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CAPSULE 14年の歴史を横断 初ワンマン・ツアーで中田ヤスタカが見せた“ピュアな一面”とは

2015年06月18日 00:21  リアルサウンド

リアルサウンド

CAPSULE

 Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースはもちろん、名実ともに日本を代表する音楽家としてシーンに君臨する中田ヤスタカとこしじまとしこによる2人組ユニットCAPSULE。2001年にメジャーデビューしたCAPSULEが、今年デビュー14年目にして初のワンマン・ツアー『CAPSULE -"WAVE RUNNER" RELEASE LIVE-』をおこなった。ソールドアウトした最終公演が2015年6月5日に東京・赤坂BLITZにて開催されたので、その模様をレポートしたい。


 CAPSULEは、これまでライブをまったくやってこなかったワケではない。アルバム作品のリリース・パーティーを含め、クラブイベントや、ロックフェスではライブをおこなっていた。だが、完全なるワンマン・ツアーははじめてであることに注目したい。


 バンドマンであればアルバム作品をもとに、ライブツアーによって表現を完結させるストーリーがあるが、中田ヤスタカはバンドマン志向は皆無だった。アルバム作品を最終目標に掲げていた根っからのクリエイターなのだ。


 かつて、13枚目のアルバム『STEREO WORXXX』のリリースの際、「僕らの作品のヴォーカリストはリスナーが使っているスピーカー」と発言をしていたことに着目したい。作品主義であることへのこだわり、アルバム作品ですべて完結しているのがCAPSULEの世界観だ。そんなこともあり、今回のツアーでも生バンドでの楽器演奏ではなく、ヴォーカリストこしじまとしこが生で歌唱してはいるが、生演奏にこだわることなく中田ヤスタカのDJプレイに主軸が置かれていた。


 Perfumeのブレイク前夜、まだcapsuleが小文字時代だった頃に中田ヤスタカが、六本木ヒルズの高層階でDJした際、彼のDJプレイは「自分の曲ばかりかけている!」とネット上で揶揄されたことがあった。しかし、21世紀のクラブカルチャーの主流であるEDMムーヴメント以降、フェス的なDJは自らクリエイトした作品をDJ感覚でライブ的にプレイするエンタテインメント表現が主流となっている。中田ヤスタカの考え方は図らずも世界の潮流とシンクロしていたのだ。


 そんなCAPSULEの『“WAVE RUNNER” RELEASE LIVE- 追加公演』会場で開演前に流れていたSE(音楽)は、特撮テレビ番組「サンダーバード」のテーマだった。中田ヤスタカはCAPSULEの過去作において「ポータブル空港」、「宇宙エレベーター」、「space station No.9」などSFライクなナンバーを生み出しており、SF三部作として、スタジオジブリとともにSFアニメなミュージックビデオを制作していたことがある。そんなことを鑑みると、今回のライブの裏コンセプトは、中田ヤスタカによるDJブースを操縦席として、添乗員こしじまとしことともに宇宙船に乗って旅する様を描かれていたのかもしれない。


 定刻を過ぎた19時15分。場内は暗転し、最新アルバム『WAVE RUNNER』のイントロチューン「Wave Runner」が鳴り響き、続いてリード曲「Another World」へと流れていく。中田ヤスタカがオーディエンスを煽り、スモークが焚かれ、こしじまとしこが登場してフロアの熱気は早くも最高潮に。人気曲「more more more」では、「CAPSULE『WAVE RUNNER』リリースツアーへようこそ。今日はいっしょに楽しもうね!」とオーディエンスへ笑顔で呼びかけた。


 様々な時代からピックアップされる「WORLD OF FANTASY」、「Dreamin' Boy」、「JUMPER」など選りすぐりの選曲が楽しい。さらに、完全にサウンドとシンクロするエッジーでスキルフルな照明やレーザーが感情をアップリフトしてくれる。そして音の素晴らしさに耳を奪われたのだ。低音が身体に響き、歌声がはっきり聴こえてくる。サウンドへのこだわりが感じられるステージワークだ。


