金曜日の夜に問題が見つかったフェルナンド・アロンソのパワーユニットに続いて、土曜日のフリー走行3回目ではジェンソン・バトンのERS部品に問題が生じたホンダ。レース出走に備えて、関連するICE、ターボチャージャー、MGU-H、そしてMGU-Kを新しいコンポーネントに交換した。すでにバトンはターボチャージャーとMGU-Hは4基目を使用していたため、ふたつのコンポーネントは「5基目」の使用となった。
現在のレギュレーションでは、ひとつのコンポーネントで5基目を使用すると10グリッド降格。もうひとつ別のコンポーネントで5基目を投入するときは5グリッド降格。あわせて15グリッドダウンとなる。しかし予選に参加できなかったバトンは特例で最後尾スタートとなっていたため、15グリッド降格の代わりに「スタートから3周以内にドライブスルー」というペナルティとなった。
一方、土曜日にパワーユニットの交換を済ませていたアロンソは、予選14位を獲得。予選12位のマックス・フェルスタッペンがペナルティで降格したため、13番手からのスタートとなった。さらにアロンソは1周目に2台を抜いて、11番手に浮上。早くも、入賞が狙える位置まできていた。
だが、レースはホンダにとって厳しいものとなった。アロンソは徐々にポジションを落とし、45周目にガレージに戻ってリタイア。最後尾からスタートしてドライブスルーペナルティを消化したバトンは、17番手以上にポジションを上げることなく、55周目にレースを終えた。
ホンダの新井総責任者は「フェルナンドのマシンはエキゾーストの温度が上がっていたためガレージに呼び戻した。ジェンソンもエキゾーストまわりに問題があったと考えているが、ファクトリーにマシンを戻して調査するまで原因は特定できない。ただし、フェルナンドとは違うトラブルのようだ」と、リタイアの理由を説明した。
気になるのはカナダGP期間中に、ふたりともトークンを使用して改良したターボチャージャーとMGU-Hを新しくしたにもかかわらず、リタイアしてしまったことだが、新井総責任者は「トラブルと改良を加えたこととは関係ない」と明言した。そして、こう続けて肩を落とした。
「カナダは厳しい戦いを予想していたけれど、これだけ噛み合わないと苦しい」
その落胆ぶりは、今シーズン初めて見る光景だった。
「開幕戦のオーストラリアGPよりも辛いし、2台そろってリタイアしたマレーシアGPより、はるかに今日のほうが辛い。これまで積み上げてきたものがあったのに、またスタートラインに立たされたような気分だ」
場合によっては「現在開発しているものを前倒しで投入することもありうる」と語った新井総責任者。その言葉が、ホンダの現状を物語っているように思う。
(尾張正博)