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GReeeeNの変わらない“強さ”とは? 年月を経ても愛される楽曲的魅力を探る

2015年06月25日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

GReeeeN

 GReeeeNのニューアルバム『C、Dですと!?』が6月24日にリリースされる。本作は2009年11月に発売された『いままでのA面、B面ですと!?』に続くベストアルバム第2弾で、近頃のシングル表題曲&カップリング曲から厳選されたDISC 1、「Dear&Friend」というコンセプトで厳選されたDISC 2からなる2枚組作品(各DISCからさらに厳選された14曲からなる1枚もの「1枚で楽しむ盤」も用意)。ここ数年のGReeeeNの活動を手軽に振り返ることができるだけでなく、結成から10年以上を経てもなお魅力的な楽曲を作り続けるGReeeeNの真髄に触れることができる。


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 今年春に公開された映画『ストロボ・エッジ』の主題歌に、GReeeeNの妹分として結成された女性グループ・whiteeeenが歌う「愛唄~since 2007~」が採用されたことも記憶に新しい。この曲はもちろん、GReeeeNがブレイクするきっかけとなった2007年の3rdシングル『愛唄』のカバーバージョン。男性目線で歌われているGReeeeNの原曲をそのまま女性が歌っているわけだが、だからといって違和感があるわけでもなく、自然と耳に、胸に入ってくる歌詞とメロディの印象は2007年に初めて聴いた頃となんら変わりない。


 そう、8年前に初めてこの曲を聴いたときも、この歌詞とメロディが自然と耳に、胸に入ってきたんだった。8年という時の流れは大きい。この8年間にJ-POPシーンも大きく変動している。当時は“シーン”と呼べるほどボカロも一般的ではなかったし(そもそも初音ミクが登場したのが2007年8月なのだから)、AKB48は同年末のNHK紅白歌合戦で「アキバ枠」として初出場を果たした時期で、ミリオンセールスを記録するのは3年後のこと。ちなみに2007年のオリコン年間ランキング1位は、シングルが秋川雅史『千の風になって』、アルバムがMr.Children『HOME』だ(GReeeeNのシングル『愛唄』は年間24位、1stアルバム『あっ、ども。はじめまして。』は年間17位にランクインしている)。


 ここまでサイクルの早いJ-POPシーンでは、約10年前の楽曲が懐メロと呼ばれることも別に珍しいことではない。「十年一昔」という言葉があるくらいだ、それも当然のことだろう。しかし、この春いろいろな場所で耳にする機会が多かった「愛唄~since 2007~」に、私は古臭さのようなものは一切感じなかった。サウンドが大きく一新されていたわけでもなく、アレンジも原曲に比較的忠実だ。


 映画のストーリーとのシンクロ度の高さも相まって再注目された「愛唄」だが、今回のベストアルバムを聴けば別に「愛唄」だけが突出しているわけではない。GReeeeNというと、どうしても「愛唄」「キセキ」「遥か」などの楽曲が大ヒットしたゼロ年代……最初のベストアルバム『いままでのA面、B面ですと!?』が発売された“第1期”のイメージが強いが、それ以降の“第2期”、つまり今回発売される『C、Dですと!?』に収録されている近年の楽曲も「愛唄」と同じだけ魅力的であることに気付くはずだ。


 ではなぜ、GReeeeNの楽曲には10年近く経っても変わらない魅力、変わらない強さがあるのか。まず、一聴しただけで口ずさめるようなわかりやすいメロディと、音を詰め込み過ぎずシンプルでわかりやすいアレンジ。聴く人の年代を選ばないという強い武器により、若年層からお茶の間層、そしてシニア層までもを取り込むことができた。アレンジにしてもその時代その時代のトレンドを取り入れるというよりは、歌と歌詞を最大限に生かす味付けとして施されており、その結果8年前の「愛唄」を今聴いても古臭いと感じることはない。


 歌詞についてはどうだろう。whiteeeenが歌う「愛唄~since 2007~」が映画『ストロボ・エッジ』に共感した10代女子に受け入れられたという点からもわかるように、GReeeeNの楽曲といえば「青春時代の淡いラブソング」「人生の応援歌」というイメージが強い。「青春時代の淡いラブソング」という点においては、今回のベストアルバムのDISC 2を、歌詞カードを手元に置いて聴けば一目瞭然だ。そして「人生の応援歌」という点については、GReeeeNの音楽に共鳴したトップアスリートとコラボしたYouTube映像を観ていただきたい。ここでは世界水泳での活躍も期待される入江陵介選手、プロボクシング世界チャンピオンを目指すロンドンオリンピック金メダリスト村田諒太選手、読売ジャイアンツ坂本勇人選手がそれぞれ「ビリーヴ」「Green boys」「pride」が楽曲&歌詞をバックに、トレーニングに励む姿などを見せている。楽曲と映像がリンクするこの動画を見ると、GReeeeNの魅力もより伝わりやすくなるだろう。また2011年の東日本大震災の際には震災復興プロジェクト『Green boys Project』の一環として、新曲「Green boys」を無料配信。「僕ら何度でも 何度でも 立ち上がるから」というフレーズが印象的なこの曲を通じて、当時東北を活動拠点としていたGReeeNが被災者の背中を押す結果となった。いろんな世代の、いろんな環境にいる人たちに寄り添う歌詞。これがGReeeeNの魅力の1つなのではないか。


 そしてもう1つ。GReeeeNといえば、徹底してメディアに顔を出さないアーティストとしても知られている。アートワークには4人のシルエットが用いられることがあるものの、CDジャケットやMVには一切登場しない。特にMVは有名俳優・女優や気鋭の新人を起用し、ドラマテイストの構成となっている。さらにアーティストが表に出ないことで、代わりにいろいろな人たちがそれぞれの楽曲の世界観を構築。特定のイメージが植え付けられることなく、聴き手はまるでテレビドラマや映画を観るように、自分の感性でその曲のイメージを広げていく。これも楽曲に入っていきやすい要因の1つかもしれない。また視点を変えれば、デビューから一貫して顔を出さないことで、ビジュアル的に経過年齢を感じることがないというのも大きい。そういう意味では、初音ミク的な魅力もあるのでは……というのは言い過ぎだろうか。


 さて、ベストアルバム『C、Dですと!?』の内容について話題を戻そう。各DISCにはそれぞれテーマが設けられているが、2011年以降にリリースされたシングルの表題曲や、先に挙げた「Green boys」、NEWSへの提供曲のセルフカバー「weeeek」、羽生結弦のCM出演で話題を集めた「はたちの献血」キャンペーンソング「ビリーヴ」、新曲「夏の音」、そしてボーナストラックとして「愛唄」と、この5年間のGReeeeNの活動をおさらいするにうってつけの2枚組作品だ。ベストアルバムとしてシンプルに楽しむもよし、メンバーが設定したテーマに沿って歌詞と向き合うもよし、そして映画『ストロボ・エッジ』をきっかけにGReeeeNに触れてようとする入門編としてもよし。ベストアルバムではあるものの、それだけでは終わらない魅力を多方面から感じることができるはずだ。


 そして、混沌とした21世紀のJ-POPシーンにGReeeeNが残した功績を、このベストアルバムから感じることもできる。以前は持てはやされたアーティストのスター性やカリスマ性が希釈傾向にある昨今、作り手、売り手はさまざまな手法でCDを売ろうと画策してきた。しかし最後の残るのは「歌」なのだ、ということをGReeeeNは証明したのではないか……そんなことを気付かせてくれる彼らの楽曲がこの先もずっと愛され続けることを願ってやまない。(西廣智一)