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「闇サイト殺人事件」死刑執行 「再審請求準備中で極めて遺憾」日弁連会長が抗議声明

2015年06月25日 17:42  弁護士ドットコム

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2007年の「闇サイト殺人事件」の主犯として死刑判決を受けた神田司死刑囚に対する刑が6月25日、執行された。上川陽子法務大臣の公表を受けて、日本弁護士連合会の村越進会長は同日、死刑執行に抗議する声明を発表した。


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この事件では、携帯電話の闇サイトを通じて知り合った3人の男性が、名古屋市の路上で女性を連れ去り、現金を奪ったうえで殺害。神田死刑囚は、強盗殺人罪などで死刑が確定していた。



村越会長は、神田死刑囚が控訴を取り下げたことについて、弁護人が無効だと主張していたことや、再審請求の準備中であったことを指摘。「このような状況における死刑の執行は極めて遺憾」と非難した。



また、いったん死刑が確定したが、静岡地裁の再審開始決定を受け釈放された袴田巌さんの事件に触れ、「もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた」と問題点を指摘した。



声明の全文は以下の通り。



●死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明


本日、名古屋拘置所において、1名に対して死刑が執行された。上川陽子法務大臣による初めての死刑執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、2014年8月以来7回目で、合わせて12人になる。本件は、弁護人が被執行者の控訴の取下げ無効を主張していた事案であり、また再審請求の準備中であった。このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当連合会は改めて死刑執行に強く抗議する。



当連合会は、2014年11月11日、上川法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。



2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、その心身に不調を来しており、袴田事件は、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。



死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。



2014年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの、そのうち40.5%は「将来的には、死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば、「死刑を廃止する方がよい」37.7%、「死刑を廃止しない方がよい」51.5%と回答している。この結果からも死刑廃止について議論する必要性があると言える。



当連合会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。



2015年(平成27年)6月25日


日本弁護士連合会


会長 村越 進


(弁護士ドットコムニュース)