「カナダGP以上に残念です」──ホンダの新井総責任者は、2レース続けて全滅となったオーストリアGPの結果に、くやしさをにじませた。
新井総責任者がカナダ以上に落胆した理由は、いくつかある。まず、カナダから続いていたトラブルを食い止めることができず、オーストリアでも続いたことだ。
カナダGPでのフェルナンド・アロンソのリタイア原因は、点火プラグのトラブルだった。そして2週間後のオーストリアGPではフリー走行2回目に今度はジェンソン・バトンのパワーユニットに点火プラグの不具合が発生。土曜日以降に向けて、ホンダはバトンのICEとMGU-Kの5基目を投入するとともに、6基目のターボチャージャーとMGU-Hを投入した。
これでバトンはレギュレーションの範囲を超えて4つのコンポーネントを使うため、5グリッド×4コンポーネントで20番手降格。さらに初めて6基目を投入するときの5番手降格を加えて、25番手降格というF1史上初のペナルティが科せられることになった。
日曜日のレースでも、トラブルは続いた。バトンのパワーユニットのインテークシステムセンサーの故障によって、パワーが制限されてしまったのだ。ピットから走行中のバトンにステアリング上のスイッチを操作してもらい改善を図ったが、修復には至らず、リタイアする決断を下した。
「信頼性に関して、問題を抱えていることは認識している。いまは今週末に発生したトラブルを克服することが最優先事項。出力のアップデートを含めて、シルバーストンに備えます」と語った新井総責任者。
落胆した、もうひとつの理由はオーストリアGPのレースで、虎の子の新空力パッケージを装着していたアロンソのマシンがスタート直後の2コーナー出口でライコネンと接触事故を起こし、大破してしまったことだ。
新しい空力パッケージが、レースでどんなパフォーマンスを披露し、どれだけのデータを蓄積できるか楽しみにしていたマクラーレン・ホンダのスタッフにとって、アロンソの0周リタイアは、バトンのリタイアとは別な意味で、つらい結果だったのではないだろうか。
(尾張正博)