 途中、二人がステージから去り、LEDモニターにはインターミッションとして惑星の映像が映し出された。赤坂BLITZの地球上での座標軸“E13973 N3567”が表示され、ここで、プログレッシヴにミニマルな作風が印象的だった前作アルバム『CAPS LOCK』より「SPACE」がBGM的に流れる。中田ヤスタカは「『CAPS LOCK』は文化部というイメージなのでライブではやらない」と語っていたが、まさかの絶妙なる楽曲の使い方にテンションがあがった。


 再び、ステージに二人があらわれアルバム『PLAYER』よりキュートな歌ものチューン「Stay With You」。そして、新作より、ヘヴィなイントロから一変してメロウになる変幻自在な「White As Snow」、王道感あふれるビートがたまらない「Hero」へ。こしじまとしこがオーディエンスへ向けてCO2を発射することでさらなる盛り上がりをみせていく。


 新作に収録されたインスト・ナンバー「Dancing Planet」では、サプライズなスペシャル・ゲストとしてVERBALが登場。この日のためにリアレンジされたナンバーとして攻撃的なラップでオーディエンスを扇情しまくり、ステージを去っていった。続くは、ドラマティックにスケールの大きな「Eternity」、「In The Rain」によって、CAPSULEのセンチメンタルな魅力が解き放たれていく。


 ここで、再びインターミッションとしてCAPSULEの二人のプロフィール、そして歴代のアルバム・アーカイヴが「Beyond The Sky」に乗せてLEDモニターに順に表示されていく。最新作『WAVE RUNNER』が表示された後は、カウントダウンがはじまりライブは終盤に突入。最新作『WAVE RUNNER』収録ナンバーを聴いていると、フロアにおいて快楽ポイントの高さが映える楽曲が多いと感じた。ダンスミュージックとしての機能性とメロディアスな作品性の優れたバランスがCAPSULEのオリジナリティを生み出しているのだと確信した。


 ラストスパートは、まず中田ヤスタカのみがステージにあがり「FLASH BACK」。その後、こしじまとしこがあらわれ「まだまだいくよ!」とテンションを上げまくり「LIAR GAME」とマッシュアップした「Love or Lies」へ。さらにCAPSULEアンセムと言っても過言ではない「Starry Sky」が投入され、オーディエンス大熱狂な「Prime Time」、新作における最強ポップナンバー「Feel Again」へと大団円を迎えていく。


 アンコールでは、LEDモニターにて新作アルバム『WAVE RUNNER』のデラックス・エディションが9月2日にリリースされることを発表。当日お披露目した「Dancing Planet feat. VERBAL(仮)」やリミックスをCDに、ライブ映像をDVDで追加収録するという。


 そして、ツアーグッズのTシャツに着替えて登場した二人。こしじまとしこが「今日は本当にありがとうございます! 皆さんのおかげで14年も続けてこれました。こんな素敵な場所を与えていただき感謝しています!」と感謝の言葉を。さらに、こしじまに煽られ、話す予定ではなかった中田ヤスタカは、照れ隠しに声にエフェクトをかけて喋りだした。「初めは遊びのつもりだったんですけど、だんだんやる気が出て14年たちました(※ここでエフェクト外す)。今までこんなツアーをやったことはなかったんですけど、ようやく僕はミュージシャンになれた気がします。これからもCAPSULEをよろしくお願いします!!!」。今もなおフレッシュであり続けるCAPSULEの二人。もしかしたら、中田ヤスタカは今回の全国ツアーでライブならではの魅力に目覚めたのだろうか? そんなピュアな一面を垣間みれた瞬間だった。


 アンコールでは、懐かしのポップチューン「Sugarless GiRL」と、知る人ぞ知る大名曲「グライダー」を奏でることでオーディエンスへの感謝を表現。やはりCAPSULEは良い曲が多いなと感動。中田ヤスタカ曰く「オファーされなくとも自分がやりたいことをやるのがCAPSULE」というフレーズは名言だ。新旧楽曲を交えながらも、違和感無く盛り上がりまくった全21曲の音楽旅行。そんな宇宙船CAPSULE号の歴史を横断した、時空を超えていくBEST的な内容に大満足な一夜だった。


(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ))