トップへ

「私の作品を自由に使って!」著作権放棄の意思を示すためのツール「CC0」とは?

2015年06月15日 11:11  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

映像や音楽、マンガなどのクリエイターが、自分の作品に関する著作権を放棄して、「自由に使ってかまわない」という意思を示すための新しいツールが注目を集めている。「CC0(シーシーゼロ)」と呼ばれるもので、日本語版が5月上旬、インターネットで公開された。


【関連記事:密着キス、下着丸見え――白昼の公園でエスカレートするカップルのイチャつきは違法?】



ネット時代の新しい著作権ルールを提唱する国際組織「クリエイティブ・コモンズ」が、このCC0を提供している。クリエイターは、CC0を使うことで、自分の作品をいわゆる「パブリックドメイン」で提供することを示すことができる。



これまでもクリエイティブ・コモンズは、クリエイターが「この条件を守れば、自分の作品を自由に使ってかまわない」という意思を示す「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC ライセンス)」の提供をおこなってきた。



今回公開された「CC0」は、どういう背景でつくられたのだろうか。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事をつとめる水野祐弁護士に聞いた。



●「クリエイターが著作権を放棄したくても、それが難しい法制度上の課題があった」


――今回公開されたCC0は、どんなときに利用するのか?



「CC0は、クリエイターなどの権利者が、自分の作品やデータベースなど(以下、合わせて『作品等』)を、誰でも自由に利用できる『パブリックドメイン』の状態で提供したいときに利用できます。



ほかの人は、その作品等を著作権法上の制約などを一切受けない状態で、自由に利用できます」



――どうして開発したのか?



「これまで、著作権の保護期間が終了していない作品等を『パブリックドメイン』の状態にすることは非常に困難でした。国や地域によっては、クリエイターなどの権利者が著作権を放棄したくても、できない状況でした。



この問題を解決するために、すべての著作権とそれに隣接または関連する権利を、簡便かつ徹底的に『放棄』できる汎用性を持ったツールとして、CC0を開発・提供することにしたのです。



クリエイティブ・コモンズがこれまで提供してきたCCライセンスと同様に、インターネット時代における作品等のスムーズな共有と、創造性豊かな環境、オープンなカルチャーを実現する目的があります」



――具体的にどうやって使うのか?



「インターネット上で、CC0を使いたいクリエイターなどの権利者は、CC0適用ツールを使います(http://creativecommons.org/choose/zero/)。



必要事項を選択し、完了すると、HTMLコードが表示されますので、それをコピーして、自分のウェブページのソースに貼り付けます。このコードによって、CC0のマークが表示されます。



このマークがあることで、作品を見た人たちは、その作品がCC0であることがわかります。



これまでのCCライセンスでは、一番制約の少ない『表示(BY)』のライセンスであっても、作者名や作品名などを表示するという条件があります。しかし、クリエイターなどの権利者には、この『表示』の条件も外したいというニーズがあります。そのような『表示』を求めない権利者は、CC0を活用していただけると思います。



また、CC0が付いた作品を使いたい人は、ほかのパブリックドメインの作品と同じように、作者名や作品名などを表示しなくても、自由に利用することができます。



なお、CCライセンスと同様に、CC0も、インターネット以外でも利用することができます」



●「取り消すことができないので、十分な検討が必要」


――どの国でも利用できる?



「CC0は、世界共通の文面を使用しており、各国語に翻訳されています。それぞれの翻訳が正式版として効力を持つ『世界標準』のツールです。



法律にくわしくなくても、利用条件を一見しただけで、はっきり理解できるものになっています。世界中の人に、同じ条件で、簡便に使ってもらえるのが、CC0の大きなメリットの一つです」



――具体的には、どんな使用例があるのか?



「たとえば、米ハーバード大学や英科学誌『Nature』による、出版物のメタデータ(書誌データ)をオープンデータ化するなどの取り組みがあります。ほかにも、『Safecast(セーフキャスト)』の放射線量データなどがあります。



また、EUの文化資源アーカイブとして知られる電子図書館『Europeana(ユーロピアナ)』や、世界最大の写真共有サービス『Flickr(フリッカー)』でも採用されています。



最近では、日本のハードウェア・スタートアップ『exiii(イクシー)』が、筋電義手『HACKberry』(http://exiii-hackberry.com/)のソフトウェアやデザインデータをオープンソースにして、公開しました。私もサポートさせていただいた事例ですが、このプロジェクトでもCC0が活用されています」



――利用する際に注意すべき点はあるのか?



「主な注意点としては、自らがすべての権利を有している作品等にしか、適用できないことがあります。



また、CC0を使うと、その作品等について、著作権および関連する権利の一切を永続的に放棄してしまうことになります。したがって、取り消すことができなくなるので、十分に検討したうえで利用する必要があります」



CC0の詳細は、クリエイティブ・コモンズのウェブページ(http://creativecommons.org/choose/zero/)で確認できる。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
水野 祐(みずの・たすく)弁護士
シティライツ法律事務所代表。Creative Commons Japan理事。Arts and Law代表理事。そのほか、FabLab Japan Networkなどにも所属。著作に『クリエイターのための渡世術』(ワークスコーポレーション)(共著)、『オープンデザイン 参加と共創からはじまるつくりかたの未来』(オライリー・ジャパン)(共同翻訳・執筆)、連載に『法のデザイン インターネット社会における契約、アーキテクチャの設計と協働』(Business Law Journal)などがある。Twitter:@taaaaaaaaaask
事務所名:シティライツ法律事務所
事務所URL:http://citylights-lawoffice.tumblr.com/