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[Alexandros]は“ロックスター”を復権させる そのカリスマ的魅力を読み解く

2015年06月19日 16:21  リアルサウンド

リアルサウンド

[Alexandros]

 一目見た時点で「格好いい!」と胸を射抜かれる。理屈とかセンスとかじゃなく、ただただ目の前の人を夢中にさせてしまう。ロックバンドにとって大事なのは、結局のところ、そういうものだったりする。


 言葉でその要素を語るのは、とてもむずかしい。でも一度でも見たらピンとくる。ギタリストが楽器を振りかざして「ガン!」と最初のリフを鳴らしたとき、ボーカリストが真っ直ぐ前を見据えて最初の声を放ったとき。その瞬間にすべての確信が訪れる。鳥肌が立つような、ゾクゾクする感覚に包まれる。ワケがわからないまま「わー!」とか「ぬおー!」とか叫んだりとかする。


 たとえば、一枚の写真だって、そのきっかけになる。やっぱり上手く言葉にするのはとてもむずかしいけれど、ロックバンドの本質的な格好よさは、やっぱり写真からも如実に伝わる。単にイケメンとか美男子とかルックスがいいとかそういうことじゃなくて、その姿には10代の「憧れ」を引き受ける度量の大きさが示される。多くのフォトグラファーがその意気を切り取って写真にする。だから、格好いいロックバンドの写真は壁に貼りたくなる。たとえば銀杏BOYZの峯田和伸が思春期を過ごしていた山形の実家の部屋は、やはり彼が憧れていたロックスターの写真がたくさん飾られていたりする。


 さて。ここで書こうとしてるのは、[Alexandros]のこと。6月17日にニューアルバム『ALXD』がリリースされたばかりの彼らは、今、そういう類のロックスターになりつつある。かねてから「世界一になる」という目標を掲げ、初めて出会った時から大物の風格を漂わせていた4人だが、いよいよ、それが本物のものになりつつある。


 理由は二つ。簡単に言ってしまうと、実力とカリスマ性だ。


 [Alexandros]は、すでにロックシーンにおいては確固たる支持を集めているバンドだ。 [Champagne]名義での4枚のアルバムで評価を積み重ねてきている。数々のフェスのメインステージにも立ち、昨年3月には武道館公演もソールドアウトさせた。今年5月にはVIVA LA ROCKで2万人を前に堂々とフェスのヘッドライナーをつとめている。オアシスを筆頭にUKロックをルーツにしながら、その翻案とは全く異なる独自の興奮を発明したそのスタイルは、世界中を見回してもなかなか見当たらないもの。忙しなく駆り立てるリズム、4人が一体になったようなアンサンブル、そして芯の強いメロディと切れ味鋭い歌声は、バンドとしての圧倒的な身体能力の高さを感じさせるもの。まずは間違いのない実力がその人気の理由となったわけである。


 そしてもう一つは、バンドとして「絵になる」彼らの存在が、独特の色気を帯びつつあるということ。これは先に書いたように、ボーカル川上洋平を筆頭に「憧れを引き受ける度量」のようなものが、その人となりからにじみ出るようになってきたということだろう。


 女性誌やファッション誌で彼らのことを見る機会が増えてきたのも、タイアップに積極的に起用されるようになっているのも、そのことと関係あるはず。ロックファンだけでなく、ファッション方面からもファンを増やしている。4月からスタートしたドラマ「She」で全編にわたって[Alexandros]の音楽が起用されたり、「ワタリドリ」が映画「明烏」の主題歌となったりと、感情を駆り立てる彼らの楽曲がクリエイターから求められることも多くなってきている。


 こうして、2015年に入って、彼らの存在はいよいよ大きなものになってきている。昨年11月には海外進出を見据えてユニバーサルミュージックとのグローバル契約を締結したことを発表し、今年3月にリリースされたシングル『ワタリドリ/Dracula La』は過去最大のセールスを記録。アルバムの発売日に行われたフリーライブは熱狂を巻き起こし、14本の夏フェスにも出演。12月には初の幕張メッセ公演も決まっている。「JAPAN NIGHT」ロンドン公演にも出演、海外進出の足がかりも増えてきている。


こうやって本格的なブレイクを果たしていくタイミングで、スケールの大きなアンセムソング「ワタリドリ」や強烈な疾走感に満ちた「Famous Day」など勝負曲が次々と生まれているのもバンドの勢いを証明していると言えるだろう。


[Alexandros]というバンドは今、見ているだけでワクワクするようなサクセスストーリーの最中にある。ちゃんとそのことには理由があるのだ。(文=柴那典)