第83回ル・マン24時間耐久レースは14日、現地時間15時に長い戦いにチェッカーフラッグが振られた。ポルシェ919ハイブリッドとアウディR18 e-トロン・クワトロのドイツ勢による骨肉の争いは、最終的にほとんど大きなトラブルに見舞われなかったニコ・ヒュルケンベルグ/アール・バンバー/ニック・タンディ組19号車ポルシェが制し、優勝を飾った。
今季のWEC世界耐久選手権は、2年目の参戦でハイブリッドユニットのエネルギー放出量を8MJにアップデートしたポルシェが予選スピードに優り、4MJにアップデートしたアウディ勢が続く構図が展開されていたが、2015年のル・マン24時間も、予選からポルシェの素晴らしい速さが際立つ展開となっていた。
ただポルシェには決勝でのペースと信頼性に一抹の不安があり、総合力に優れるアウディと、安定したペースを誇るトヨタTS040ハイブリッド勢がポルシェに対してどんな戦いを挑むのかが注目どころと言えた。13日15時にスタートした決勝レースでは、序盤からハイペースで3台のポルシェ919ハイブリッドと、3台のアウディR18 e-トロン・クワトロ勢が激しいポジション争いを展開していった。
■ドイツ2強によるハイスピードな優勝争い
スタートから2時間51分というところでは、8号車アウディがインディアナポリスに設定されたスローゾーンで前走車を避けきれずクラッシュ、また7時間過ぎには、18号車ポルシェがミュルサンヌでクラッシュするなど、両陣営ともクラッシュ車両が出たが、どちらも驚異的な作業スピードでマシンを修復。ドイツ勢の総合力の高さが感じられた。
そんな両陣営だが、細かなトラブルが少しずつ順位を分け始める。唯一セーフティカー中にカウルを一度開けた程度の19号車ポルシェ919ハイブリッドがジワジワと後続との差をつけはじめる。一方のアウディ勢は9号車が3番手につけていたものの、残り3時間というところでイレギュラーのピットイン。直前にシケインで直進するなどトラブルの兆候が見られていたが、長い修復時間がかかり一気に7番手までポジションを落としてしまった。
代わって昨年の優勝トリオである7号車アウディが3番手に浮上するものの、アウディ勢は例年見られたような盤石ぶりが見られず、ガレージに入れ細かな作業を行うシーンが目立つ。終盤には首位の19号車ポルシェと2番手17号車ポルシェ、3番手の7号車アウディとは1周ずつのギャップがついていた。
アンカーを現役F1ドライバーであるヒュルケンベルグに託した19号車は、最後までトラブルフリーで走り見事優勝! ポルシェはトップカテゴリー復帰2年目で1998年のポルシェ911 GT1以来の優勝を勝ちとった。なお、アウディが優勝を逃したのは2009年以来となった。2位は17号車ポルシェで、見事ワン・ツーで復帰勝利を飾った。3位は7号車アウディで、5位までをポルシェ、アウディが占めている。
■日本勢は苦しいレース展開に
昨年は勝利に手が届きかけたトヨタTS040ハイブリッドだが、今季は1周あたり3秒程度のレースペースの開きがあり、開始7時間ほどで1号車がクラッシュしマシンを破損したほかは1号車、2号車ともトラブルもなく非常に安定したペースを刻んでいたが、最後までドイツ勢の戦いに絡むことはできず。2号車が6位、中嶋一貴が乗り込んだ1号車が8位でレースを終えた。
今季復帰を果たしたニッサンGT-R LMニスモ勢は、開発の遅れも響き非常に苦しい戦いを強いられた。熟成もままならずLMP2クラスのマシンをかき分けるレースとなったが、途中マシン各所にトラブルが発生。松田次生が乗り込んだ21号車はホイールナットが外れコース上にストップしてしまいリタイア。長いピット作業を繰り返しながら完走を目指していた23号車も、残り1時間強というところでストップしギヤボックストラブルでリタイアに。22号車が最後まで走りきったが、完走扱いにならなかった。
■各クラスとも優勝争いは接近戦に
LMP2クラスは、スタートから終始レースをリードしたKCMGのマシュー・ホーソン/リチャード・ブラッドレー/ニコラス・ラピエール組47号車オレカ05・ニッサンが優勝。終盤ラピエールのドライブ中にコースアウトを喫したが、なんとか2番手を譲らず復帰。香港チームとして初のクラスVを飾った。2位はJOTAスポーツの38号車ギブソン015S・ニッサンが、3位にはGドライブ・レーシングの26号車リジェJS P2・ニッサンが入り、ニッサンエンジン搭載車が表彰台を占めた。
フェラーリ、ポルシェ、アストンマーチン、シボレーという4ワークスの争いとなったLM-GTEプロクラスは、スタートからLMP1同様の僅差のバトルが展開されることに。終盤は64号車シボレー・コルベットC7RとAFコルセの51号車フェラーリ458との戦いとなっていたが、51号車はマシントラブルに見舞われ脱落。オリバー・ギャビン/トミー・ミルナー/ジョルダン・テイラー組64号車がル・マンを制した。コルベットがル・マンを制するのは2011年のC6.R以来となる。2位はAFコルセの71号車フェラーリ、3位は51号車となった。
LM-GTEアマクラスは、97号車アストンマーチン・バンテージが終盤までトップを守っていたものの、残り47分というところでポール・ダラ-ラナがドライブ中に最終コーナーでクラッシュ。レースを終えてしまうことに。これでSMPレーシングのビクトル・シャイタル/アンドレア・ベルトリーニ/アレクセイ・バソフ組72号車フェラーリ458が優勝を飾った。LM-GTEアマクラスでは、2位にハリウッド俳優のパトリック・デンプシーが乗り込んだ77号車ポルシェ911 RSRが入っている。