今回のGT500優勝候補のS Road MOLA GT-R。金曜日からピット練習を行うなど余念がないが週末の天候は荒れ模様…… 11月から6月に変わったからとはいえ、実は気温的にはそれほど劇的な変化はないというタイ・ブリーラムサーキット。木曜日のこちらの気温は最高35℃で路面温度は55℃前後だったというので、昨年、そして一昨年までのマレーシア戦とそれほどコンディションは異なってはいないというのが、チーム、タイヤメーカーの見方だ。
さらに今年は路面も荒れておらず、走行が進むとタイヤカスが溢れてダスティになる、ということも昨年ほどはないと予想されている。そうなると、レースでは広いコース幅をいっぱいに使ったオーバーテイクやバトルが多くなる。2年目のタイ戦は、昨年とはまた違った様相を見せそうだ。
ブリヂストンの細谷良弘エンジニアによれば「昨年はウチが勝ちましたけど、タイヤ無交換はタイヤエンジニアにとっては恥ずかしい戦略です。今年はきちんといつものシリーズ戦のようにタイヤを交換して攻める展開になると思います」と週末のタイヤ事情を語った。チームのエンジニアに聞いても「今年は無交換はあり得ない」とのことから、いつもの耐久スプリントのレースでピット作業、ピットタイミングが勝利への大きな鍵になる。
ちなみに、2年目のタイ戦だがGT500では伊沢拓也、平川亮、ヘイキ・コバライネン、オリバー・ターベイが初めて。山本尚貴とコース上を回った伊沢は「コースレイアウト的には難しくないけど、GT300が絡むと面倒になりそうなコーナーが多い」と印象を語れば、平川は「どれくらい走れるか分からないけど、まずは明日、慣れたい。そしてランキングトップを守りたいです」と週末の抱負を述べた。
GT300はコーナリング性能がアップしたGT-R勢に加え、今回から車高が3mm下がったJAFーGT300車両も上位を狙えそうだ。さらにGT300マザーシャシー勢もリストリクター径が約1.3%拡大して戦力アップ。ハイブリッド勢はプリウスのリストリクター径が絞られたものの、CR-Z、BRZは拡大された。それら今回のタイからの参加条件を照らし合わせると、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)で相対的に外れを引いた感のあるGT3勢、正確に言うならこのサーキットと相性のよいGT-R以外のGT3勢は、厳しい戦いを強いられそうだ。
チームのパッケージとしては強力ながら、2戦連続5位と煮え切らないGOODSMILE RACING &TeamUKYOの河野高男エンジニアは「SLSは直線は速いけど、ここは後半のテクニカルな部分がタイムに影響しやすい。コーナリング性能が高いトヨタ86、BRZは今回速いと思う。ウチはなんとか予選で3列目以内に入って、上位について行きたい」と、苦しい展開を予想する。GOODSMILEとしてはチーム力が活かせる荒れた展開、ウェットコンディションなどになれば上位を狙えるかもしれない。現在の最新情報では降水確率は土曜50%、日曜60%でどちらも雷雨の可能性アリ。土日に向けて、不穏な流れが漂っている。
GT300の勢力図、BOPにとっても重要なタイ戦、果たしてどのチーム、車両が速さと強さを見せるのか。