2015年06月09日 20:01 弁護士ドットコム
国会で労働者派遣法改正案の審議が進むなか、弁護士らでつくる「非正規労働者の権利実現全国会議」は6月9日、東京・霞が関の厚労省で記者会見を開き、法改正について派遣労働者たちに聞いたアンケート調査の結果を発表した。中西基弁護士は「約300の回答中、ほぼすべてが派遣法改正に反対するという意見だった。諸手を上げて賛成する人は1人もいなかった」と強調した。
【関連記事:女子高生から「ヌード写真を撮って」と頼まれた――撮影したら「児童ポルノ製造罪」?】
これまで派遣労働は「臨時的・一時的」な仕事に限られるべきだとされ、派遣先企業は原則として、3年を超えて派遣労働者を受け入れることはできなかった。ところが、もし今回の改正案が通れば、派遣先企業が3年ごとに「派遣される人」を入れ替えれば、ずっと派遣を受け入れ続けることが可能になる。
一方、これまで特別扱いされ、受け入れ期間の制限がなかった「専門26業務」の区分は撤廃され、他の業務と同じ扱いになる。そのため、これまで専門26業務として派遣されていた人も、3年を超えて同じ派遣先に居続けるためには、その企業と直接、雇用契約を結ばなくてはいけないようになる。
同会議は「今回の改正が実現してしまうと、すべての派遣労働者について『個人単位で3年』という期間制限が導入されます。同じ職場で働けるのは3年まで。3年経てば『クビ』になってしまいます」として、アンケートを実施して、派遣労働者たちの法改正に対する意見を募集していた。
記者会見には、アンケートに回答した派遣労働者たちも出席した。出版社で、専門26業務にあたるウェブ制作の仕事をしているという40代の女性は、次のように訴えた。
「今の職場には5年、10年と長くつとめている派遣社員が多く、比較的安定したところで働けている。ただ、今回の法改正について派遣会社に確認すると、『法改正が実現すれば、3年で雇い止めになる可能性が高い』と言われた。
現在40代の私が、3年後に転職するとなると、今より転職は難しい。法改正によって、派遣労働者の大半を占める女性の雇用がさらに一時的で軽いものになってしまう。政府は女性活用の推進をうたっているのに、なぜそのようなことを行うのか、矛盾していると思う」
また、広告デザイナーの30代女性は、「働きながら35万円の学費と5万円の教材費を払って専門学校に通い、デザインのソフトを使いこなせるように勉強して、やっと専門26業務に就いた。派遣は正社員よりレベルが低いという人もいるが、それは違う。働きながら勉強して、いろんな知識を吸収している、努力している人が、不利になるような法改正はやめてほしい」と語っていた。
(弁護士ドットコムニュース)