2015年06月21日 13:21 弁護士ドットコム
夜中に30分間だけこっそり家を出る女子高生。気になって尾行してみると、何と白装束に高下駄をはいた姿で神社に入り、「○○(人名)死ねー」と奇声を発しながら、藁人形に釘を打ち込んでいた――。そんな恐怖のエピソードが、ネットの掲示板に書き込まれていた。
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投稿者の女性は、夫の実家で、義理の両親と高校生の妹と同居中。義妹は、頭にろうそくまで立てて、本格的な「丑の刻参り」をしていたそうだ。女性が神社を改めて訪れると、髪の毛が編み込まれた藁人形があったり、プリクラが貼られた藁人形に多数の釘が打ち込まれたりしていた。相手はどうやら、交際を断られた男性のようだという。
投稿者は、警察への相談まで考えているようだ。丑の刻参りで、特定の人物を「死ね」と呪ったり、藁人形に釘を打ち込んだりした場合、法的にはどんな問題になる可能性があるのだろうか。刑事事件にくわしい布施正樹弁護士に聞いた。
「結論から言うと、犯罪が成立することはありません。
ある人が殺意をもって、誰かを『呪う』ために何らかの行為をしたからといって、殺人未遂罪などの犯罪にはあたらないのです」
どのような場合に犯罪になるのか。
「ある人の行為について殺人罪が成立するためには、まず第一に、その行為が客観的に見て『殺人の実行行為』に該当すると言えなければなりません。『殺人の実行行為』とは、『人の死という結果を招く現実的危険性のある行為』という意味です。
例えば、人の頭部めがけて至近距離から拳銃を発射する行為は、人の死という結果を招く現実的危険性のある行為と言えます。これは、『殺人の実行行為』に該当します」
誰かを殺そうと「呪う」行為は、あまり現実的ではないということか。
「ある行為が人の死という結果を招くような、現実的危険性のある行為と言えるかどうかは、一般人の見地に立って判断すべきと考えられています。
世間一般の人は『人を呪うことによって、その相手を殺すことができる』、つまり『人を呪うと、その相手が死ぬ現実的危険性が発生する』とは考えていないでしょう。したがって、人を呪う行為は『殺人の実行行為』に該当しません。
ですから、いくら本人が心の中で『人を呪うことによって、その相手を殺すことができる』と真剣に信じていたとしても、殺人罪が成立する余地はありません」
布施弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
布施 正樹(ふせ・まさき)弁護士
横浜弁護士会所属、同会刑事弁護センター運営委員会委員。刑事弁護・少年事件に特に力を入れて取り組む一方、一般民事事件・家事事件等も手がける。現在、他士業と連携した無料メールマガジン( http://www.mag2.com/m/0001640642.html )を発行中。
事務所URL:http://bengoshi-loj.jimdo.com/