レッドブルリンクで行われているオーストリアGP。昨年はメルセデスAMGはシーズン初めてポールポジションを逃し、ウイリアムズの2台がフロントロウを獲得。波乱のレースとなりました。決勝では、結果的にメルセデスAMGが1-2フィニッシュを飾ったものの、ウイリアムズが本気で“勝ち”を狙いに行っていればどうなっていたか分からない……そんなレースだったのです。さて、今年のオーストリアGPは、どうなるのでしょうか?
結論から言えば、今年のオーストリアGPは、3チームによる首位争いが繰り広げられても、決しておかしくはありません。その根拠は、フリー走行2回目におけるロングランのペースにあります。
このセッション、トップタイムを記録したのはフェラーリのセバスチャン・ベッテルでした。ただこのベッテルは、セッション中にギヤボックスのトラブルが発生したためにマシンを止めざるを得ず、ロングラン走行はできていません。その分、チームメイトのキミ・ライコネンがロングランを行わなければならなかったのですが、ライコネンはロングラン開始前にスーパーソフトタイヤを壊してしまったために、ソフトタイヤでしかロングランを行うことができませんでした。この時のペースは、1分12秒台後半~13秒台前半。デグラデーションはほぼ見られませんでした。スーパーソフトでのロングランが出来なかったのは不安材料ですが、戦闘力は非常に高そうです。
セッション首位が常連のはずのメルセデスAMG勢は、ニコ・ロズベルグが2番手、ルイス・ハミルトンが5番手。ハミルトンは1コーナーやセクター3でコースオフを繰り返したため、スーパーソフトタイヤを履いてのアタックラップを1度も成功させることができず……こちらも少々不安の残る結果となりました。一方のロズベルグは、スーパーソフトでのアタックを成功させるものの、ベッテルには届かず……これまでのような優位性は、少ないのかもしれません。
セッション後半のロングランでは、ハミルトンがスーパーソフト、ロズベルグはソフトタイヤを履いて走行。しかし、両者のペースはほとんど変わらないか、スーパーソフトを履いたハミルトンの方が若干良い程度。フェラーリのライコネンに対しても、優位性はほとんど見られません。つまり、メルセデスAMGとフェラーリは、接戦になりそう……ということが言えそう。ハミルトンもロズベルグも、「フェラーリは速そうだ」と警戒しています。
ちなみに、このメルセデスAMGのロングランペースから判断するに、スーパーソフトタイヤとソフトタイヤのペース差はほとんどないということも言えると思います。デグラデーションも、いずれのタイヤともほとんど見られず、ということは、より長持ちするはずのソフトタイヤをレースで多用するべき……ということになると思います。
ところで、今回はこの2チームに割って入ってきそうなチームがひとつあります。セッション4番手タイムを記録した、ロータスではありません。ロータスは一発こそ速いものの、ロングランではスーパーソフトタイヤを履いたロマン・グロージャンが0.5秒程度、ソフトタイヤを履いたパストール・マルドナドは1.0秒程度、前出の2チームからは遅れています。予選で光るところを見せることはあるかもしれませんが、決勝で上位争いに加わるのは、少々厳しいでしょう。
今回メルセデスAMGとフェラーリを苦しめる可能性がありそうなのは、バルテリ・ボッタスが14番手、フェリペ・マッサが15番手に終わったウイリアムズです。昨年、ここオーストリアで優勝争いを繰り広げたウイリアムズ。どうもこのサーキットとは相性が良いようです。
ボッタスもマッサも、セッションのベストタイムはソフトタイヤを履いて記録したもの。そのため、ふたりとも下位に沈みました。しかし、ロングランのペースは実に優秀で、メルセデスAMGやフェラーリとほぼ互角。特に、マッサがスーパーソフトタイヤを履いて実施した28周のロングランは、前出の2チームよりも優れているくらい。ボッタスとマッサも良い感触を感じているようで、特にボッタスはセッション後のコメントで「予選トップ3を狙う!」と息巻いています。
これらトップ3チームの後に前出のロータスが続き、その後方はフォース・インディア、レッドブル、トロロッソ、そしてザウバーの四つ巴となりそう。ただ、フォース・インディアとトロロッソにはデグラデーションの傾向が若干見えており、決勝では苦戦を強いられることになるかもしれません。また、レッドブルの2台はエンジン交換(5基目投入)によりペナルティが課せられ、グリッド後方からのレースとなるため、こちらも厳しそう。マクラーレン・ホンダはトラブルなどの影響で周回数が少なく、現時点では比較できる要素がないというのが正直なところです。
メルセデスAMG対フェラーリ、そしてウイリアムズが加わり、激しいレースとなりそうな今年のオーストリアGP。しかし、現時点では予選・決勝ともに雨の予報も出ており、それがさらに波乱のレースを演出することになるかもしれません。
(F1速報)