トップへ

「月5万円の下積み修業」は時代遅れ? 各地で「後継者バンク」の取組み広がる

2015年06月14日 12:00  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

企業の「後継ぎ不足」が深刻だ。地方の企業や商店などを中心に、高齢になった社長が後継者不在で悩むケースが多くなっている。

2015年6月10日のNHK「ニュースウォッチ9」では、新しい後継者づくりの形「継業(けいぎょう)」を特集した。事業を身内ではなく「赤の他人」に譲るという、これまでになかった取り組みだ。

当初は応募者に「厳しさ」求めるつもりだったが

この「継業」は、静岡商工会議所が「後継者バンク」として行っている取り組みだ。後継ぎを探したい経営者と、起業したい人のマッチングをしている。継業が実現したケースのひとつが、県内の商店街にある乾物屋だ。

70代の店主は、両親から継いだ乾物屋を守ってきた。しかし商店街では後継者不足などで、10年で約50店が閉店してしまった。自分の代で潰したくなかった店主は、商工会議所の「後継者バンク」で後継ぎを募集したという。

応募してきた40代の女性とは、最初は意識のズレもあったという。当初、店主は5年間「見習い」として、月5万円の給料で働いてもらおうと考えていた。

「修業だよと。それだけ耐えられる人でないと仕方ない。サラリーマンのように10万でも20万でも良いが、それでは商売を覚えない。それぐらいの厳しさはあって当たり前かなと思っていた」

こうした「下積み」的な意識は、継業を妨げる要因のひとつであった可能性がある。同会議所では2014年4月以降に23件の引き合わせをしたが、継業が実現したのはわずか3件にとどまっている。

後継者の下で元店主が「一店員」として働くことに

それでもこの乾物屋は、結局2年で「継業」を実現したという。応募した女性が「一日も早く認められたい」と、乾物を使った料理教室やカフェなどを開いたり、facebookページで宣伝したりするなど、新しい取り組みを始めてくれたからだ。

「いずれ我々は去っていく人間。若い人たちが街を作っていく意欲が必要ですよ」

新しい取り組みを軌道に乗せてあげたいと考えた元店主は、店の設備をすべて譲り、いまでは自ら一店員として店を支えている。

帝国データバンクの調査(2014年)によると、国内企業の3分の2(65.4%)が「後継者不在」に悩む。逆に後継者が決まった企業では、「非同族」(30.7%)の割合が2011年調査より4.1%も増え、「継業」という形は徐々に広がっているようだ。

視聴者は「ほんとうに凄い。お互い偉い」と感心

この話題にはツイッターなどでも多くの意見があがっており、「月5万円での修行」という店主の意識に「丁稚奉公かよ!」という突っ込みもあった。ただ、長く守ってきた大事な店を簡単に譲りたくないというのも人情だ。

「どちらの言い分も分かる。引き渡すおやじさんも頭が柔軟だったし、引き継ぐ新社長の女性も非常に行動的な人でよかったのではないか」
「M&Aや買収とも違う。感情も強く影響するだろう事は想像に難くない」
「家族や友人同士で運営するのも大変ストレスなのに、赤の他人と継業するなんて、、、ほんとうに凄い。お互い偉い」

番組では「双方の覚悟」と「お互いの我慢」が継業のポイントだと解説されていた。後継者バンクは、現在静岡県のほか、長野県、秋田県、栃木県などで始まっている。今後の広がりが期待されるところだ。

あわせてよみたい:アナリスト出身の英国人社長が老舗職人集団の経営者に!