2015年06月14日 12:11 弁護士ドットコム
「私の父は、ホテルの部屋にある備品をごっそり持ち帰るんです」と、恥ずかしそうに語るのは、東京都内のIT企業に勤めるA子さん(20代)だ。
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A子さんの父親は、家族旅行の際、ホテルに泊まると必ず、部屋にある備品を持ち帰る。シャンプーやボディソープ等のアメニティはもちろん、ホテルのロゴが入ったグラスやタオルも平然とカバンの中へ。持ち帰ったものは家で使い、「やっぱりリッツ・カールトンのグラスで飲む水は、味がちがうなあ」などと満足げにつぶやいているのだという。
「母が『みっともないからやめなさいよ』と苦言を呈しても、『このぐらいいいだろう』と言い張るんです。子どものころは、父のそういう行動を見ても何とも思わなかったのですが、大人になってから『これは犯罪なのでは・・・』と、良心がとがめるようになりました」
今まで、ホテル側から通報されたことはない。はたして、ホテルの備品を持ち帰ることは犯罪なのか? もし犯罪なら、備品を持ち帰ろうとする父を止めなかったA子さんやその母も、罪に問われるのか? 東山俊弁護士に聞いた。
「ホテルの備品にも,アメニティのように顧客が使い捨てたり持ち帰ったりすることを想定しているものと、コップやポット、タオルのように客が持ち帰ることを想定していない備品があります。
アメニティを持ち帰っても犯罪になりませんが、備品を持ち帰ることは犯罪になります」
東山弁護士はこのように説明する。Aさんの父親は、今まで通報されたことはないというが・・・。
「ホテルとしては、損害額も多くはありませんし、刑事手続きの労力を考えて、泣き寝入りをしているだけだと思われます。
ホテルの備品を持ち帰ることは、窃盗罪になると考えられます。過去には、宿泊費を支払うことができなかったため、浴衣を着たまま旅館から逃げたという件で、浴衣に関する窃盗を認めた判例があります」
父親が備品を持ち帰ることを阻止しなかったAさんと母親も、同罪なのか?
「今回のケースでは、まず、備品を持ち帰ることを共謀しているわけではなく、また、備品を持ち帰ることを手助けしているわけでもありません。そのため、自分で犯罪を行ったとも、他人の犯罪に協力したとも言えませんので、他の家族については犯罪が成立しません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/