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乃木坂46、グループ史に残る“転機“とは? 2周年記念ライブ映像から振り返る

2015年06月23日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46『乃木坂46 2nd YEAR BIRTHDAY LIVE 2014.2.22 YOKOHAMA ARENA [Blu-ray]』

 乃木坂46が、6月17日にライブ映像作品『乃木坂46 2nd YEAR BIRTHDAY LIVE 2014.2.22 YOKOHAMA ARENA』をリリースした。同公演は、グループの歴史を語る上で欠かすことのできない大きな意義をもつものであり、ファンにとっては文字通り「待ちに待った」映像化といえる。今回は同作品の紹介を通して、『2nd YEAR BIRTHDAY LIVE』の魅力と意義を紹介していく。


(参考:「乃木坂46は、まだちっぽけな存在」 秋元真夏・生田絵梨花・高山一実が語る、グループの課題と未来


・ステージセットで楽しむ


 今年の2月に『3rd Year Birthday Live』はすでに行われているが、だからといってこの『2nd Year Birthday Live』が楽しめないということは全くない。この3年間のバースデーライブは、それぞれ違うステージセットになっており、そこに注目して映像を見るのもまた一興だ。


 2013年、幕張メッセで行われた『1st Year Birthday Live』はエンドステージであり、花道もとくになかった。『3rd Year Birthday Live』が行われた西武ドームでは、エンドステージを基本として十字に花道が伸び、中央とそれぞれの花道の先端にステージがあった。では、『2nd Year Birthday Live』が行われた横浜アリーナはというと、センターステージをメインとして360度を観客が囲むセットだった。メンバーの後ろには、映像のスクリーンもなければ美術セットもなく、あるのは大勢の観客とペンライトの海である。そのため、大半の楽曲で映像との連携に頼らない演出が数多く見られた。


 また、『2nd Year Birthday Live』で改めて注目したいステージは、センターに設置されたケーキ上のリフターだ。円状のリフターは3層になっており、そのアップダウンをうまく使ってメンバーが登場したり、入れ替わったり、見せ方を変えたりしているのが、映像ではより明確に楽しむことができる。


 照明に関しては、アイドルのライブであるため、基本的には彼女たちの表情が見えやすいようになっているが、「制服のマネキン」や「世界で一番孤独なLover」などではカラフルな照明やレーザー、花道に仕込まれた電飾を使ってパフォーマンスを盛り上げていたほか、「他の星から」の曲中には映像を映す幕が登場し、「扇風機」「コウモリよ」と異なるジャンルが続く6thシングルブロックをそれぞれに表現していた。


・メンバーが見せるライブでの顔


ライブの楽しみといえば、メンバーが見せる普段とは異なる表情や仕草も外せない。


 「ライブではイケメンになるんです」と自負する生駒里奈の表情は凛々しく勇ましい。当時は彼女がライブでの煽りの大部分を担い、キャプテン桜井玲香とともに進行も行っていた。その後、彼女がライバルグループであるAKB48との兼任を経験し、さらにパワーアップしていく前の姿を見ることができる。兼任活動を経ての『3rd Year Birthday Live』では、彼女の姿がグループの意識に影響を与え、パフォーマンスのレベルを一段上げていたりするので、そこを比較して見てみるのも面白い。また、普段はバラエティー担当の高山一実も、ライブの際には、彼女の尊敬する昭和アイドルのような輝きを放つ。彼女はそのジレンマに悩んでいるようだが、その二面性を持ち合わせることができることが一つの才能だと思う。


 クールなイメージのある橋本奈々未も、ライブでは異なる表情を見せる。不意にキュートな仕草をしてみたり、アイドルスマイルで可愛さを爆発させたり、とライブ中の彼女は目が離せないが、そのポイントが映像にしっかりと収まっている。


 さらに、ライブパフォーマンスの評判の高いメンバーを、この機会に改めて見ることができるのもありがたい。グループ随一のダンス力を持つ川村真洋が、トークコーナーで披露するソロダンスは見る価値があるし、中田花奈が持ち味としている、キレのあるダンスも艶っぽく素晴らしい。会場のスクリーンでは、やはり福神メンバーが抜かれることが多かったが、映像化によって多くのメンバーがピックアップされているのは嬉しい限りだ。


・“躍進の2014年”の口火を切ったライブ


 ここから、このライブが乃木坂46にとって、どのような公演だったのかを改めて考えていく。まず、当時のことを改めて整理すると、『2nd Year Birthday Live』が開催された2014年2月22日には、7thシングル『バレッタ』までをリリースしており、8thシングル『気付いたら片想い』の選抜発表後だったため、西野七瀬が初のセンターを務めることが決まっていた。また、当時休業中であった相楽伊織は参加していないものの、すでに卒業した市來玲奈や伊藤寧々といった多くのメンバーの姿を見ることができる。さらに、このライブの2日後には生駒里奈のAKB48兼任とSKE48松井玲奈の乃木坂46兼任が発表されたため、大きな節目といえるのだ。


