2015年06月11日 10:11 弁護士ドットコム
政府が今夏、女子大生約250人を対象に、中央省庁でのインターンシップを実施すると発表し、ネットで「男性に対する差別ではないのか」と批判の声があがっている。
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弁護士ドットコムニュースが内閣官房の担当者に尋ねたところ、「女性の活躍を推進するために実施する。差別的な意図は全くない」と強調していた。ほかに、男子学生も参加できるものとして、各府省庁が大学の春休みや夏休みに実施する、男女共通のインターンシップがあるという。
だが、女性が男性よりも、インターンに参加できる機会を多く与えられているという点に変わりはない。政府の取り組みに問題はないのだろうか。作花知志弁護士に聞いた。
「この問題は、国が行う女性優遇策が、憲法14条の定める『法の下の平等』に違反するのかどうかということです。憲法は、国家権力から国民の権利を守ることを目的にしていますので、民間企業が実施する場合とは別になります」
作花弁護士はこのように述べる。
「今回のような施策は、『積極的格差是正措置(アファーマティブ・アクション)』にあたるものだと思われます」
それはどんなことだろうか。
「アメリカでは、女性や黒人など、歴史的に差別を受けてきたグループに対して、雇用などで優先的な処遇を与える積極的格差是正措置(アファーマティブ・アクション)が進められてきました。
もともと差別されてきたグループに対しては、そうした積極的な措置をとらないと、格差が是正されないという考え方が背景にあります。
ただ、一部のグループのみを優遇する積極的格差是正措置については、アメリカでは、これまで多くの訴訟で憲法適合性が争われてきました。
積極的格差是正措置に対するアメリカの判例法の考え方は、女性限定のインターンに当てはめると、次のようなものです。
格差是正の手段として、(1)『誰をインターンに選ぶか』という考慮の一要素として『性別』を考慮することは許されるけれども、(2)『女性しかインターンになれない』という『枠』を設けることは、男性に対する『逆差別』に該当して許されない」
では、今回のケースをどのように考えればいいのか。
「日本で、積極的格差是正措置の合憲性を正面から判断した判例はありません。
ただ、このアメリカの判例法を前提にすると、『女性しかインターンになれない』という手段は、インターンになることを希望する男性にとって、憲法14条1項の禁止する『性別による差別』に該当し許されない、とされる可能性はあると思います。
日本の最高裁判所は、最近の判例(最高裁平成20年6月4日判決(国籍法違憲事件)、最高裁平成25年9月4日判決(非嫡出子相続分差別違憲事件))で『自らの努力によってはどうしようもない事実』に基づく差別について、積極的に憲法違反であると判断しています。
『性別』も、『自らの努力によってはどうしようもない事実』であることからすると、今回のケースは平等原則の点で、問題がないとはいえないでしょう」
作花弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/