あなたの身の回りに、30代、40代になっても家族と同居して、結婚もせずにのんびり生きている知り合いはいないだろうか? 僕の周囲には、ここ10年のうちにそういう人が増えてきたような気がする。
ひとり暮らしもせず、両親と同居を続ける独身者のことを、中央大学文学部の山田昌弘教授は「パラサイト・シングル」と名づけた。6月18日(木)放送の「白熱ライブ ビビット」(TBS系)は「4人に1人が結婚したくない パラサイト・シングルの現状」と銘打って、実家暮らしの独身事情について取り上げていた。(文:松本ミゾレ)
45歳男性。身の回りの世話は「親がやってくれる」
総務省の調査によると、20歳から44歳の「パラサイト・シングル」は1985年には21%だったのが、2012年には33.5%に増えている。5人に1人から、3人に1人になったということだ。
また日本生命が「将来、結婚したいと思いますか?」と5000人以上の独身男女にアンケートを行ったところ、「結婚したくない」が15.1%を占めた。「あまり結婚したくない」の9.0%を加えると、24.0%の回答者が、結婚したくないと考えていることになり、回答者の4人に1人にあたる数値だ。
一番多かった理由は「1人でいるのが好き」というもの。まあ、本当にひとりが好きならひとり暮らししろよ、と思わないこともないけど、現代ではそれもなかなか面倒だよね。
番組では70代の両親と同居する、45歳の会社員男性のパラサイト・シングル生活について取材を行っていた。この男性、家事などの身の回りの世話を両親にやってもらい、気ままに働きつつ、趣味に時間とお金を投じ、休日は旅行やライブに出かけるという。
自宅には月に7万円の生活費を入れていると話す。35歳くらいまでは、親から「(結婚は)どうするの?」と聞かれていたが、今は何も言われなくなった。
もうあんな好景気なんか来ないし
取材班が結婚願望について質問すると「ない」と即答する男性。いまひとり暮らしをすれば「両親が逆に寂しがるのではないか」とも。自堕落といえばそれまでの話なんだけど、これも時代の流れなのかもしれない。
というのも、この男性の両親世代といえば、おそらく高度経済成長期に働いていたことになると思う。日本中が盛況で給料も今と比較するのがむなしくなるほどの額だった。男性は庭付きの立派な自宅に住んでいるが、それも両親が若い頃にバリバリ頑張って手に入れたマイホームなのだろう。
「この恵まれた環境を、無理して脱却しなくてもいいのでは?」
男性はそう考えているわけだ。まして現在、景気は男性の両親が現役だった時代とは全く異なる状況だし、当時のモーレツ社員たちが今の社会で頑張ったところで、昔のような報酬は期待できないはずだ。
家を出てひとり暮らしをしようにも、家賃が高けりゃ電気代も値上げする一方。勤務先と実家が近いなら、そもそもひとりで暮らす理由もない。
両親に介護が必要になると「関係逆転」に
少子高齢化も加速する現在では、社会全体が緩やかな衰退期に移行しているといえるのだから、パラサイト・シングルという生き方も、無駄な出費をしないための一つの手段と考えることもできる。
ただし、特集の最後にはこんな話題に触れている。学習院大学の鈴木亘教授の言葉によると、パラサイト・シングルが両親に依存する関係は、両親に介護が必要となった場合、逆転することになるというのだ。
当たり前のことだけど、こうなったらもう家族に甘えてはいられない。経済的に困窮することのないように、今までの恩返しをするのがせめてもの務めだ。両親だっていつまでも元気で養ってくれるわけでもない。いずれは天国に旅立つし、そうなれば年金にも頼れなくなる。
パラサイト・シングルというライフスタイルは否定しないし、むしろ僕は「アリ」だと思う。スタジオでも「働いて税金納めているんだから問題ない」と擁護する声があったが、貯金だけはしておくに越したことはないだろう。
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