有する。
「感情」×「安定志向」でタイプ分け。接し方も変える
それぞれの持ち味を引き出したチーム力が発揮されたせいか、「うなぎおにぎり」は飛ぶように売れ、見事5分で完売してしまった。
エブリィでは、どのような基準で4つのタイプに分けているのか。番組によると、定期的に「類人猿セミナー」を開き、タイプ別のスタッフへの接し方を社員にも伝えているそうだ。
セミナーでは、2つの質問で簡易診断を行う。1つ目は「感情を表に出すタイプか、出さないタイプか」。2つ目は「ものごとを追求し成果を求めるか、安定を大切にするか」。
追究・成果を求め、感情を出すのがチンパンジー。感情を出しながら、安定を求めるのがボノボ。感情は出さず、追究・成果を求めるのがオランウータン、安定を求め、感情を出さないのがゴリラだ。
4つのグループに分かれ、タイプ別の接し方や指示の出し方を学ぶ。チーム力がアップすることを実感するために、こんな訓練も。フラフープを床に置き、人差指をつかってグループ全員で頭の高さまで持ち上げる。
どのグループもうまくいかなかったが、4タイプから2人ずつ選抜してチームをつくると成功した。4つのタイプがいることで、自然と役割が生まれてチームワークが良くなったのだ。
店の売上が1日20万円アップした例も
半年前に引野店の青果部門長に就いた小川英律さん(28歳・チンパンジータイプ)は、以前は現場スタッフへの指示がきつくなりがちで、思うように人を動かせなかった。セミナー参加後は意識が変わり、指示の出し方が的確で迷いもなくなったようだ。
部下のタイプが分かり、一緒にやった方がいいボノボ、具体的な指示さえ出せば地道に頑張るゴリラなど、タイプ別の声のかけ方を学んだことが役立っている。小川さんがセミナーに参加してから、店全体の売り上げは1日あたり約20万円アップしたそうだ。
番組を見て、最初はそんなに簡単にうまくいくものだろうかと懐疑的だったが、タイプ別に分けた仕事のやり方や指示の仕方が意外なほどハマっていて効果的なことに驚いた。スーパーだけでなく、あらゆる職場で部下の扱いに悩む人の参考になりそうだし、診断を元に適材適所に配置されるなら、働く人も幸せだと思う。(ライター:okei)
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