2015年06月15日 11:41 弁護士ドットコム
「9年ほどお付き合いしていた女性と別れたいのですが、なかなか話が進展しなくて困っています」。こんな悩みが弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。何度も別れ話をしているが、彼女から「訴えて慰謝料を請求する」と言われ、別れることができないのだという。
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男性は「価値観の違い」から、恋愛関係を解消したいと考えているが、「別れるなら慰謝料を払え。拒否するなら弁護士を雇う」などと言われ、話が進展しないまま関係が続いてしまった。しかし、度重なる言い争いに疲れたことや、彼女の生活費の負担感から、今度こそはきちんと別れるつもりだ。
交際期間は9年と長いが、同棲も婚約もしておらず、互いの両親に会ったこともないという。そんな状態でも、別れる際に彼女から慰謝料を請求されたら、支払わなければならないのだろうか。男女間の法律問題にくわしい渡邊幹仁弁護士に聞いた。
「結婚していない男女の関係については、それぞれが合意していれば、どのような交際をして、どのような関係を築くのかは、原則として、当事者の自由です。裏返せば、交際を終わらせるのも自由ということになります」
渡邊弁護士はそう指摘する。結婚していない2人の「別れ」の場合、法的なルールは何も定められていないのだろうか。
「婚姻届を出して結婚すれば、それに見合う法的効果が得られます。相応の理由がなければ、一方的に別れることはできませんし、非がある場合は、慰謝料を支払う義務も生じます。
逆に言えば、結婚をしていない以上、法的な保護は与えられないというのが原則です。したがって、単に交際していただけの彼女と一方的に別れたとしても、その場合には慰謝料を支払う義務は生じない、ということになります」
今回の場合、「9年間」という交際期間の長さは、考慮されないのだろうか。
「交際といっても、婚約や内縁関係が成立している場合は別です。相談者のケースでは、婚約はしていないと言っています。しかし、婚約が成立するためには、『将来結婚する』という『合意』があればよく、必ずしも婚約指輪の交換や結納をしている必要はありません。
相談者のように、単に交際期間が長いというだけでは、婚約は成立しません。ただ、結婚を前提とした言動があった場合は、婚約が成立しているとみられる可能性があります。たとえば『将来は専業主婦として自分を支えてもらいたい』と言って、彼女にそれまで勤めていた仕事を辞めてもらい、その代わりに生活費を支払っていた、などのケースです。
その場合には、交際を終わらせるにあたり、婚約を一方的に破棄したとされ、慰謝料を支払う義務が生じる場合もあります」
渡邊弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
新潟県弁護士会所属
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/index.html