「子どもをエリートに育てたい!」―そう熱望している親は思わず書店に駆け出してしまうかもしれない。5月19日に行われた教育再生実行会議で提出された資料に「『蔵書が多い』家庭で育った人ほど、賃金が高くなる」と記述されていたからだ。
この根拠となっているのは、2014年にリクルートワークス研究所の戸田淳仁氏らが発表した「幼少期の家庭環境、非認知能力が学歴、雇用形態、賃金に与える影響」という論文だ。
蔵書が「知的好奇心」が芽生えるきっかけに
全国の20 歳から69 歳の男女6128 人のデータをまとめたもので、それによると、幼少期の家庭環境は学歴に対して有意な影響を与えるものの、多くは就業後その影響が弱まる。しかしながら、「蔵書の多い」家庭で育った人は就業後にも「賃金が高くなる」といった形で影響が見られるという。研究では、「好奇心などの開放性をはぐくむような知的環境が賃金と関係していると解釈できるかもしれない」としている。
「週刊新潮」2015年6月11日号でもこの研究結果を取り上げている。読書家で知られる評論家の渡部昇一氏は、記事中で多くの蔵書があるのは親が教養人であるからだと指摘。そうした親は、子どもにもそうなって欲しいと願い、その期待に応えようとした子どもが優秀な大学を出れば賃金も高くなるとする。「高い賃金を得るのは当然だと思います」と話す。
他の著名人からも家に蔵書があったことによって「(娘が)知的好奇心や探究心のようなものが芽生えたことは間違いないようだ」(成毛眞氏)といった声が出ていた。高収入の人ほど読書をする習慣がある、というのはよく聞く話ではあるが、蔵書のある環境で育つことがプラスになる可能性はあるようだ。
運動部と生徒会でリーダーシップが養われる
注目が集まったのは「蔵書の多さ」であったが、この研究ではもう一点、「賃金が高まる」要因をあげている。それは、中学時代に運動系クラブ、生徒会に所属することだ。
アメリカの研究ではすでに、
「運動系クラブや学術系クラブへの参加は、教育獲得や賃金に有意に正の影響をもつ」
「部活動を熱心に行っていた人は、監督者の地位に付く確率が有意に高かった」
ということが明らかになっているという。
日本国内でも同様の調査を前述の対象で行ったところ、「中学時代に運動系クラブ、生徒会に所属したことのある人の賃金が高まる効果がみられた」とのことだ。
研究では就業以降の人生では特に外向性が重要だと指摘している。運動部や生徒会活動で外向性などとともに、協調性、リーダーシップが養われることが、「将来の労働市場での成功に関係しているとみられる」という。
教育再生会議でもこの点に触れ、「運動系クラブ・生徒会活動を通じ、外向性・協調性・リーダーシップを高める取組が必要」と提言している。将来の子どもの年収をアップさせるためには、家に大量の蔵書を置くとともに、生徒会に立候補させて運動部にも入らせる、といったところだろうか。
あわせてよみたい:「子どもにとって最悪な親とは」米医師の寄稿が話題に