2015年06月13日 11:11 弁護士ドットコム
中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染拡大が、韓国で大きな問題になっている。感染を恐れて、中国などからの外国人観光客は急減。国際サッカー大会などのイベントも中止や延期があいつぎ、街も百貨店やレストランなどは閑散としているようだ。
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報道によれば、6月1日から3日までの3日間で、韓国旅行の予約を取り消した観光客数は1万1800人にのぼり、日本人も120人がキャンセルしたと韓国交通公社が明らかにしたという。
今後も、感染拡大の懸念はあるが、MERSの感染への不安を理由に、ホテルの予約をキャンセルした場合、キャンセル料を支払う必要があるのだろうか。金子博人弁護士に聞いた。
「今回のような事情であれば、原則として、ホテルのキャンセル料は不要です」
金子弁護士はこのように切り出した。
「MERSの感染力は強く、治療のためのワクチンもないため、致死率は40%に達する(世界の平均致死率)とされ、各国は自国への感染の拡大防止に躍起になっています。終息宣言がでるまでは、感染拡大地域への不要不急の旅行は控えてほしいというのが、日本を含めた各国の保健当局の考えのはずです。
出入国時には空港や港湾で多くの人に接し、旅先でも、ホテルや観光地など必然的に人の多いところを訪れます。旅行を控えることはむしろ、政策的にも社会的にも、望まれているところでしょう」
宿泊予定日に近づいてからの予約取り消しは、キャンセル料が発生するのが一般的だ。宿泊契約を結んだかぎり、キャンセル料は支払わなければいけないのか。
「キャンセルするとペナルティを支払う契約条項になっていても、理由によっては、損害賠償義務(ペナルティ)は発生しません。特に、テロや事故、災害などやむを得ない事情がある場合には、キャンセルは宿泊者の責任とは言えないので、キャンセル料は発生しません。
MERSの流行によるキャンセルも、やむを得ない事情として認められ、キャンセル料は不要でしょう」
ただし、金子弁護士は「どんな理由であっても、キャンセルの連絡は、なるべく早くすべき」と指摘する。
「たとえば、当日にキャンセルすると、もっと早くキャンセルできたはずだとされ、違法性が残り、キャンセル料を請求される可能性があります。また、ホテルに連絡せず無断でキャンセルをした場合(No Showと言います)『債務不履行』となり、客は宿泊費の全額を損害賠償しなければなりません。
キャンセル料の支払いは不要だといっても、早めに決断をし、宿泊施設へ連絡したほうがよいでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
金子 博人(かねこ・ひろひと)弁護士
「金子博人法律事務所」代表弁護士。国際旅行法学会の会員として、国内、国外の旅行法、ホテル法、航空法、クルージング法関係の法律実務を広く手がけている。国際旅行法学会IFTTA理事。日本空法学会会員。
事務所名:金子博人法律事務所