 まずは西野七瀬について触れておこう。彼女はライブの1ヶ月程前に新センターを務めることが発表され、グループの単独公演としては選抜発表後初のライブだった。当時、西野のセンター抜擢に関してはその人気の高さを認めつつも、センターの重責を負えるのかと不安視する声も多かった。しかしライブでは、すでにマカオタワーでのバンジージャンプも終え、センターとしてこれからやっていくという覚悟を、そのパフォーマンスと表情で誇示してみせた。その結果、1年後のバースデーライブでは、表現力が飛躍的に高まり、一つ一つの仕草や表情で多くのファンを魅了するアイドルへと大きく成長した。


 また、このライブの数週間後には、初めてのアンダーライブの開催が発表されている。アンダーメンバーは『2nd Year Birthday Live』でも魅力的なパフォーマンスをみせており、MCの場面ではアンダーメンバー全員に話す機会が与えられ、それぞれに自分の特徴をアピールする場も設けられるなど、従来の公演よりもスポットが当たっていた。2014年が“アンダー躍進の年”に位置付けられる起因を作り、その後の活躍を支えたという意味では、『2nd Year Birthday Live』でのパフォーマンスで、その萌芽を今一度確認できるのだ。


 2期生と1期生全体がグループとしてまとまり始めたのもこの頃からだ。当時『NOGIBINGO!2』にて1期生と2期生が関わる企画も増え、8thシングルからは北野日奈子が選抜メンバーに、新内眞衣がアンダーメンバーに昇格している。前年12月に日本武道館にて行われたクリスマスライブでは、どこかぎこちない動きが目立った2期生だったが、『2nd Year Birthday Live』では、卒業生のアンダーをこなす機会も増え、乃木坂46のメンバーとしての一人一人の自覚も増したように思えた。2014年はアンダーメンバーの活躍の年という印象が強いが、そこにしっかとりと食らいついていき、1年後のバースデーライブで全ての研究生(=2期生)が昇格を勝ち取ったことを忘れてはいけない。


・乃木坂46史に残る転機


 このライブ最大のハイライトといえば、やはり西野七瀬と秋元真夏の溝が埋まった4thシングル『制服のマネキン』披露前の映像のシーンだろう。秋元真夏が4thシングル『制服のマネキン』で、学業による活動休止から電撃復帰し、さらに八福神入りを果たしたことと、それに伴って西野七瀬が福神落ちを経験したことから、始まったとされる2人の溝。2人がそれぞれ人気メンバーとして活躍していく中で、1年以上埋まらなかったこの溝を埋めたのが、映像中に西野のナレーションで告げられた「真夏、おかえり」だった。その後、半泣きで「制服のマネキン」を踊る秋元の姿も、2人の抱擁シーンも映像でしっかりと見ることができる。ライブ後も、2人のブログやインタビューなどによって語られた一連のエピソードに、多くのファンが感動を覚えたシーンは、約1年半経った今も色褪せない名場面だ。


 そしてこのライブの2日後には大組閣が行われる。生駒里奈のAKB48兼任と松井玲奈の乃木坂46兼任は、ライバルグループとの交換留学ということもあり、乃木坂46ファンの間では大きな議論となった。乃木坂46の歴史をこの大組閣の前後で分けるファンもおり「乃木坂46のみでの最後のライブ」と捉える向きもある。そう考えると、このライブは乃木坂46の一つの集大成といえるだろう。


・特典映像まで見どころたっぷりのDVD&Blu-ray


 メイキング映像には当時の裏話がぎっしりだ。西野と秋元のシーンについて、秋元が本番中に語った映像や、生田絵梨花がある演出に凍りつく表情、星野みなみが今でも忘れない大失敗について語る映像などが収録されているほか、リハーサルの合間に見せるメンバーのオフショットも満載で、素の彼女たちの姿を見ることもできる。のちに「からあげ姉妹」を結成する、松村沙友理と生田絵梨花の楽屋でのデュエットや、休憩中の過ごし方の違いなど、ファンならぜひ見ておきたい映像ばかりだ。そのほか、本編でもここでしか見られない映像がある。それは、岩瀬佑美子と宮澤成良(現:宮沢セイラ)のサプライズ登場だ。彼女たちとの再開を、カメラの前であることを忘れて喜ぶメンバーの表情を楽しめるほか、岩瀬からメンバーに送る言葉も心に染みる。両名のファンにとっては嬉しい映像であり、岩瀬に関しては『1st Year Birthday Live』以前に卒業していたため、彼女が参加したライブとしては初の映像化作品となった。


 ライブから映像化まで、長い時間を要してしまったものの、だからといって当時のパフォーマンスが色褪せることはないし、会場にいたファンはもちろん、このライブ以降にファンになった人々に対し、ライブの興奮と感動が多くのファンに届けられることは本当に喜ばしいことだ。ぜひ自宅でグループの2歳の誕生日をお祝いしようではないか。(ポップス)