家庭用の体重計で知られる「タニタ」は、社員食堂から生まれたヘルシーレシピ本が大ヒットし、レストラン事業まで手掛けている。2015年6月18日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、もはや計測機器メーカーにとどまらない「健康総合企業」の内側を紹介した。
この会社を率いるのが、三代目社長の谷田千里氏(43歳)。4人兄弟の2番目だった谷田氏は父とは折り合いが悪く、会社を継ぐ気はなかったという。手に職をつけて早く独立したいと調理師免許を取得して料理人を目指すが、腰を痛めて断念。
大学に入り直し、多くの経営者と関わるコンサルタント企業に勤務する。そこで「父としてではなく、経営者としてみたら優秀な人だった」と気づき、2001年、父を手伝いたいという気持ちで入社。7年後、36歳という若さで社長就任という経歴の持ち主だ。
イノベーションを連続して起こしながら成長
谷田社長は、会社の目指すところを「商品を通して日本を健康にしたい。それを成功させて輸出して、世界も健康にしよう」と語った。しかしそんな会社も、1923年の創業時は金属製品の製造・卸しから、煙草を入れるシガレットケースを作っていたというから面白い。
戦後はパン食に合わせトースター、さらに家庭用の体重計をいずれもヒットさせると、二代目社長が、世界で初めて乗るだけで体脂肪率が測れる「体脂肪計」を発売し空前の大ヒット。世界からも大きな注目をあびる。
三代目になっても画期的な開発は続き、身につけるだけで消費カロリーなどが測れる日本初の「活動量計」や、世界初の「携帯型尿糖計」「皮下脂肪厚計」「睡眠計」など、健康管理に役立つ様々な計測機器を発売しつづけている。
実はレシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」の出版企画は、体脂肪計の特許が切れて競合がひしめき、売り上げが伸び悩んでいた頃に舞い込んだ話だという。予想以上のヒットとなり、今度はレストラン事業に乗り出すことに。
全国のシェフにも認定スクールを開いて、タニタ流調理法を伝授。さらには多くの食品メーカーとコラボ商品を開発するなど、食を通した健康産業でも知名度がアップ。イノベーションを起こしながら、売り上げを右肩上がりに伸ばしている。
週1回以上の「健康チェック」が義務化
「健康器具を扱うには、まず社員が健康でなくては」がポリシーのタニタ。6年前から社内健康プロジェクトを行っている。朝はラジオ体操から始まり、社員は活動量計を常に身につけ日々の健康管理を心がける。
バランスボールを椅子代わりにしてデスクワークをする女性社員たちもいて、社員の意識が「健康」に向かって一丸となっているようだ。
各種計測器で血圧や体重などを測る「健康チェック」は、週1回以上が義務。活動量計から会社のサーバーにデータが送られるしくみになっており、「測っている人・いない人」のランキングが実名で社内に貼り出される徹底ぶりだ。
この取り組みで、社員一人あたりの医療費が年間12%も減少。入社4年で20キロ痩せたという伊藤武志さんは、入社当時の写真と比べるとまったくの別人に見えた。
この成果を受け、新事業として「タニタ健康プログラム」を社外にも発信。「はかる」と「食べる」を軸としたプログラムを提供し、新潟県長岡市をはじめ現在100の企業や団体が導入している。
健康企業は「社員の使い捨て」しないイメージ
谷田社長は、高齢化社会において日本が医療費を抑えるモデルになり、「日本全体が元気になる役に立ちたい」という考えを示し、次のように語った。
「皆さんの健康をつくって、その対価で私たちがご飯を食べていける。ロマンがあると思う。いま社内は盛り上がっているし、やりがいのある仕事になっている」
社員の健康を守ることは、生産性向上の面からも理にかなっているし、健康総合企業としてはそれが良いPRにもなる。人間、健康でなければいい仕事はできないし、続けられない。こういう企業は社員を酷使し使い捨てになどしないのではないか、というイメージを自然に与えられた気がした。(ライター:okei)
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