2016年から参戦予定のハースF1チームとともに「カスタマーカー導入案」が再び注目を集めている。前戦カナダGPの週末には、メルセデス、レッドブル、フェラーリ、マクラーレンの首脳陣が会合を持った。マクラーレンのジョナサン・ニールは「次のストラテジーミーティングに向けた下準備だった」と説明したが、ならばウイリアムズとフォース・インディアも会議に参加していなければおかしい。前回のストラテジーミーティングで、この4チームがF1カスタマーカー計画について評価していくという方向が確認されており、カナダGPの会合がカスタマーカー導入に向けた話し合いだったとしても不思議はない。
しかし、カナダで会合に参加していたメルセデスのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス部門)は、オーストリアGPの開催を控えたレッドブルリンクで「ビッグチームがカスタマーカー制度の導入の道を探っている」という噂を否定した。
「なぜなら個人的に、私はカスタマーカー導入に反対の立場だからだ。ハースとフェラーリの関係は非常に複雑で説明するのが難しいが、カスタマーカーとは違うと聞いている。したがって今後もカスタマーカー制度が導入されることはないだろう。もし可能性があるとすれば、グリッドに並ぶマシンの台数が18台未満になるときだ。ただし、それでもカスタマーカーという制度ではなく、ビッグチームが3台目を走らせることになるだろう」
2014年のオーストリアGPには22台がグリッドに並んでいたが、昨年限りでケータハムが消滅し、今年は20台。次に撤退の危機に瀕しているのは、昨年ケータハムと争っていたマノー・マルシャである。彼らが財政的に厳しいことは今シーズン唯一2014年型のパワーユニットを使用していることからもわかる。マノー・マルシャはカナダGPに新しいパワーユニットを投入したが、それも昨年型のものだった。
「いまさら隠し立てしてもしょうがない。我々が使用しているパワーユニットは昨年型だ。フェラーリやザウバーが使っているものとは違う」とマノー・マルシャの社長であるグレーム・ロードンは明言する。しかし、噂されているホンダのパワーユニットへスイッチする可能性について尋ねると「ノーコメント」と口をつぐんだ。2016年にハースがF1に参戦すればフェラーリ陣営が3チームに増える。さらに、かねてよりホンダ側が「もしマクラーレン以外からパワーユニット供給の要求があれば前向きに考える」というスタンスを崩していないことも噂の背景となっている。
また、マクラーレンはマクラーレン・テクノロジーを通して、マノー・マルシャと技術提携を結んでいた時代がある。つまりフェラーリとハースの関係のように、カスタマーカーとは違う方法でマノー・マルシャとパートナーになる可能性もあり、そうなった場合パワーユニットは当然ホンダが使用されることになるだろう。
この時期から、2016年の新車開発に向けた作業が本格的に始まる。オーストリアGPでは目前の勝負だけでなく、翌年に向けた戦いもヒートアップしている。
(尾張正博)