僕は石立鉄男が出ていた「わかめラーメン」のCMと、財津一郎の「タケモトピアノ」のCMが大好きだ。どちらも商品名や社名を盛り込んだイメージソングを作り、ふとしたときに口ずさむようにして消費者の頭の中にいつまでも残っている。
ところが最近のCMにはこういう路線は少なく、ドラマ性と連続性を有するものがウケている気がする。たとえばソフトバンクの「白戸家」シリーズや、KDDIの「三太郎」シリーズ。2014年度の調査では、この2つが企業別CM好感度ランキングで接戦を繰り広げ、「三太郎」が1位を奪取した。(文:松本ミゾレ)
ソフトバンクの「桃太郎」はKDDIを意識している?
ここ数年首位をキープしてきた「白戸家」シリーズは2位に落ちたが、どちらもキャストが豪華で、頻繁に続きが放映開始となるなど話題性が尽きることがない。若い世代を惹き付ける展開を矢継ぎ早に見せる「三太郎」シリーズの人気が出るのも頷ける。
さらに最近では競合他社のCMのドラマ性を意識し、自社のストーリーを組み立てる新しい方向性のCMも現れた。ソフトバンクが打ち出した桃太郎関連のCMは、明らかに「白戸家」を追い落としたKDDIの「三太郎」シリーズのキャラクターを意識したものだ。
川上から流れる桃をおばあさんが拾わず、鬼によって包丁を入れられるなど、第1弾から不穏なスタートなったこのシリーズ。続く第2弾では、山奥の竹やぶで桃太郎が見事な殺陣で鬼を成敗するなど、方向性は「三太郎」とは一線を画している。
ネット上では「ソフトバンクがKDDIに喧嘩を売ってるわ」とする声が多く見られるが、このような「競合他社との対決」は、この6月からオンエアされている「楽天カードマン」の新CMにも見られる。
川平慈英扮するこのCM、今までは楽天カードの登録や発行が非常にお手軽だということが分かるものだったのだが、ここにきて一気に本領を発揮しているのだ。
楽天カードマンが「アマゾゲス」をねじふせる
「楽天カードマン」の新CMは、いつの間にか5人に増えた楽天カードマンが、特撮ヒーロー風のテーマソングに乗って「年会費無料!」などのキャッチコピーとともに悪役をねじ伏せる軽快なもの。CMの終盤には、なんと「アマゾゲス」という怪人が登場する。
これもまた「三太郎」に対するソフトバンクの桃太郎CMと同じ図式が垣間見える。いうまでもなくアマゾゲスとは、大手オンライン通販サイトのAmazonを示唆しているのだ(サイトには「出身:海の向こう」「好きな箱:段ボール」「この国のポイントを奪いに来たアマゾゲス軍団のボス」と紹介されている)。
長年ネット通販の二強との呼び声の高かった楽天とAmazon。楽天にとっては目の上のタンコブであったことは察するに余りある。そのAmazonがモチーフのアマゾゲスという怪人を撃退するのだから、このCMはなんとも刺激的だ。
限られた時間の中で、各社が知恵と工夫を凝らして、ユニークなものを生み出そうとしている苦労が手に取るように分かってしまう現在のCM。それだけに、見え透いたライバル企業への対抗心も話題になりやすい。
もっと続きを見てみたい
他社をディスるだけに終始するCMはあまり観たくはないけど、楽天のCMは刺激的な内容でありながら定番のテーマソング、商品メリットなどをしっかり盛り込んだ、いわばCMの完成形だ。
CMとしての完成度は非常に高いので、個人的にはもっと続きが見たい気がする。まあ一番評価されるべきなのは、特にCMを打たずともネット通販の王者として君臨しているAmazonなのかもしれないのだけど。
あわせてよみたい:フリーランスもクレカ作れる?