13日~14日に開催された第83回ル・マン24時間耐久レース。昨年、レースの半分以上をリードしつつも、クラッシュやマシントラブルで悲願の総合優勝を逃したトヨタにとっては、雪辱を期して臨んだル・マンとなったが、最終的なリザルトは2号車が6位、そして1号車が8位となった。
昨年のWEC世界耐久選手権でダブルタイトルを獲得したトヨタTS040ハイブリッドを更に熟成させ、今シーズンのWEC/ル・マンに臨んだトヨタ。WECの開幕2戦では、1発の速さ、レースペースともにポルシェやアウディに対して後れを取るような形となっていたが、ル・マンで巻き返すべく開発を進めていた。そして迎えたル・マンでも、予選セッションから決勝に向けたプログラムを展開。予選は2号車が7番手、1号車が8番手に並んだ。
決勝レースでは、開始から5時間というところで、アンソニー・デイビッドソン駆る1号車がLM-GTE車両と接触。フロントカウルを破損するとともにハンドリングにも問題を抱えることに。この影響でガードレールにも接触し、左リヤのサスペンションにもダメージを負ってしまう。ピットへ向かい修復を受けるも13分をロスし、1号車は5周の遅れを喫してコースへと復帰した。
これ以外では大きなトラブルやアクシデントは発生しなかったトヨタ。最後まで諦めない姿勢で走行を続けるが、トップ争いには加わることはできず、淡々と走行を重ねる展開に。最後は2号車が首位から6ラップダウンの6位、1号車は9ラップダウンの8位となった。
「僕たちがレース中にピットへ入ったのは燃料補給とタイヤ交換だけで、他にはまったく問題はなかった」と今年のレース展開を振り返るのは2号車をドライブするアレックス・ブルツ。「ただ、優勝車から6周も遅れているのだから、性能は明らかに劣っていたということだ」と、ベテランらしく冷静に戦力を分析した。
1号車のセバスチャン・ブエミも「レース全体の内容と結果には本当に失望している」と今回の結果にはまったく納得していない様子だ。
「僕たちには高い信頼性があり、技術的な問題は起こらなかった。ピットクルーも、アクシデントの後に迅速にコースに戻してくれるなど、素晴らしい仕事をしてくれた。最終的に、僕たちの結果はペースに値するものだったと思うよ」と、全力を尽くしながらも優勝争いに絡むことができなかったフラストレーションもにじませる。
また、WEC第2戦でのクラッシュで脊椎を損傷するも、ル・マンに照準を合わせて手術とリハビリを行い、見事ル・マン参戦を果たした中嶋一貴も「僕たちの1号車はセットアップが決まっており、自分たちなりに満足のいくレースができたと思います。ただ、スピードは足りませんでした」と率直なコメントを残す。
「ただ、チームの結束力とやる気は非常に強く、レース終了までまったく手を抜くことなく戦いました。この気持ちは重要です。厳しかった今年のル・マンですが、来年に向けての再出発のスタート地点です。もう、やるしかありません」と、その目はすでに2016年のル・マンを見据えている。
もちろんそれは一貴だけでなくチームも同様だ。佐藤俊男チーム代表も「結局、我々のTS040ハイブリッドは、今年のル・マンで表彰台を勝ち取るだけの十分な速さを示せませんでした。懸命に予選でのライバルとのギャップを埋めて来ましたが、まだ互角に戦うまでに至らなかったのが残念です」と、今回の結果を真正面から受け止める。その上で、「さらに強くなったトヨタとして2016年のル・マンに戻ってこられるよう、これから準備を始めます」とも宣言。WECの今季後半戦、そして来年のル・マン24時間に向けての巻き返しに向けて、意気込みを見せている。