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さおだけ屋はなぜ「逮捕」されたのか? 「拡声器商法」にまつわるトラブル回避法

2015年06月10日 12:11  弁護士ドットコム

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クーリングオフ制度について記した書類を渡さずに「さおだけ」などを販売したとして、名古屋市の男性が5月下旬、特定商取引法違反(重要事項の不告知、不備書面の交付)の疑いで愛知県警に逮捕された。


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報道によると、男性は昨年12月上旬、「さおだけ2本で1000円」などとアナウンスしながら、三重県松阪市内を軽トラックで走行。呼び止めた60代の女性に、ステンレス製のさおだけ4本と物干し台2台を約24万円で販売した。その際、領収書や名刺は渡したが、クーリングオフ制度について説明する書類を交付しなかった疑いが持たれている。



今回、さおだけ屋の男性が逮捕されたポイントはなんだろうか。もしも、このようなトラブルにあったとき、どのような点に気をつければよいのだろうか。消費者問題にくわしい尾崎博彦弁護士に聞いた。



●さおだけ等の販売は「特定商取引法」で規制されている


「今回のケースのような、さおだけ等の販売は『訪問販売』にあたり、特定商取引法により規制されています。



拡声器で人を呼び寄せる『拡声器商法』が、訪問販売といえるのかどうかは微妙ですが、本来の商品より大幅に内容の異なるものをすすめたり、高額商品を購入させる場合は、不意打ち性が高く、訪問販売にあたります」



それでは、どのようなことが規制されているのだろうか。



「特定商取引法は、一般的に、消費者とのあいだでトラブルの多いとされる取引類型を規制しています。たとえば訪問販売や、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引(マルチ商法)などです。



これらが公正におこなわれるようにし、消費者が受けることのある損害の防止を図ることで、その利益を保護することを目的としています」



訪問販売では、どのようなことが違法となるのだろうか。



「訪問販売では、契約の申込および契約締結に際して、商品などの種類や数量、対価、代金の支払い方法や、クーリングオフに関する事項など、所定の事項を記載した書面(申込書面・契約書面)を交付しなければなりません。



注意すべきは、一つも書面を交付しない場合だけでなく、交付した書面に所定の事項が記載されていない場合も、交付義務をはたしていないとされることです。



これらの義務に違反すると、単に行政処分等ではなく、100万円以下の罰金という刑事罰が科されます」



●「業者の氏名や連絡先はその場で確認しておく」


国民生活センターによると、「さおだけ屋」をめぐるトラブルは増加傾向にあるという。



「さおだけ購入に関するトラブルは、すでに2007年には国民生活センターが問題視し、注意を促しています。



そこでもやはり、『2本で1000 円』などの拡声器の呼掛けを聞いて呼び止め、その場で呼び掛けていた物以外の(高額な)商品を購入させられたというトラブルが紹介されています」



消費者はどのような点に気をつければいいのだろうか。



「クーリングオフが可能なケースであれば、事後的な解決もできますが、業者の氏名や連絡先もわからないことが往々にしてあるようです。やはり、事前にこういった誘いに引っかからないように気を付ける必要があるでしょう。



具体的には、(1)移動販売での購入は慎重にする(2)購入にあたっては、価格の確認をしたうえで不要な場合にはきっぱり断る、という点が挙げられます。



また何より、(3)業者の氏名や連絡先はその場で確認しておく必要があります。今回のケースでは、領収書と名刺が残っていたことが決め手となっているわけです。



特に、高齢者が被害にあうことに考えると、予防こそが被害防止のために最も重要です。そのためには、高齢者の見守りといった見地から、親族や近所の人とのコミュニケーションを密にしておくことが望ましいといえます」



すでに、トラブルが生じていたら、どうすればいいのだろうか。



「その場合は、速やかに消費生活センターや専門の弁護士などに相談することをおすすめします」



尾崎弁護士はこのようにアドバイスしていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員

事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/